最上階
どれくらい、上っただろうか。王子は、螺旋階段を上りつめ、ついに最上階と思われる部屋の前まで来ていた。――正しくは、“部屋の下”だ。
螺旋階段の最後は天井に伸び、小さな扉に繋がっていたのである。
王子は、その扉を上に押した。ズ…ズズ…と重い音がし、扉が開く。彼はそれを横にずらし、己の体を滑り込ませた。
部屋であった。ただの部屋ではない。きちんとベッドやテーブル、椅子などが置いてあり、しかもそれらは高級感が漂っている。絹のようなすべらかな糸で織られた布団。掛け布団には、所々真紅の薔薇の模様が入っている。テーブルと椅子は、どうやら壁のレンガと同じ物質で出来ているようだ。よく磨かれており、これにも真紅の薔薇の模様が施されている。
小窓から見える空は、すでに闇に染まろうとしていた。思ったより時間が経っていたようだ。
王子は急に疲れを感じ、ベッドに倒れ込んでしまった。
***
揺らぐ光が目をくすぐる。王子は目を覚ました。
先程は気が付かなかったが、天井には小さなシャンデリアがあり、それにいつの間にか灯がともっていた。
何か食べ物の匂い――振り向くと、テーブルに料理が置いてある。近付いてみると、ライスプディング、ローストチキンなどなかなか豪華なものであった。しかもまだ湯気が出ている。散歩に出たきり何も口にしていない王子は、空腹に勝てずそれらの料理に手を伸ばした。