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死神のウィンク

作者: 刃七


街灯の薄い地方の田舎道。

死神の両目が徐々に膨らんでくる。

俺は吸い込まれるようにしてその両目、つまりヘッドライトのど真ん中に飛び込んだ。


死が迫る。

時が緩くなる。

嫌な記憶が脳裏を巡る。


<これが走馬灯ってやつか……>


早とちり。勇み足。思い込み。

様々な勘違いに狂わされた人生だった。

俺は小さな町工場を営んでいた。

嫁とは結婚相談所で知り合った。良妻賢母になりそうだと踏んで即プロポーズしたものの蓋を開ければとんでもない浪費家。早々に離婚したものの法外な慰謝料をふんだくられた。

単なる風邪の症状を中途半端なネット情報のせいで不治の病と思い込み、そのストレスで胃を壊し入院した事もあった。

そして先日。

知り合いに勧められた投資で簡単に100万円以上の利益が出た。これはイケると思い込んで事業資金まで突っ込み、全てを失った。

何の気なしに買ったロト6も当然の如く外れて万事休す。


<死のう>


今朝部屋を片付け、燃えるゴミを出して家を出た。飛ぶ鳥跡を濁さずだ。

死に場所を求めてあちこち徘徊するも、なかなか覚悟が決まらない。

夜になり、人気のない公園で1人コンビニで買った酒を飲んだ。

スマホを取り出し、未練たらしくロト6の当選番号を再確認する。


当選していた。


1等1億8千万円。

抽選日を勘違いしていた。

当たり券は今頃炎に包まれている。


俺はフラフラと歩道へ出た……。



2つのヘッドライトが目と鼻の先に来た。


<ん? 待てよ>


勘違いだ。

燃えるゴミの日は今日じゃない、明日だ。当たり券は今でもゴミ置き場にある。なんてこった。最期の最期まで俺は……。


全てを悟り目を閉じた瞬間、俺の両脇を2台のバイクがすり抜けた。


「馬鹿野郎、死にてえのか!」


形が違う2つのテールランプが遠ざかる。


助かった……。


しかしすぐに後続のバイクが猛スピードで迫る。

せっかく拾った命。死んでたまるか。

眩しいヘッドライトを避けて歩道へ飛び退き、俺は宙を舞った。

左のヘッドライトが切れている車が、ウィンクしながら走り去った。



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