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その2*ちっちゃな勇者?


「みぃぃ!みぃぃ!!」


チャト君は大きな声でお母さんを呼びました。

しかし、お母さんはまだ眠っています。


とぼとぼ歩くチャト君の前を、緑色の虫がぴょんと飛んで行きました。


『なんだろう?』


心細かったはずなのに、小さな仔猫の大きな好奇心は、その緑色の虫を追いかけました。


ぴょんぴょん跳ねる虫に、チャト君はどんどん夢中になっていきました。


『まてまてー!』


しっぽをぴんと立てて、どんどん追いかけて行きます。

すると、緑色の虫が葉っぱの上で止まりました。


『よーし!こんどこそ つかまえてやるぞ!』


チャト君は、お母さんにいわれたように頭を低くしました。

じっくり狙いをつけて、おしりをふりふり・・・


『えい!』


飛びかかると、やっぱり逃げられてしまいました。



バサッ!!



チャト君が虫に飛びかかったのと同時に、そのうしろを大きな影がとおりすぎました。


「みぃ?」


チャト君のお耳がぴくぴくして、音の正体をさがしました。

すると、高い塀の上に、黒い鳥がいち羽チャト君のことをじっと見詰めていました。


その目はとても おそろしく、チャト君はからだ中の毛が膨らむのを感じました。


「ふぅぅ!!」


チャト君は精一杯うなりましたが、黒い鳥はひとつ「カー!」と鳴くだけです。


こわくてこわくて、チャト君はじりじりと後ろへ下がって行きます。

さっきまで楽し気にぴんとしていたしっぽは、いまはブラシのようにふくらんでいます。


黒い鳥は笑うようにもう一度「カー」と鳴くと、近くに降りてきて一歩近づきました。


「ふぅぅぅ!!」


チャト君は背中を丸めると、さらに大きくうなりました。


「カー!カー!カー!」


黒い鳥は羽をバタバタさせてさらに近づいてきます。

チャト君はもうどうしていいのかわかりません。


小さな体をさらに小さくして、大きな植木鉢の陰に隠れました。

黒い鳥は太いくちばしで、チャト君を捕まえようと植木鉢をつつきます。


「・・・みぃ・・・」


チャト君はこわくて仕方がありません。

小さい体を、さらに小さくして、じっと隠れていました。




どれくらいそうしていたでしょう?

窓がガラリと開く音がしました。



「こら!向こうへ行きなさい!しっしっ!!」


菜月ちゃんの声でした。


「カーカーカー!!」


葉月ちゃんの声におどろいたのか、黒い鳥は行ってしまいました。


チャト君は、これでお母さんの所に帰れるとホッとしました。

そのとたん、体の力がぬけてしまい、チャト君はそのまま植木鉢の陰から動けなくなってしまいました。



カララ…ぱたん。



菜月ちゃんも、まさかチャト君がお外にいて、植木鉢の陰にいるなんて思いもしませんでしたから、そのまま窓を閉めて行ってしまいました。


「・・・みぃ・・・」


チャト君は、よろよろと植木鉢の陰から出てくると、お母さんをさがして歩き出しました。

もしかすると、もうお母さんに会えないかもしれない。

そう思うと、チャト君は悲しくなってきました。


「みぃ・・・みぃ・・・」


チャト君は、心細くて悲しくて、小さな声でいっぱい鳴きました。

お腹もすいてきて、よけいにお母さんが恋しくなりました。


『おなかすいた…お母さん…どこ?』


チャト君は、大きな葉っぱの陰に隠れると、うずくまってしまいました。

カラスって、仔猫を襲うって聞いた。。。おそろしい生き物だ。

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