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平和な世界――8

PAGE20

「こんなのありなの?」


 背後にいる由兎に問うと彼女は大きく溜息を吐いて項垂れた。


「初めてよ、私だってこんなの」


 拳には愛用のソーンナックル。由兎が命名した鋲付きのメリケンサックが既に装着されている。

 由兎の手にも自慢のペーパーナイフが握られていて臨戦態勢で構えている。

 僕と由兎は撤去予定の廃ビルで、十人もの男達に囲まれていた。中には学生もいて、あいつこそが今回の元凶だ。


「まあいっか」


 取り立てて問題がある風でもなく僕がそう言うと、


「それもそうね」


 由兎と笑みを零しながら同意する。



「――始めましょう。平和な世界での殺戮パーティーを」




 話は数十分前に遡る。

 龍神の事を動画で知った翌日、僕は由兎に龍神のことを話していた。


「由兎、龍神って知ってるよね」


 誰かに聞かれては困る会話なので、放課後に二人きりになれるまでこの会話はしずに過ごしていた。

 風も天気も爽やかで春に相応しく陽気だ。


「龍神って一位の? ええ、勿論知ってるわよ」

「昨日さ、花恋に教えて貰ったサイトを見に行ったんだ。そこには今までの死合も保管されていたんだけど、僕も龍神の死合、見てみた」


 くすっと自虐的に微笑んだ由兎が僕をからかうように口を開く。


「凄かったでしょ」

「うん。凄かった、としか言えないぐらい凄かった。人間じゃないよ、あんなの」

「私もそう思うわ。龍神にだけは逆立ちしても勝てる気がしないの」

「逆に、あんな化け物に勝てると思っているとしたらいよいよ僕は真剣に由兎との付き合い方を考えなきゃいけないしね」

「いよいよって何よー!」


 確かに由兎は超絶美貌を兼ね備えた中性美人だが自分でそのことを把握して尚且つ人に言うナルシズム加減に加えて、戦闘においてあんな化け物に勝てると信じていたらいよいよ僕は考えてしまうだろう。

 まあ、由兎にそのことは一切伝わらないのだろうけど。由兎は自分の価値を認識していない事の方が愚鈍だと言いかねないのだし。


「そうだ、由兎。今日はどうする? 行く?」

「え、行かないの?」


 由兎の口調は元々行くことは決定していて尚且つ僕が一緒に行くことが前提となっていた。

 因みに、そんな約束をした覚えは全くない。


「行く。今日は行くよー。出来れば誰かと一戦交えたいしね。あいつと殺り合う前に――」


 言ってからしまった、と思い口を紡ぐ。

 今の言葉は由兎に対してデリカシーが無かったように感じる。由兎はあいつの一言であんなにも脆い部分を曝け出してしまったのだから。


「ん? ああ、いいっていいって。そんなに気にしなくて」


 しかも僕がそのことを気にしていることさえ悟られてしまう。

 全面的に顔に出ていたのかもしれない。

 何もかも紳士でなくてうんざりする程に中学生な態度だ。我ながら嫌になる。


「そういえばあの時はちょいと迷惑かけちゃったね」


 あはは、と乾いた笑いで照れくさそうに俯く由兎。


「初日からなんだか春空君には迷惑かけっぱなしだなー、私」


「そんなことないよ」


 否定してみるものの由兎の考えは変わらないようで罰の悪そうな顔を向けた。


「あんなに取り乱しちゃったのにはそれなりにくだらない理由があってさ」


 それなりにくだらない理由、か。

 由兎の珍しいとも言える自分を卑下する言葉に眉を潜める。

 でも考えてみればこれもまた、由兎らしいのかもしれない。

 僕は由兎をナルシストだと、唯我独尊の高慢吉だと思っている節があった。

 けれど、由兎は良くも悪くも自分の価値を認識しているのではないだろうか?

