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妹に全て奪われて家からも追い出されて森に迷い込んでしまったが優しい人達に保護され楽しく過ごしていただけなのに強く幸せになってしまい元家族が助けを求める程のことになっているけど今忙しいので自分達でどうぞ

作者: リーシャ

この異世界で、自分の居場所を見つけた。


「はぁ……なんかもう、ありえないんだけどさぁ」


薄暗い森の中で、一人、盛大にため息をついた。


夜の冷たい空気が肌を刺す。


ついさっきまで、あんな豪華な屋敷で、美味しいご飯を食べて。


ふかふかのベッドで寝ていたなんて、まるで夢みたいだ。


いや、悪夢に近いか。


この世界での名前はシュリア。


侯爵家の長女として、何不自由なく育ってきた……はずだった。


十五歳になったある日、突然。


「お前は偽りの聖女だ!」


などと、父と母に言われたのだ。


は?


聖女?


そんな設定なんて、聞いてないんですけど?


聞けば、妹のリリアーデが真の聖女様らしい。


リリアーデは可愛くて、わがままで、人の物を平気で。


「これ、私の!」


って言っちゃう、いわゆるクレクレ妹。


そんな妹が聖女様?


うそでしょ?


しかも、私が偽物だから、この家にはいられないとか言い出す始末。


君ら、私がいなかったら誰がリリアーデの尻拭いしてたと思ってんのよ!


「お姉様、今までありがとうね。お姉様の分まで、私が皆に愛される聖女になるから!」


最後に、リリアーデが満面の笑顔でそう言った時、堪忍袋の緒は完全に切れた。


今まで我慢してきた色々なことが、走馬灯のように頭を駆け巡る。


リリアーデの「これ、ちょーだい?」攻撃。


両親の露骨なリリアーデ贔屓……もう、うんざり!


そして、屋敷を追い出された。


夜の森に一人。


魔物とか出たらどうすんの。


全く、あの家族はどこまで困らせれば気が済むんだか。


いや、殺意を感じるので困らせるなんて軽いものじゃない。


仕方なく、森の中を彷徨った。


お腹は空くし、足は痛いし、心細いしで、泣きそう。


そんな時、遠くに見慣れない光が見えた。


「まさか、あれは……コンビニ!?」


って思ったけど、明らかに違う。


温かそうな、優しい光だ。


恐る恐る近づいてみると、そこには小さな村があった。


村人たちは皆、穏やかな顔をしていて、私のような見慣れない人間にも警戒する様子がない。


「どうかされましたか?」


と、優しく声をかけてくれたのは、温和そうなおじいさん。


事情を話すと、おじいさんは困った顔をしつつも。


「まあ、こんな夜に一人でいるのは危ないから、うちで休んでいきなさい」


と、家に招き入れてくれた。


神かな?


仏かな?


お言葉に甘えて、暖かいスープをご馳走になり、久しぶりにゆっくり眠ることができた。


ベッド最高。


次の日、村の人たちは私の話を聞いて、同情してくれた。


「侯爵家なんて、酷いことをするもんだねぇ」


「聖女様が二人もいるなんて、聞いたこともないよ」


と、みんな私の味方をしてくれたのが、本当に嬉しかった。


恩返ししたい。


この村でしばらく過ごすうちに、私は色々なことを教わる。


畑仕事の手伝いや、簡単な薬草の知識。


そして、この世界には魔法というものが存在すること。


魔法なんて使えないと思っていたけど、村の賢者と呼ばれるおばあさんに少しずつ教えてもらううちに、微弱ながらも、魔法の力を持っていることに気づいた。


「シュリアさん、あなたはまだ気づいていないだけで、素晴らしい力を持っているわ。焦らず、ゆっくりと自分の力と向き合いなさい。ね」


賢者様はそう言って、様々な魔法の基礎を教えてくれた。


頑張ったよ。


最初は全然できなかった魔法も、毎日練習するうちに少しずつ使えるようになっていった。


火を起こしたり、小さな水を操ったり。


魔法使い放題。


何よりも嬉しかったのは、自分の成長を実感できたことだ。


侯爵家にいた頃は、ただのお飾りみたいな存在だったし、こんな経験はなかった。


手伝いだって率先してする。


村での生活は、大変なこともあったけど、毎日が新鮮で楽しかった。


笑顔が常にある。


何よりも、村の人たちの温かさが心に染みた。


優しさが染み入る。


みんな、分け隔てなく私を受け入れてくれて、本当に家族みたいだった。


ここで生きていきたい。


そんなある日、村に不穏がやってきた。


立派な鎧を身につけ、いかにも偉そうな態度。


その中には、見覚えのある顔があった。


うげ、となる。


「は、はぁ?」


父と、母と、そして……リリアーデだ。


「こんなところにいたのか、シュリア!さっさと屋敷に戻るんだ!」


父の威圧的な声が響く。


母も「全く、心配したのよ!」と、まるでこちらが悪いことをしたかのような言い方だ。


そして、リリアーデはというと、私のボロくなった服を見て、鼻で笑った。


「まあ、お姉様ったら。そんなみすぼらしい格好をして。やっぱり、聖女様の妹なんて嘘だったのね」


リリアーデの言葉に、カチンときた。


あなたこそ、人の物を平気で奪っていく泥棒猫みたいな妹!


