王太子殿下、発言には気をつけてください。次は、ありませんから!
ここは、王家主催の王太子殿下の誕生日パティー会場
普通ならば祝福する場であるはずなのだが、会場は騒然としている。その原因を作ったのは他ならぬ今夜の主役 ヤイール王太子殿下だ。騒然とした会場でいち早く冷静さを取り戻したのは、アイナ公爵令嬢だ。そして、彼女がヤイール王太子殿下の婚約者でありヤイール王太子殿下のある発言で一番、被害を受けた人物であった。
「ヤイール様、先ほどの発言はどういうことでしょうか?」
冷静さを取り戻したといっても やはり戸惑いを表したままアイナ公爵令嬢はヤイール王太子殿下に発言の意図を聞いた。
「そのままの意味だよ、アイナ。もう一度言うけど君との婚約は破棄する。」
とニコニコ笑いながら言った。ヤイール王太子殿下の発言でいったいどういうことなのかとまた会場は騒然とした。
これが、馬鹿な王族の発言ならばここまで騒然とすることはないだろうが、ヤイール王太子殿下は人柄も良く笑顔を絶やさない人物であり、髪は日の光のような金髪と碧眼というイケメンであり、文武両道。
まさにおとぎ話に出てきそうな完全無欠の王子様だ。
だからこそ、そんな王太子が王家と公爵家の契約ともいえる婚約を何故、破棄するのかと会場にいるほとんどの人は不思議に思っていた。
「私が、何かしてしまいましたか?」
「いや、君が何かしたわけじゃないし何も悪くないから大丈夫だよ。」
『『『『『えっ、じゃあ何で婚約破棄するんですか?』』』』』
アイナ公爵令嬢や参加者の貴族達はみんな心の中でそう思った。
「なら、何故婚約破棄を?」
みんなの心の声を代表して公爵令嬢は聞いた。
「そうだね。あえて言うなら君の恋を応援したいからかな。」
王太子殿下は笑いながらにそう答えたが、周りの反応は バラバラだった。アイナ公爵令嬢は、氷のような令嬢と呼ばれるほどあまり感情を表には出さない人物として有名であったので、そんな令嬢が恋をするのかと疑問に思う者、相手が誰なのか考える者、応援したいと思う者、そしてチャンスがめぐってきたと思う者。
一方、アイナ公爵令嬢は表情は変わっていないものの心の中では顔は真っ赤になっていた。
『ヤイール様、何で今言うんですかーーー!!!!!
というか、そんな理由で婚約破棄をしないでくださいよ!!もう、恥ずかしくて死にそう///////』
アイナ公爵令嬢は、氷のような令嬢と呼ばれているが実際はそんなことは全然ない。だが、彼女が表情を表に出すことが苦手なだけで心を許した者の前ではとても表情が豊かだ。王太子殿下も幼馴染みということもあってそのことを知っている数少ない一人だ。
「ヤイール様、何を勘違いしているのかわかりませんが、私は恋などしてはおりません。」
『とりあえず、否定しておかないとあとが絶対面倒なことになるんだから。』
「人を好きになることは素晴らしいことだから隠す必要はないとおもうよ。」
『せっかく告白できるようになるんだから、素直になればいいものを』
「なら、俺は遠慮なく求婚させてもらうとするか。」
ん?何か違う人の声が聞こえてきた気がすると参加者達は声がしたほうを向いた。
そこにいた人物は、ユリウス侯爵子息だった。ユリウス侯爵子息もイケメンであり、文武両道。こちらは、少し癖が強いが優しいのも事実なのでとても女性に人気がある。そんな人物が、求婚したので憧れていた令嬢達の悲鳴はとても大きく男性のなかには耳を塞いでいる者もいた。
一方、アイナ公爵令嬢はそんなユリウス侯爵子息とは幼馴染みということもあって気心も知れた仲だと、思っていたが今の発言が何なのかは全く理解できてなかった。王太子殿下は、いまもニコニコしている。
ユリウス侯爵子息は、アイナ公爵令嬢の前に跪いた。その行動を見てアイナ公爵令嬢は内心慌てていたが、そんなことはお構いなしにユリウス侯爵子息はアイナ公爵令嬢の目をみながら言いはなった。
「アイナ、俺はお前のことを愛している。それに俺なら、お前を必ず幸せにできる。だから、これをとってくれないか?」
そう言いながらユリウス侯爵子息は、手を差し出した。
「な、何故 私に求婚を?」
『ユリウスが私に求婚とか絶対何か裏があるでしょ!