 だから、取り乱したことが起因する――多分、トラウマ的な過去をくだらないと称する。

 それは卑下している訳ではなく、前向きに乗り越えようとしていて。


「今はまだ話す気にはなれないけど、きっと、春空君にはいつか話すと思うよっ」


 またも照れくさそうに微笑む由兎。

 こうして見ているとあどけなさも感じられて歳相応な笑顔だ。


「うん、その時を待つよ」

「へへ、ありがとう。春空君には私の全部を知って貰わなきゃねー」


 唐突に由兎が大胆なことを言うものだから目を丸くして驚いた。


「なんでさ」

「だってさー、恋人じゃんっ」

「……その設定さ、学校以外でも貫く必要あるの?」

「うわっ、何? その嫌そうな顔」


 あからさまに不機嫌になった由兎は眉間に皺を寄せている。


「だってさ、由兎が楽しむ為にそうしたんでしょ? それなら別に貫く必要ないじゃんか」

「ふーん。そういうこと」


 口を尖らせたまま横に並んでいた彼女が一歩前に進む。

 完全にご機嫌斜めらしい。僕が設定を崩したのがそんなに嫌だったのだろうか。

 魔女の心は計れない。


 結局、魔女の機嫌は気分的なものだったようで暫くすると直った。

 ころころと山の天気のような移り変わりだ。

 機嫌が直るのならなんだっていいけど。



 家に帰る前に寄り道をしようと言い出したのは由兎だった。

 今日からはあの世界に行くにしても一度家に帰り、晩御飯を食べて親に寝たと思わせてから外に出た方が長くいられるし都合がいいという話だ。

 元々僕は寝るのが早い。その変わりに起きるのも早朝の日が昇る前とかなり早めなのだが、それも作用して九時には親に寝たと思わせることが出来る。

 抜け出すのは二階の窓から屋根伝いに降りれば問題がない為、その方が僕も良かった。

 その為、家に帰っても直ぐにあの世界に行ける訳ではない。

 由兎が寄り道をしようと言い出したのはそういう理由があるからだろう。


 寄り道をして選んだ場所は僕の家から五分歩けば着くような公園だった。

 砂場ではまだ子供達が遊んでいて僕と由兎はブランコに座って小さく揺れる。

 とても取り留めのない世間話をしていた。

 学校の教師が鬱陶しいだのこの前に買ったCDは良かっただの、極々中学生らしい会話。

 端から見れば間違いなく恋人同士、或いはとても仲のいい友達に見えるだろう僕達に一人の少年が近づいてきた。


「す、すいません……」


 少年は息を切らしていて焦っている様子もある。

 制服が同じ学校ではないが、制服を着ているから中学生に見えるだけで幼い顔は小学生のようにも思える。

 髪型がボブにカットされているのも優等生のような生真面目さを感じさせた。印象は真面目、の一言に尽きる。

 由兎があからさまに敵意を剥き出しにしたが、それはあまりにも少年が可哀想なので僕が少年に聞いてみる。


「どうしたの?」


「そ、そこで恐い人たちにからまれて……友達がいるんですけど僕じゃ助けられないんです……」


 それは危険だ。

 何が危険かは僕が瞬時に判断する。

 それは――恐い人達がとても危険だ。


「ぼうや、よく教えてくれたわね」


 ああ、やっぱり。

 すっかり由兎が臨戦態勢に入ってしまっている。

 由兎は強い。きっと強い。あのペーパーナイフが無くても素手でその辺の不良学生ならやっつけてしまうだろう。

 身体能力が秀でている。多分、鍛えているだろうし何か習っているのだと思う。


「で、でもっ、僕、友達を置いて逃げ出しちゃって、っ」


 心強い味方が出来て安心し、情けないのか泣き出してしまった少年は嗚咽を漏らして目を擦る。


「いいのよ、それで。勝てないと悟ったなら逃げるのも戦法よ。勿論、戦法なのだから何かをしなくちゃいけない。そして、仲間を連れて戻ろうとした貴方は懸命よ。なにより、貴方は最高の当たり籤を引いたわ」


