前編
申し訳ございません。
読み直しておりましたら納得いかない部分がでてきましたので、話の筋は変わりませんが
かなり修正を入れ、書き直しました。
こちらアルファポリス様にはタイトルを『その真実の愛、確かめさせてもらいます』に変え投稿しております。
「ここは、どういう場所なのかしら?」
周りには、様々な装いの人達が溢れている。
私の様なドレス姿の人もいるけれど、あんな露出の激しい姿で、人前に出ても問題ないのかしら?という人もいる。
人でない…何かしら?不思議な生命体もいる。
ここには親切なお姉さまに連れて来てもらった。
見たこともない、お城よりもはるかに高い巨大な建物が立ち並ぶ場所で、見たこともない服を着た、見たこともないフラットな顔の人々の群れ。
こちらを見て、驚いた顔をしたり、顔を顰めてコソコソ話する人もいる…。
危険な程に、速い速度で通り過ぎて行く…乗り物かしら?中に人がいたから…。
聞いた事もない様々な騒音が飛び交う中、私は1人どうすれば良いのか分からず、怖くて蹲っていた。
すると、そんな私を気遣って、話し掛けてくれる人がいた。
私達の学園の制服に似たような…でも、やたらと短いスカートを履いた…女性?ではないような…。
私のお父様くらいの年齢のおじ様?おば様?だった。
「あなた、日本語分かる~?
本当はサークルの仲間と来るはずだったんだけど彼女、急に来れなくなって、チケット余ってたのよね~。
…今までみんなと一緒だったのに、急に逸れて、ここが何処か分からないの?
…そう。みんな、あなたのような素敵なドレスを着ていたのね。…まあ王子様もいたの?
なら、きっとあなたの友達も会場にいるはずよ。
チケットあげるから、会場内で探してみたら?
一緒に行きましょう!!」
親切なお姉さま(何と呼べば良いか戸惑っていたら、彼女がそう呼べばいいと教えてくれた)にいただいたチケットで中に入ると、そこには不思議な世界が広がっていた。
わたくしの名前はマグノリア=トラリス。
トラリス公爵家の次女でございます。
公爵令嬢と言っても名ばかりで、長女のロゼリアとは母が異なるため、その容姿も才能も、何もかもが異なりました。
姉は魔法の大家として知られるサバトリア侯爵家出身の正妻、アレクシア様の血を濃く引き継ぐ、世紀の大天才と呼ばれる魔法使いです。
その容姿は、魔力の高い者の特徴である漆黒の美しい髪に、タンザナイトのように輝く青紫の瞳。
誰もが振り返り、称賛の眼差しで見つめる…そんな人でした。
一方、私は男爵家出身の第2夫人の母に似て、ちょっと癖のある茶色い髪に、薄茶色の瞳。
どこにでもある色彩の特に秀でた才能もない平凡な娘でした。
母が公爵家の第二夫人に選ばれたのは、第一夫人のアレクシア様が
「自分の才を引く娘は、1人産めば十分だろう」と、その後子供を望まれなかったからです。
アレクシア様は政略結婚として、公爵家に嫁がれましたけれど、どちらかと言えば家庭より魔法使いとしての仕事を優先される方でした。
私は、昔から愛嬌だけは良いと言われ、両親には可愛がられ育ちました。
父は姉のことも、ちゃんと愛しておりました。
けれど、姉は幼くして既に大魔法使いで、第一王子の婚約者だったため、その立場は公の人であり、家族だからと言って普通に扱って良い存在では無かったのです。
そこで、単なる娘として可愛がれる私にだけ、目に見えるかたちでの愛情が注がれたのです。
ただそれだけの話だったのに…ここに飛ばされる前の私は、自分だけが愛される存在なのだと思い上がっていたのです…。
学園に入り、私は初めて姉の婚約者である第一王子のトラバルト様に会いました。
風にたなびく輝く金色の髪、空のように美しいそのアクアマリンの瞳に…私は魅入られました。
恋に落ちるとは、こういう事なのだと知った瞬間でした。
姉はほとんど学園におりませんでした。
学生ながら大魔法使いとしても活躍する姉には、各国から依頼があり多忙のため、授業を受けなくてもテストを受けるだけで進級が認められていたからです。
姉のいない学園で、私とトラバルト様の仲はどんどん深まっていきました。
優秀な異母姉にコンプレックスを感じる私と、正妃様から生まれた第一王子なのに、側妃から生まれた第二王子のローランド様より、その能力で劣ると言われるトラバルト様。
互いに気持ちが通じるところがありました…。
初めは姉の婚約者として出会い、話をするうちに姉に関係なく一緒にいるようになりました。
そして、トラバルト様が卒業を迎える頃には、恋人と言われる関係になっておりました。
姉とトラバルト様は、卒業と同時に結婚することが決まっておりました。
あんな事件が起こる前に、私は家族に相談するべきだったのです…。
父も母も私の事を愛してくれてましたし、異母姉も忙しくて構ってはもらえませんでしたが、学園に入った時、私をトラバルト様に紹介し、
「家族になる者としてよろしくお願いします」
と頼んでくれるくらいには、気にかけてくれていたのです…。
なのに、私はそんな家族を裏切ってしまいました。
「私はトラリス公爵家のローゼリアと婚約を破棄し、真実の愛で結ばれたマグノリアと結婚する!!」
トラバルト様がそう宣言されたのは、みんなが友との別れや今後の輝かしい未来の話に沸き立つ、卒業パーティーの場でした。
その告白の話は、私も事前に聞かされておりませんでした…。
もうお別れしなくてはいけないと嘆く私に、彼は「何とかする」と微笑んでくれました。
それが卒業式前日にお会いした時の事でした…。
いつも私はひとに頼りきりで、その時も、彼が何か良い策を考えてくれるだろうと安易に思っておりました。
その結果が、この大観衆の前での宣言でした。
父と母は信じられない者を見るような目で、私達を見つめていました。
みんなも、王族や高貴な方々の前なので叫びこそしませんでしたが、驚きの表情でこちらを見ておられました。
そんな中、1人落ち着いた様子で姉のローゼリアが私達に近づき、話し掛けてきました。
「あなた達は真実の愛で結ばれたと言うの?」
「そうだ。私とマグノリアの愛は、君とのような政略で結ばれたものではなく、真実の愛だ」
あまりにも感情の起伏が無い様子の姉を、不審に思ったトラバルト様は私を背に庇い、前に出られました。
「では、そのあなた達の真実の愛とやらを証明してもらいましょう。
もしそれが証明された時には、私達はあなた達のその愛を認めましょう」
そう言って、姉が杖を振り上げた途端、キラキラと光る輝きが私達を包み、気がつけば見知らぬ世界におりました。
お読みいただきありがとうございます。
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