・・・・何か自分で言ってて悲しくなってきた。』
アイナ公爵令嬢は、少し耳を赤くさせながら表情はなるべく冷静さがあるように思わせつつ内心は恥ずかしがっていた。
「裏なんてないから安心しろ。俺が、お前のことが好きだから求婚したって今言ったばっかりだろ。」
そう言いながら、ユリウス侯爵子息は胸元のポケットから何かを取り出し、ただの告白だったと知って顔を真っ赤にしているアイナ公爵令嬢に見えるように差し出した手の上においた。
「アイナ、これはお前がいつも肌身離さず持っていた誰かさんからもらったブローチだ。」
ユリウス侯爵子息は、綺麗に笑いながら言った。参加者の貴族達もそのブローチを見たが、中央には満月のデサインがえがかれているおしゃれなものだった。アイナ公爵令嬢は、そのブローチを見た瞬間 真顔になった。
「そのブローチを何故貴方が持っているのですか?」
「落ちていたのを拾っただけだ。それよりなくなったと思っていたものが見つかったんだからそれでいいだろ?」
「まぁ、そうね。見つけてくれてありがとう。」
アイナ公爵令嬢は、そう言いながらユリウス侯爵子息の手の上にあるブローチを取ろうとした。
だが、取ろうとした瞬間に手をつかまれ気づいたらいつの間にか立ち上がっていたユリウス侯爵子息に抱きしめられていた。
「求婚を受け入れてくれてありがとう。」
「え、私求婚なんか受けいれてないわよ!ユリウス、とりあえず離して!!」
アイナ公爵令嬢は、力ずくで離れようとするが全然離れることなどできず、そんな行動を見ながらユリウス侯爵子息は不服そうに言った。
「何いってるんだ。さっきブローチを取っただろうが。」
「何でブローチを受け取ったら求婚を受けたことになるのよ!!」
「俺は、手を差し出しただけで 手を取ってくれなんて言ってない。」
「あ・・・・・。」
『はめられた!!!!』
アイナ公爵令嬢は、その後自分の迂闊さを心底嘆いていたが、だんだんその感情は怒りに変わりもちろん怒りのほこ先はユリウス侯爵子息に向かった。
「・・・よくも はめてくれたわね!!!」
「そんなに怒ることないだろ。じゃあ俺が普通に求婚してたらお前は受け入れてくれたか?」
「そ、それは・・・・。」
アイナ公爵令嬢はユリウス侯爵子息にそう言われてたしかに普通に求婚されていれば適当に言って今は受け入れなかったかもしれないと思い、言い返すことができず、おもわず顔を背けた。
だから、その時ユリウス侯爵子息が顔を悲しそうに歪めたことをしらなかった。
「お前が今、言い返せなかったのが答えだろ?
・・・・・お前に好きなやつがいることは知ってる。それでもいいから俺はお前と一緒にいたいんだ。だから、諦めてくれないか?」
ユリウス侯爵子息は、そう言いながらアイナ公爵令嬢を強く抱きしめた。だが、その姿は、すがりついているようにも見えた。アイナ公爵令嬢は、何を言っているんだという目線をおくっていたが、そんな姿を見て意を決したのか口を開いた。
「・・・ユリウス、あなた何を言ってるの?」
「だから、求婚を諦めて受け入れてくれって言って「その事じゃないわよ!何で好きな人がいることになってるのって言ってるの!!!」
アイナ公爵令嬢は、何でそんなことを言っているのかと心底理解できないといったような顔をしている。
「はぁ?お前が肌身離さず持っているそのブローチを送ったやつのことが好きなんだろ。」
「え?」
「お前が、そんな大切にするってことは相当 相手に好意を寄せてることぐらい想像できる。」
「そうよ。私ね、あの子のこと本当に好きよ。」
「あの子って、年下なのか?」
「えぇ、そうよ。だから、他の人に取られる前にどうにかして早く一緒に暮らしたいだけどね。」
ユリウス侯爵子息は、その言葉を聞いて俺は年下なんかに負けたのかよと、うなだれていた。
そんなユリウス侯爵子息の様子に気づいていないのかアイナ公爵令嬢は、さらに続けた。
「あの子はね、やっぱり家族になって欲しいのよ!あんなに、一緒にいて楽しい子なんてそうそういないしし、カイルとも言い合いできてるのよ!」
「カイル?・・・あぁ、お前の弟か。昔はイタズラ好きのチビだったか。」
「それが、今じゃ大きくなちゃったのよ!おかげで、今はからかいがいがないの。でも、カイルのおかげであの子に会えて友達になれたから一応、感謝はしてるけど。」
