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塔の上には  作者: トモシビ
8/9

黒く光る

***


「ほら、綺麗でしょう?」


亜麻色の髪を緩く編み、左胸に垂らしているその女は、そう言って息子に微笑みかけた。


「きれーだねぇ」


彼は小さな手で、母が右手に持つペンダントのそれに触れた。黒く丸いその石は、西の窓から差す黄昏の光を受けて、金色に輝いている。


「ヘマタイトっていうのよ」


「へたまいと?」


「ヘマタイトよ。お守りの石なの。怪我をしても、死なないように守ってくれるの」


「へえ」


「あと、魔物からも守ってくれるのよ。ほらこの石、表面が鏡みたいにぴかぴかでしょう。悪魔がこの石に映った自分の顔を見て、逃げていくのですって」


「じゃあ、おかーさまのとこには、あくま来ないの」


「そうねぇ……しばらく磨くのを怠っていたから、悪魔が来てしまったかもしれないわ」


「あくま、きたの?」


「来た……かもしれないわね」 


――ゴホゴホゴホゴホッ

不意に女が咳き込み、左手で口を押さえた。持っていたペンダントが揺れ、金色の光が散った。 


「おかーさま、だいじょぶ?」


――ゴホッ……ゴホゴホゴホゴホッ


「はあ……はあ……ええ、大丈夫よ……。これを、お前にあげます。大事に持っているのよ。」


女は息子に、半ば押し付けるようにペンダントを託した。彼はいとけない瞳で、手の中のそれを不思議そうに見つめている。


「くれるの?」


「ええ。私にはもう必要ないの」


――ゴホゴホッ


痛々しいほどに青白い彼女の顔の、紫がかっていたその唇が、赤く濡れていた。口元から離した左の手のひらも、唇と同じように赤く染まっている。


「……おかーさ」


「大丈夫。ね、いい子だから、もうこの部屋から出て行ってちょうだい……ほら早く」


おかーさま、どうしたの?なんで、お口とおててが、赤いの?ねえ、なんで―――――


何か言おうとする息子の背中を押し、彼女は早く部屋から出るよう促した。彼は、ゆっくりと歩き出したが、扉の前でもの惜しそうに振り向いた。


「ちゃんと、磨くのよ……」


彼は戸惑いながらも、こくっと大きく首を振り、黒い石のペンダントを握りしめて、おもむろに扉に手をかけた。


***

かなり久しぶりの更新・・・!!

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