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異常なアイツ――4

PAGE4

 これは違和感の正体であり招待だ。

 あの時に感じた違和感。相羽さんが皆の前で挨拶をした時に感じた違和感。胸の内に残った靄。これが違和感の正体だったのだ。そう。そもそもおかしい。こんなおかしな話はない。異常な容姿で産まれてきたのに|正常な環境で育つわけがない。普通である筈がない(・・・・・・・・・)。それは、違和感として胸に残るのが当然だった。なにせ、事実じゃないのだから。


「泪!いきなり何言ってんだよ!」


 言ってて虚しくなる。今目の前にいる泪は僕が知っている泪ではない。そしてきっと、僕の隣にいる女の顔は暗がりで見えはしないが、僕が知っている女じゃない。そのことが、肌を触る空気が張り詰めていくのを介して判った。


「とうとう、バレちゃった。春空にバレちゃった。春空だけは巻き込みたくなかったのに――春空は元々こちら側の人間だから、春空だけには知られたくなかったのに。お前のせいだぞ……糞女」


 それは答えじゃない。だが、一つの答えではないだけで、一つの答えに繋がる可能性に思えた。


「ふふ……ふふふふふ……」


 妖笑。笑いを含みながら見上げる空。映し出された女の顔は、やっぱり僕が知っている女じゃない。作りは全く同じでも、相羽さんはこんな表情をしないだろう。だけど、けれど、だから、とても、最高に最上に極値に極限に究極に聡明に早計に単純に敏捷に――美しいと思った。


「あははははははははははははははは」


 笑う。嗤う。魔女が、笑う。

 月に映えた世に照らされた魔女が悪魔の如き狂ったように笑う。

 そう。彼女には、魔女という言葉がお似合いだったのだ。その、異常すぎる異端な美しさに畏怖を込めて。


「まさかのまさか、よ。偶然でしかないわ、こんなの。運命は皮肉よね。私は中学生らしく親の都合で引越ししただけ。だから、これは必然だとしても偶然と呼ぶべきなのよ。そう思わない?王様」


 言葉遣いまでもが違う。態度も違う。ただ一つ合致したのは、身に纏う力強さの色。


「あの王様にお友達がいたなんてね。お笑い種だわ。滑稽でもあるわね。でも、私が春空君に近づいたのに意図はないわ。ただ、私は窓際が好きなだけ。誰とも隣接しない場所が好きなだけ。そうしたら春空が前の席だった。ただそれだけよ。それに、私だって学園生活ぐらいは正常に行いたいわ。ちやほやされるはうんざりだけどね」


 そう言って、相羽さんは僕に目線を投げる。少しだけ悲しそうな、寂しそうな瞳に見えた。


「がっかりした?こんな女で」

 春空君とは仲良しになれると思ったのに、残念。


 付け加えて彼女は言う。それはとても嬉しい言葉で、そして僕は寧ろ――


「いや、全然。寧ろ今の方が合ってる。影に合ってる、とでも言うのかな?」


 「うわっ、凄いねこの子。私の演技に騙されない子は少ないんだけどなぁ」


「だから春空はクイズに強いと言っただろうが」


 相変わらず泪は敵意剥き出しで相羽さんを睨みつけている。それにしてもこの二人、どんな関係なのだろう。とりあえず仲が悪いことだけは解るのだけど。


「でも、なんで春空君にバラしたの?別にあんたが言わなければ春空君は知らないままだったんじゃないの?」


「どうせお前にもその内解るからだ。春空はもうとっくにこちら側なんだよ」


 さっきから泪はこっち側という言葉を使って何かと線を引いている。そして、泪に言わせれば僕はもう”こちら側”らしい。しかし、泪。僕が今まで見てきた泪は一体なんだったんだろう。こいつ、こんなに理性のある人間だったのか?

 ……よくよく考えれば当たり前か。理性のない人間が我慢できるわけがない。もしも泪に理性がなければ、とっくに泪は警察にお世話になっていることだろう。


「俺は帰る。春空にはお前から伝えておけよ。因みに入り口は今日案内していた時のビリヤードバーだ。……春空、ごめんな」


「ちょっ、待てよ!」


 僕の制止も聞かずに泪は駆けた。あっという間に闇に紛れてしまった泪を追いかける意思は僕にはなく、隣にいる女に意識を向ける。


「僕はあんたをなんて呼んだらいいんだ?」

 言いたくないから言わないけど、付け加えるなら僕の小さな恋心を返せ、だ。


「今まで通り相羽さんでいいんじゃないの?なんなら由兎と呼んでくれても構わないわ」


「じゃあ、由兎だ。あんたを今まで通りと同じとしてみることは出来ない。相羽さんが消えてしまったかのような気分だよ」


「レディに対して失礼ね。私は今も昔も相羽由兎よ」


 くすっ。魔女の笑いには悪意が込められている。改めて思うが学園での彼女とは丸っきり違う。確かにこのままでは問題があるかもしれない。それはそれでコアなファンが寄り付きそうなものだけど。


「さて、じゃあお話を始める前に――」


 僕の平坦はいとも簡単に崩れ落ちる。

 僕の創りあげた普通(・・・・・・・)はこんなにも脆く消滅していく。


「君は、殺したことある?」


 元々そちら側である僕に普遍だなんて道化がお似合いなのだけど。 




どんな感想も聞きたいです。お気軽にコメント下さるととても嬉しいです!


・後書きっぽい

物語も本題です。本題に来ました。なんかやっと二人のキャラが立ったって感じで僕としては嬉しいです。

かっこいいよルイ!!!!!

とかなんか自画自賛というのかこれは。青髪キャラが好きなのです。でも泪の素はどことなく少年らしさが残っていて初々しいのです。可愛い←

ではでは宜しければまた次話で。


読んでくださり本当に感謝感激なことを改めて此処に記しておきます。

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