 こんな平和な世界で、平穏な公園で、戦い方を説く由兎の姿はとても異色だ。

 由兎に頭を撫でられて和んだのか少年も少しずつだが落ち着きを取り戻している。


「さあ、案内しなさい。そのお友達の場所に!」




 それがまだ十分前の話だ。

 少年の案内の下、ぼろぼろの廃ビルに入った僕たちは奥に進んだ所で囲まれた。

 その数なんと九人。否、隣でせせら笑いながら離れていく少年を含めて十人か。

 直ぐに僕達は嵌められたのだと悟り各々通学鞄に入れていた武器を取り出した。

 元からおかしいと思うべきだったのだ。

 全く、僕も由兎も浅はかだったと嘲笑されても仕方がない。

 少年の演技にころりと騙されたと言い訳でもしたい気分だ。

 僕達を囲む体格の良い男達はそんな言い訳を聞いてくれそうもないけど。


 そもそも、なんで少年が僕達に助けを求めてきたのか、というのがおかしい。

 確かに混乱状態であれば助けぐらいは求めるかもしれない。だが、由兎が助けに行くと言った時に少年はそれを止めなかった。

 普通に考えれば、由兎の容姿はどう見ても華奢だ。そして、態度さえ違えば高貴な家柄なのだと疑う。

 そして僕も同じ。僕は着やせするタイプだし体を鍛えて空手をしていると言っても外見では判断がつかないだろう。まだ夏服にもなっていないのだから腕の筋肉の締り具合なんて見える筈もない。

 だから少年はあの時、普通なら止めなければならない。なのに、止めない。

 つまり、少年は最初から知っていたということになる。

 僕と由兎があの世界の人間だと。そして、僕達が強いと。

 僕達を知っていて十人で囲む理由は勿論僕達を痛めつけようとしているに違いない。

 この場でいきなり菓子を出されても色紙を出されて「サインを下さい」と言われても冗談にもならなかった。

 それに、空気がそんな緩和ではない。

 冷たく、雄雄しく、猛狂っている。

 これは男達の純粋な殺気だ。


 僕達は背中を合わせて武器を構える。

 少し離れた場所で少年がにやついているのがこの上なく苛々する。

 ああ鬱陶しい。こいつら全員殺してやる――


「駄目よ、殺しちゃ」


「……なんでだよ」

「こいつらは私達を殺す気かもしれない。それは何か繋がりがあるからよ。死体洗い業者のね」


「あっは、ご名答だよ東の魔女さんっ」


 無邪気な笑い声を上げて由兎の可能性を肯定したのはあの少年だ。

 こいつらは何故僕達を狙っているのか、理由は当然解らない。そして、解らないがこの男達のリーダーは幼い少年のようだった。


「あんたらが死んでも死体は残らない。行方不明者扱いになっちゃうだろうねー」


「あんたは黙ってなさい! ったく、私に頭を撫でられることがどれだけ光栄か解ってないわね」


「解ってるよおねーさんっ。だから死んだら手は持って帰っ――」

「黙れ糞ガキ!」


 少年が体をびくりと震わせて怖気づく。そのくらいの迫力を僕も持ち合わせているらしい。


「それで、どうしてこいつら殺しちゃ駄目なんだよ」

「全く、怒りに頭が毒されて解らない? こいつらを殺せば私達は捕まる。逆に言えば、殺さない限り何をしてもいいのよ。病院で刑事に問い詰められてもこいつらだって本当のことを言えやしないんだから」


