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01:死恐怖症について

「あ~マジ死ぬのが死ぬほど嫌だ」


「出し抜けにどうしたの?

 僕でよければ話を聴くよ」


「聴いてくれるか我が心の友よ。

 長年思い悩んでいたことだが俺は軽度の死恐怖症(タナトフォビア)でな。

 昨日寝る前にふと死後の虚無について発作的不安に駆られてさ。

 それで昨日は眠れず大変辛い……エピクロスいわく

『死はわれわれにとっては無である。われわれが生きている限り死は存在しない。死が存在する限りわれわれはもはや無い』

とのことだがそもそもその『無』が恐ろしいわけで」


「エピクロスというと『エピクロス主義』の人だよね。

 幸福を快楽の追求と苦痛からの解放と定義している快楽主義。

 ここで言う快楽とは心の平静、痛みからの解放、心配のない状態という『静的な快楽』のことで、この主義で目指すべき心の平静の状態を『アタラクシア』と呼ぶ」


「詳しいじゃないか。

 俺はほぼエピクロス主義者だが、さっき言った死を怖がっても意味ないから怖がるなって理屈だけは呑み込めない。

 怖いもんは怖いだろう」


「まぁ、そうだね」


「んでルクレティウスいわく

『祈りで気休めになるならそうすればいい』

 とのことだがツァラトゥストラはかく語りき

『神は死んだ。我々が殺した』

 ってなわけで祈る対象もないし」


「本格的に参ってるみたいだね……。

 えっと、僕もちょっと前までタナトフォビアだったんだけど、ある考え方で克服したと言ったら興味ある?」


「めちゃくちゃあるな。是非聴かせてくれ」


「うん。クオリティを上げたいと考えてるから、気になるところは指摘して欲しい」


「おうよ。バンバン突っ込ませてもらうぜ」


「まず『人間は生きたい』が『人間は必ず死ぬ』という認知的不協和を解決するために哲学や宗教や科学などのあらゆる分野で研究が行われてきたけど」


「おっと、頼んでおいてなんだがオカルティックな話はやめてくれよ」


「大丈夫、色んな分野を参考にはしたけど現実的な話にまとまってると思うよ」


「いきなり胡散臭いなぁ」


「まぁまぁ、思考実験だと思って」


「了解。一応念押ししておくが、俺は無神論者だぞ」


「僕もそうだ。しかし神がいなかったとしても信仰というシステムがタナトフォビアに対して有効に働いているというのは認めざるを得ないだろう?

 特に『死後の世界』というものは」


「それは認める。死ぬこと自体より存在の消滅が恐ろしい。

 死後の世界があるなら、死んだ後も生き続けられると言える。

『人間は必ず死ぬ』という認知を『死んでも復活する』とか『死んでも魂は生き続ける』というように修正するんだな」


「つまり人工的に『あの世』を造れたら無神論者でもその認知的不協和を解決できる。

 その鍵となるのはふたつの技術だ」

お急ぎの方は『05:伝えたいことはほとんどここに書かれています』へお進みください。

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