第8話 魔術
「ラディウス!!」
ミアは泣き叫ぶ。ラディウスの首の断面から吹き出た血は円錐形に硬質化し、キラの腹、胸、両手首、右足を貫き拘束する。
「ㇰッ、これは闇魔法 -赤血- 自分の血を鋭利な形に硬化しそれを無尽蔵に相手に突き刺す魔法。本来は激戦の中で使うものだがそれを死ぬ直前に・・・。俺が間合いに入った瞬間詰みを確信し防御や回避でなく相打ち覚悟のカウンターをしてくるとは。なんて女だ!」
キラは硬質化した血を大刀で斬る。そしてそれと同時にミネラとニルがキラの両腕を切り飛ばす。
「炎魔法 -火泡- 」
ミアは空中に円を描くように杖を振るう。火でできた2mほどの球体がキラを囲う。キラの体は炎で焼ける。
「ククッ。」
キラは一瞬にして炎の中から消えた。
「また消えたぞ! 今度は誰を!?」
ミネラが斧を握りしめて言う。
「安心しろ。今は回復中だ。だからお前らは襲わない。」
キラは言う。キラの体の火傷、刺し傷は少しずつだが治癒している。
「お前、不死身かよ。しかもその高速移動・・・いや、高速移動にしてもおかしい。光魔法を得意とするラディウスが反応するのがやっとの速度など、ありえない。」
ミネラが言う。
「よくしゃべるなお前。教えてやるよ。俺たち大魔族はこの絶大な魔力により体を治癒することができる。一撃で頭を潰すか魔力切れに追い込むかでもしないと殺すことはできない。そして俺の魔術 -ラプラス- は時を止めることができる。おかしな表現だが体感的に10秒ほど止められる。」
キラは満面の笑みでそう話す。
「そんなん無敵じゃないかよ。」
ニルが言う。
「そういうわけでもねえんだぞ。言ってしまえば世界に干渉しているようなものだからな。魔力馬鹿みたいに消費されるわインターバルもあるわで誓約も多い。いや、前者は俺の魔力量なら問題ないし後者もお前ら相手なら問題はない。前言撤回だ。」
キラは再び生やした腕で大刀を握りしめる。
「さて、次はお前だな。」
キラはニルの前に現れる。ニルは咄嗟に守りの体制に入るがキラの重い一撃の前に簡単に崩される。両腕は折れ、肩と頭を大きく斬られ、ニルは再起不能となった。
「ははっ2人目。」
高笑いするキラ。ニルは口に剣を咥えてキラの後頭部に突き刺す。
「ぬっ、こいつぅぅ。」
「ミア! 俺ごとやれ!」
ニルは剣を離すとそう叫んだ。
「そういうわけにはいかねえな!」
ミネラはキラを鉞で吹っ飛ばす。ミアは再び火泡でキラの体を焼く。
「ミネラ、お前。今ので、」
ニルはミネラの大刀でえぐり取られたミネラの腸を見て弱弱しく呟く。
「ニル、お前はもう休んでろ。ここは俺とミアでやる。」
「そんな、勝てる相手じゃ・・・。」
そう言うとニルは失神した。
「あーあ、せっかく頭やれたのに。その虫を助けたせいで回復してしまったよ。残念だな。」
キラはそう言うと大刀をミネラに向ける。
「さあ次はどちらにしようか。」
キラは大刀についた血をなめまわして言う。