「あのね、私はもうあなたたちの娘でも、姉でもないの。それに、聖女様?ふざけないで。あなたみたいな自己中心的な人間が、人々のために祈る聖女様だなんて、笑止千万」


私の言葉に、三人は目を丸くした。特にリリアーデは、信じられないといった表情で私を見ている。


「な、なんですって!?」


驚いているけど、今更だ。


「それに、あなたたちが私を追い出したおかげで、私はここで大切な仲間たちと出会い、自分の力を見つけることができた。感謝こそすれ、あなたたちに頭を下げるつもりはないわ」


そう言い放つと、村人たちが一斉に私の前に立った。


「シュリアさんは、私たちの仲間だ!あなたたちに引き渡すわけにはいかない!」


村人たちの強い眼差しに、侯爵家の人間たちはたじろいだ。


特に、賢者が前に進み出て、杖を地面に突き立てた時の威圧感はすごかった。


声を張るを


「この娘は、この村の大切な一員だ。二度と、この村に近づくな!」


父は悔しそうに唇を噛み締め、母はオロオロしている。


リリアーデはというと、まだ何か言いたそうだったけど。


父に腕を引かれて、すごすごと帰っていった。


「シュリアさん、よく言ったわ!」


「本当に、スカッとしたよ!」


「これで、しばらくは大人しくなるだろうね」


村人たちが笑顔で私に声をかけてくれる。


「ありがとう、みなさん」


この温かい場所にいられることが、本当に幸せだと感じた。


それから数年後。


賢者の指導のもと、さらに魔法の腕を磨き。


今では、村にとってなくてはならない存在になっている。


作物が育たない土地を魔法で豊かにしたり、病に苦しむ人を癒したり。


「ちょっといいかい?」


「今、行きます!」


私の力は、村人たちの生活を大きく変えた。


一方、侯爵家はというと、リリアーデが聖女としての力を発揮できず、次第に人々の信頼を失っていったらしい。


落ちぶれていっているとか。


なのに、クレクレ精神は相変わらずで、色々な問題を起こしているという噂も耳にした。


そんなある日、村の代表として、王都で行われる祭典に参加することになった。


(楽しみ〜)


そこで、まさかの再会を果たすことになる。


(あ、いた)


侯爵家の人間たちと。


父と母は、以前よりもずっとやつれて見えた。


リリアーデはというと、相変わらず高飛車な態度だったけど、その目はどこか不安げだった。


情緒が不安定そう。


祭典の最中、人々の前で魔法を披露する機会を得た。


「よろしくお願いします」


繰り出す、美しく、力強い魔法に、会場からは大きな歓声が上がった。


(よし、次は)


その魔法は、村で学び、磨き上げてきた、紛れもない私の力だった。


派手にやる。


私の姿を見た侯爵家の人間たちは、驚愕の表情を浮かべていた。


(気付いたかな?どっちでもいいけど)


特にリリアーデは、信じられないといった顔で私を見つめている。


豆鉄砲とはあのことだ。


ぽかーんとしている。


祭典の後、父がいそいそとこちらに近づいてきた。


「シュリア……すまなかった。お前を追い出したことを、今では深く後悔している」


母も涙ながらに謝ってきた。


「本当に、ごめんなさい。リリアーデばかり可愛がって」


えー、本当今更。


でも、心はもう揺るがなかった。


あの時、見捨てた人たちの言葉が、今になって響くはずもない。


無駄の極み〜。


「今更、何を言っても無駄です。私はもう、あの頃の私ではありません。それに、私には今、大切な家族がいるんです」


ドヤる。


私はそう言って、村人たちのいる方へ歩き出した。


もう、家族の顔さえ朧げだ。


「お姉様っ」


大切な彼らの笑顔が、自分にとって何よりも大切だった。


リリアーデは、こっちを睨みつけていたけど、その目は嫉妬と悔しさで歪んでいた。


呆れる。


でも、もう私には関係ない。


自分の選んだ道で、自分の力で、幸せを掴んだのだから。


あの時、追い出されたことは辛かったけど、今となっては感謝している。


もしあのまま侯爵家にいたら、きっと、何者にもなれなかっただろう。


これでよかったのだ。


大切な仲間たちとの出会いも、自分の力を見つけることもなかった。


『少し、歩いて話しませんか?』


『はい。私もそうしたいです』


気になる男性もできたし。


そして、かつての家族を見返すことができた。


「シュリアちゃん、こっちこっち」


「今行きまーす」


これからは、この温かい村の人たちと共に、自分の信じる道を歩んでいく。

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