 にたり、と由兎が不気味に微笑むのが背中越しに伝わってくるかのようだ。


「そうか、そういうことか」


「そういうこと。それを踏まえて、さあ――始めましょう。平和な世界での殺戮パーティーを」


 たんっと脚に力を入れて一番近くにいる男の胸元まで二歩で近づいた。


「一人目……」


 同時に隙だらけの腹に両の拳を合わせて打ち込んでいた。

 僕が通っている空手道場の館長に言わせると正両波(せいりょうは)という大層な名前が付いているようだが今の僕にはそのことを考える余裕がない。

 全く、僕には、余裕が、無いのだ。


「はあ……はあ……」


 息が荒いでいるのが自分自身よく解る。

 呻く男の腹に刺さった鋲をゆっくり抜くと濃厚な血と肉が絡み合っていて体の中心に雷鳴が走ったかのような快感。

 抑えなきゃ、抑えなきゃ、抑えなきゃ……。


 続いて男が一人後ろから飛び掛ってきた。そいつは僕の首を両腕を使って絞め上げた。

 脚が宙に浮いて仰け反る体。

 喉を圧迫されて息が出来ない。

 それがどうしようもなく、気持ちよかった。

 本当にどうしようもない。

 この心こそがどうしようもない。

 痛みを与えるのが気持ちいい。

 痛みを与えられるのが気持ちいい。

 死を身近に感じるのが、どうしようもない程に心地いい。


 首を絞める男の脚を手で探り触ってみる。

 とても堅くて丸太のような太い脚だ。この脚が僕の体重を容易に支える土台か。


「おらぁ、死ねえ!」


 更にぐいと締め上げる男。細かく言えば締め上げる為に腕を上げるという行為を、僕は見逃さなかった。

 微弱ながら僕の体が振り子のように動く。それに加えて僕は腹筋と脚の慣性の力を使い腕から抜ける。勢いを男の顔を掴むことにより円を描くようにして、男の頭に手を置いて高々に倒立する。

