変換者
ハルSide
ニッシェイルはもうそろそろ魔力切れだろうか?かなり疲労が溜まっているように見える。
「っ……はぁっはぁっ……」
ここで勝ってしまうと、かなりまずい。次は決勝……準優勝でも大分目立つ。いや、2番というのは埋もれてしまう位置?うん。よくわかんない
「ニッシェイル。もう駄目そうですか?」
「うーん……じゃあ最終手段使うかも?……っ」
最終……手段……?
「フィールド権は私が取るよ!!変換者っ!」
そう彼女がいうと、この剣から何かごっそり取られる感覚がした。そしてその代わりに来たのは重み。片手で振り回せた軽い剣はここにはなく、両手でも持てない鉛のような重さがあった。
「私の変換者は相手の何かと、私の何かをチェンジする私のスキル!今回はハルの暴食と疲労から来る私の身体の重さ交換したんだ!」
……魔力を使い過ぎた気だるさを逆手にとった上手い戦略。やっぱり頭冴えてる。
(この剣は使うのやめとこう。)
そう、重たい剣を手放した。さぁ。これで勝機はあっちの物だ。さよなら連勝!
「でもこれさ、1個弱点あるんだよね」
「は?」
「めちゃくちゃ魔力吸い取られる……」
そう言い残し、彼女はバタッと倒れた。……嘘でしょ?まさか自分の残りの魔力と、変換者で取られる魔力の計算が出来てなかった……と?
『この勝負、ハル・レッシェルトンさんの勝ち!!』
1番負ける可能性があった……いや、暴食無効化の生徒も可能性高かったけど。でも、そんな大チャンスで……こんな……
「あんまりだよぉ……」
◇◇◇
「凄かったよ!ハルちゃん!」
1回言ってしまったらもう苗字呼びはやめたシルヴィエースは私にそんな言葉を向けた。
「ねーやっぱハルルンは自分の手を煩わせない『手を触れぬ覇者』って感じするよねー」
「ハルちゃんにぴったり!ハーリャイルくんやるねー」
「その異名!ハーリャイルにしてはセンスいい!私のも考えて!!」
手を触れぬ覇者とは??そして、フランチェスカは、褒めなくていいよ?あとニッシェイルは回復早くないですか??
「んーニッシェイルは『大型犬』かな」
「っ笑」
「え?なに笑ってるのかな?シルヴィエース君。ちょっと1回骨折っちゃうけど……ごめんね?」
「いや、本当にごめん笑」
ギリギリ顔に出さないでいるけど、結構私も笑いそうだった。『大型犬』か……笑
「というかさ、ハルは手を下すまでもない実力もあるけどさ、やっぱり魔力量がえぐいよね。」
「あっ、それ私も思った!やっぱり人型4体呼び出す人は魔力量もすごいねー」
確かに、小さい頃からこのモヤッとした感じ……今となっては魔力と感じるが、この感覚は強いなーと思った。ちゃんと測ったことないけど……どうなんだろ?
そう思っていると、決勝戦の呼び出しがあった。アースフォード・サファリア……あれ、この人ってフランチェスカと4回戦目に戦った人だったよね?決勝戦まで残るならZクラスなんだろうか?
「あ、この人さ同じクラスだよねー僕、消しゴム貸してって言ったら無視された!」
「えー何そいつ。感じ悪」
同じクラス……?って、Ωクラスってこと?こんな人知らないけど??
「確かこの人、入学式来てなかったよね。僕も入学式来ない人が居たから覚えてるよ」
「というより、ハルちゃん1回くらいは話したことある……でしょ?」
……記憶にない。そもそも、今日までシルヴィエースとハーリャイルくらいとしか喋ってなかった。ニッシェイルもフランチェスカも赤の他人だった。
「ないですね。」
「「「「あー……」」」」
◇◇◇
さぁ。同じクラスらしい人と対決……結構気まずいね。1ヶ月経っても話したことは愚か、顔合わせることもなかったし。
「あぁ。あなたが噂の。こんにちは。アースフォード・サファリアです。」
噂の、とは?
「ハル・レッシェルトンです」
軽い自己紹介の後は沈黙が続いた。試合は始まっているが、一向に攻撃してくる気配は無い。……と思ったのだが。
ビシャッ
「!」
紫色のドロっとした液体が私に掛かる。……あぁ。沈黙の理由は魔法の召喚か。そしてこの液体は……
「っ!」
毒だ。腹の底から出てきたものを吐くと、血が出てきた。これ、かなりの猛毒じゃない?殺す気なのかしら?