「そうだったのか・・・・」
「だからね、早くあの子にアプローチでもして結婚してほいんだけどね。」
「そうか・・・ま、待て今、誰と誰が結婚してほしいっていった?」
「?カイルとこのブローチをくれた女の子よ?それがどうしたの?」
「そういうことか、なんだ、俺の勘違いだったのか・・・・・。」
「???」
ユリウス侯爵子息は、アイナ公爵令嬢の何も分かっていない様子を見て深いため息をついた。
「何か、言いたいことがあるならはっきり言って言ってくれる?」
「・・・・お前が、超絶に鈍いっていうことだけ、分かった。」
そういうとユリウス侯爵子息はアイナ公爵令嬢の唇を奪った。唇が、離れた瞬間 何が起きたのか理解した、アイナ公爵令嬢は顔を真っ赤にした。
「ユリウス!!何 考てるの!!それにこんな人前で!!」
そう言って辺りを見回したアイナ公爵令嬢は、思いもよらない光景に唖然とした。
「どういうことなの・・・・。」
その様子を見ていたユリウス侯爵子息は、してやったりという表情で笑って言った。
「どこに人が居る?」
「だって、さっきまでは会場に・・・・一体、いつからここに・・・」
今、居るところは王国でアイナ公爵令嬢が、一番好きな薔薇公園だった。
「お前が、ブローチを受け取ったときからだ。」
「あの時に、転移魔法を・・・」
「子供の頃に、告白されるならここが良いって自分で言ってただろ?」
ユリウス侯爵子息は、少しアイナ公爵令嬢から距離をとりその場に跪くと、
「アイナ公爵令嬢、昔から、貴方のことをお慕いしておりました。どうか私の花嫁となっていただけないてなしょうか?」
「ユリウス・・・」
『もう、良いのかしら・・・、正直になっても・・』
「はい、喜んで、私もあなたの事を、子供の頃からお慕いしておりました。」
アイナ公爵令嬢は言い終わると顔を真っ赤にしながら本当に嬉しそう笑った。
「っ・・・もう絶対に、離さないからな。」
「まだ、あの時のことを言ってるの?でも、もう置いていかないでね。」
「あぁ、もう死んでも絶対離さないからな。」
二人はほ微笑み合いながら、もう一度お互いを確かめあうように長いキスをした。そんな、二人の顔はとても幸せそうだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
二人が、居なくなった会場は当たり前だが騒然としていた。そんな会場の雰囲気を見て動こうとしたのは、さっきまで驚き過ぎて固まっていた王座に座る国王だった。
「ヤイール、婚約破棄とはどういうことだ。」
「父上、何を言っているのですか?婚約破棄の手続きを済ませてくれたのは父上でしょう」
「何を言っている?わしは、婚約破棄のことなど全く聞いておらんわ!!」
「え、母上が、父上には伝えたと・・・。」
その言葉を聞いた会場全体の貴族は、王妃エリザベスのことを見た。
「オホホホ。」
「エリザベス、どういうことなのだ!!」
王は責めるような口調で王妃に言った。だが、言われた本人は、王の態度を見て笑っていた顔が鬼も裸足で逃げ出すような顔に一変した。持っていた扇は見事に折れ、会場全体が凍った。
「どういうことですって?よく自分の過去の過ちを棚に上げて言えるわね。ヤイールとアイナの婚約を私に言わず勝手に結んだのに。あなたのその判断のせいでアイナとユリウスは、ずっと辛かったのよ!」
王は王妃に責められ小さくなっていて会場にいる貴族たちの間にはなんとも言えない雰囲気が、流れていた。
「父上と母上の夫婦喧嘩は気にせず、私の誕生日会を楽しんでくれ。」
ヤイール王太子のひと声で会場の雰囲気はよくなり貴族たちは心の底からヤイール王太子に感謝したのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
会場の入り口の所に一人たたずむ青年がいた。
「これでユリウスの執着があいつに向かうことはなくなったな。」
そう青年は言うと自分が愛してやまない一人の少女のことを想い微笑んだ。
「俺は、必ずお前を捕まえる。待ってろよ。俺の愛しのお姫様・・・」
最後まで読んでくださりありがとうございます。よろしければ高評価などをしてください。この作品が、高評でしたら続編を書こうとおもっています。