 ぐっと力強く髪を握り締めてそのまま勢いに任せて首に膝を直撃させた。


「か、はっ」


 前のめりに倒れてく男の頭を掴んだままの僕は重力に引っ張られ男の頭をコンクリートの地面にぶつけた。

 周りから格闘ゲームのような動きにざわめきが起こる。

 実際、こんなことが出来るのは一と千のような圧倒的な実力差があるからだ。実力が均衡していれば戦闘というのはもっと地味になる。

 まあ、今は関係ない。折角平和な世界でわざわざ倒されに来てくれたんだから、殺せないというのなら精一杯に楽しまなきゃ、ね。


 ちらりと見てみると由兎は一人を倒していて今は二人を相手にしているようだった。

 彼女は女だ。それに、武器もじわじわと効いてくるタイプの物で必殺ではない。二人相手じゃしんどいか、と勝手に判断して、由兎の相手をしている内の一人に走り寄る。

 突然に現れた僕に驚いて男は体を硬直させた。どんな人間でも超越していなければ未知に体が強張るものだ。

 見たからに輩なこいつらがそんな修練を積んでいるとは思えない。

 だから僕は男がそうなることを予測していた。予知と同じレベルで知っていた。

 あと一歩で間合いに入る、という所で僕は走り幅跳びの要領で跳躍した。

 左脚の爪先で男の鳩尾をぶち抜くように蹴る。既に僕の体は左側に回転していて、左脚を支点に回転した必然から付いてきている右脚で頬を蹴り飛ばす。

 男の歯がぽーんと飛んでいったのを確認しながらそのまま右脚で着地した僕は隣にいる男を睨む。だが、これは由兎の獲物だ。


 僕に睨まれ蛙のように固まった男は由兎の接近に気付かなかった。

 由兎はつまらない、とでも言わんばかりに溜息を吐きながら身を低くして男の両脚にペーパーナイフを一度ずつ切り込みを入れる。

 ババロア兄弟の時とは違い深い切り込みだった。鋭利に切れるのだから切断は叶わなくても切り込むことは出来るようだ。


「え?」


 男は痛みに打ちひしがれるよりも先に驚きの声を上げた。

 攻撃されたことが驚きなのでなく、切られた瞬間に膝をついたことに対する驚きのようだった。その後に痛みはやってきたようだけど。


「ああ、腱を切ったのか」


 由兎が狙ったのは腱だ。腱を切ればどんな屈強であろうと立ち上がれない。筋肉や根性の問題ではないのだ。動きはしない。


「君ねえ……邪魔しないでよ!」


「手こずってたのは由兎が悪いんだよ。とろとろやってんのがいけないんじゃない?」


「……はあ。君、殺意が入ると本当に性格変わるね」


 由兎の言葉は的を得ている。

 確かに僕はどうしようもなく殺意が抑えきれなくなった時、変貌する。

 いつも抑えている反動だろう。

 そして、人並以上に殺戮欲が強いのかもしれない。


 数はいつの間にか残り六人。少年を引いて五人になっていた。

 僅か二分足らずの出来事に男達はあからさまに動揺している。

 だが、少年は――欠伸をしていた。


「あっは、予想済みだよこんなの。こいつらにそこまで期待はしてないよ。下っ端のランカーが束になっても勝てないなんて知ってるさ」


 こいつらもランカーだったのか、と足元に転がった四人を見下す。

 あまりにも弱すぎて滑稽だ。


「安心してよ、楽しませてあげるから。僕が誰かなんて、どうでもいいでしょう?」


「そうはいかないわ。あんたにはきつーい拷問してあげるから覚悟してなさい」


 僕としてどうでもいいのだが、冷静に考えれば確かに問題ではある。

 素性の解らない奴に狙われるというのは反吐が出る話でもあるし。


「あっは、魔女に拷問なんてされたら、僕、目覚めちゃいそう」


 にやり、と幼い顔には酷く不釣合いな笑顔を見せると少年はぱんぱんと二度、手を叩く。

 どうやらまだもう一人いるらしい。


「おいでー。ザグナルー」


「ハイ、おヨびデスか、ボッちゃン」


 なんの冗談かと一瞬疑った。

 奥の闇から現れたのは屈強で片付けられる者じゃない。

 筋肉隆々の肉つきは百九十センチは超えていそうな体格を更に大きく見せている。

 丸太のような脚にはさっき触ったばかりだが、丸太のような腕を見たのは初めてかもしれない。

 迷彩柄のズボンに白のタンクットプ。金色の髪は短く瞳は碧い。


「が……外人の傭兵……?」


 何を考えてると一瞬少年の思考に疑った。

 少年がリーダーなら僕達を狙っているのは少年だろう。

 理由は解らないがこんな外人を連れてくるなんて。


「彼は平和な世界の戦争で生き残った殺戮のプロなんだよー」


 それも、どうやら金で雇ったらしかった。

 ここまでして僕達を殺す気なのかと思うと、少年の執念が垣間見えたような気がして気味が悪くなる。

 同時に俺は――


「くく……くはっ、ははははははははは!!」


 ――嬉しかった。

 ここまで純粋に俺を殺そうとしてきた少年が嬉しかった。

 その殺意が嬉しかった。

 そして、そんな下種にこそ――殺意を向けるに相応しい。


「由兎、悪いけどあいつは僕が貰うぞ。僕の、獲物だ」


 逃してたまるかこんな大物。

 渡してたまるかこんな大物。

 生かして、返しは、しない。


 僕の心の奥深くで、乾いた欲望が満たしてくれと唸り声を上げている。

 同時に、快楽のスイッチが簡単に入って炎が飛び火して一気に燃え盛る。


「それじゃあ私は雑魚で我慢するわよ」


 今だけはこれが本音でしかない。

 だから、僕は由兎に感謝を述べた。


「ありがとう。大好きだ、由兎」


 心の中で道化が暴れまわる。

 楽しい殺戮パーティーは最高潮へと達していた。



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