第4話 反撃
キラのいる東の森はキラ以外に魔族はいない。それは気に障るものは敵味方構わずなぶり殺す彼の残忍性を物語っている。つまり、今この森にいるのはキラとキラの従者とみられる少年、そして捕らわれたノヴァと彼を救出しようとしているニル、ラディウス、ミア、ミネラのみである。そのためニル達はすぐにキラの住む屋敷までたどり着けた。
「ここがキラの館か。確かにどす黒いものを感じるな。」
ミネラが言う。
「やはり来ましたか。」
そう言い放つ少年の声と共に森に風が森中に吹き始める。
「あらあらそよ風が吹いて気持ちいいわね。」
ラディウスは余裕そうに言う。
「・・・そう甘く見ないでくださいよ。」
少年がそう言うと風が少し強くなった。するとラディウスの左瞼に切れ込みが入った。
「・・・え?」
「風魔法 -風刃- その辺の風に僕の魔力を吹き込むことが発動条件、風は鋭い刃の形に変化し、相手を切り裂く。魔力消費を最小限にして相手を確殺する魔法です。次は頸動脈と両目を狙います。死にたくなければ撤退を進めます。」
「あら、随分と優しいのね。」
ラディウスは小さく汗をかきながら言った。
「・・・こんなことしたくてやってるわけじゃないですから。」
少年はうつむきながら言う。
「そういえば、お前喋れたんだな?」
ニルが言う。
「はい。今はキラ様から許しを得てるので。」
少年はうつむいたまま言う。
「それじゃキラのやつの操り人形じゃないか。さっき話した感じあいつ性格悪そうだしなんであんなやつに。」
「戦災孤児だった僕はキラ様に素質を見抜かれ育てられました。僕にはこれしか生き方がありません。さあどうします?僕に手を汚させたいのならご自由にどうぞ。」
少年は言う。
「ニル、話してるとこ悪いけどあまり時間はないですよ。」
「ああ、わかってるよ、ミア。」
ニルは剣を抜いた。ミネラは鉞を、ミアとラディウスは杖を出した。
「そうですか。残念です。」
ミネラはニルを担ぐと即座に少年に接近した。
「自然にある風を使うなら軌道があるだろう? 肌感覚鈍いニルはまだしも山育ちのこの俺にそんな攻撃が当たると思うなよ。」
ラディウスはミアと自身の周りに結界をはった。
「ありがとうございます。私は結界術は苦手なので。」
「気にしなくていいわよ。それより攻撃はあなたに任せるわ。」
「はい。炎魔法 -渦火-」
渦を巻いた炎が風の軌道に乗る。
「ミア!? そこは火じゃないだろ。」
ミネラが言う。少年は剣を抜く。そしてミネラと彼の肩の上のニルを相手取る。
「仕方ないじゃないですか。これが一番使いやすいんですから。何より、まずは相手から軌道を奪い取らないといけないですからね。」
ミアが風の中で炎を操ることで風の動きを翻弄した。
「炎魔法 -陽炎- 」
「僕の魔力に流されないように火を使うとは・・・。しかもそれを結界を挟んで。器用ですね。でも器用なだけです。」
少年はミネラの巨体を蹴りで吹っ飛ばした。そしてミアに急接近する。
「今です!ラディウス!」
「光魔法 -流星舞- 」
無数の光の束が少年の元で爆発した。
「どんなもんよ。」
少年はボロボロになった右の袖部分を破り捨てた。
「見事な連携ですね。どうやら少し本気を出さないといけないようですね。」
少年は鞘にしまっていたもう1本の剣を抜いた。
「あ、あれは!? まさか、伝説の剣といわれていたグラディウス・・・?」