理事長
「あ、『手を触れぬ覇者』……ハル・レッシェルトン様よ……今日も美しい……!」
「あっこちらを見てくださったわ!」
違う。こんなはずじゃなかった。そもそも!私が痛いの嫌なんてわがまま通したからこんなことに……
「というか、なんで『手を触れぬ覇者』が他の生徒に……」
「僕が言いましたからね。」
アースフォード・サファリア……武道大会準優勝の毒、闇属性の使い手だ。
「なぜ言うのですか」
「あ、そうだ。武道大会が終わるともうテストが始まりますね」
「え、」
「ちょっとスルーしないでください」
そして、ついでにシルヴィエース・ラサイア。私の故郷の領地の貴族だ。こちらはとっても性格がいい。
「……テストと言ってもまだ6月……範囲は狭いではないですか」
「いやー“天才少女”様にはわかんないかなぁ……」
「ちょっとその話は……!」
キンコンカンコーン
『1-Ω、アースフォード・サファリア、シルヴィエース・ラサイア、ハル・レッシェルトン。大至急理事長室に来なさい。』
やや荒目の声で放送が流れた。この瞬間ってやっぱりゾッとする……心臓に悪い
「あれ……僕なんかしたっけ……」
「僕も別になんもしてませんけどね」
「それを言うなら私だって……!」
いいや。とにかく行かなきゃだね……
◇◇◇
「失礼します。1-Ω、アースフォード・サファリア及び、ハル・レッシェルトン、シルヴィエース・ラサイアです。」
「入りなさい」
部屋に入ってまず思ったのは部屋の広さ。どこの高級ホテルだよって位、綺麗な内装だ。そして、その一番奥……レッドカーペットの先には理事長と思われる人が机に足を置き偉そうな態度で待ち構えていた。その隣には賢そうな美人秘書さん。そう、秘書がいるなら彼女は理事長なのだろう。だって、どこからどうみても
(完全なる子供……)
長く綺麗な金髪の髪、絵に描いたような顔立ち、そしてフリルやリボンが控えめな、子供にしては大人しい青いドレス。小さな体。しかし態度だけはとてつもなく大きい。
「あら?なぜ頭を下げないの?わたくしはこの王立学園を任された公爵家でしてよ?」
シルヴィエースが子爵家、アースフォードが辺境伯、私は成り上がりの侯爵家……駄目だ。身分が上のものは誰一人としていない。しかし……
「この学園では身分を振りかざす行為は禁止なのでは?」
「……はあっ……あなたってなぁんにも分かってないのですね。」
「というと?」
「わたくしはこの学園の理事長!校則なんてどうにでも出来るのでございますわ!!」
なんていうクソ理事長だ。子供とはいえクズがすぎる……いや、甘やかされて育てられたらなぁ……
「どうしましょうかぁ?ここで校則を変えるのもありですわねぇ?」
「理事長。駄目ですよ」
「……初めてだったから許して差し上げますが次は許して差しあげませんから!!」
とりあえず、一命を取り留めたようだ。ありがとう秘書の方。
「本題に入りますわ。まず、ハル・レッシェルトン!!貴方はわたくしの物語を滅茶苦茶に致しました!!」
「はぁ?」
「あの試合はシルヴィエースまたはアースフォードが勝つ試合!!何故貴女が勝ってしまうのです!」
いや、私に言われても……勝ちたくもなかったのに。というかあの武道大会は出来レースということなわけ?
「続いてシルヴィエース・ラサイア!貴方、リリーノワールとの恋愛はいつ発展するのでして!?まだ喋りかけてもいないじゃない!」
「なんでホワリスさんと恋愛関係になるんですか!?」
リリーノワール・ホワリス。Ωクラスの1人だったはず。白いフワフワの髪に桃色の瞳。一言で表すなら『天使』だろう。確か双子の妹で、兄はローズノワール・ホワリス……あれ?彼もΩクラスだよね……?……クラスとの関わりが無さすぎる。
「アースフォード・サファリアもよ。傘を忘れたリリーノワールに傘くらい貸してあげなさい!何のために忘れさせてるとおもってるの!?」
だからあの子傘毎回忘れてたの……??この理事長も酷いことするもんだ。
「……あっ!いい事思いついちゃいましたわ!ハル。貴女が悪役令嬢です!」
悪役令嬢というと、乙女ゲーとかでヒロインをいじめにいじめ抜くあの最低な女共の事か。まぁ、婚約者をぽっと出の平民に盗られるなんてだいぶ嫌なんだろうけど。
「嫌です」
「拒否権はありませんわ。貴女、自分の立場をおわかりで?」
「わたくしは侯爵令嬢です。あなたより身分はしたですが、私に何かを強要するほどの権力の差は……」
「侯爵令嬢?貴女、魔力が多いだけのただの平民ではありませんか」
「「!?」」
……かなりまずい




