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扉の向こう
コツ…コツ…コツ……
王子は塔を上っていた。扉の向こうには、どこまでも続きそうな螺旋階段があった。塔の外壁と同じ、白いレンガでできている。それどころか、塔の内壁も、階段の楯も全て、白いレンガで出来ていた。
「カランカランカラカラン…」
時折、音がする。塔の小窓――というよりは穴のようだったが――から風が入ったとき、その音は聞こえた。やはり、風が鳴らしていたようだ。しかし王子は、この塔の上に自分を呼ぶ何かが確かにあることを感じていた。その思いは、一歩一歩階段を上るほどに、確信に近づいてゆく。なぜだか分からないが、あの音が、塔が、白いレンガが、王子に訴えかけているようであった。
だ…誰か感想ください!