武道大会2
前回のあらすじ。兄にクソ兄貴とか言ってしまいました。
「……」
人生終了のお知らせが頭を埋めつくしている気がする。あぁ私のバカ!元平民が侯爵家の長男に「黙れクソ兄貴」?養女とはいえ、流石に不敬罪だ。貴族への無礼は重罪だ。マジで終わった。
「あははっwお兄ちゃん傷つくなー!」
彼の方をちらっと見てみると、特に気にしていない様子だった。いや、結構笑顔だ。……
(もしかしてこの人……)
微塵も思わなかった。いや、むしろドSだと思ってた。だって腹黒だもん。しかし、現実は私に悟らせた。
(この人ドM……?)
いや、人の不幸を喜ぶのは結構Sっ気がある。しかし、私が睨んでもニコニコし、冷たい言葉で突き放してもニコニコとしている。今日なんか私が綺麗に罵っても笑顔だ。これはMっ気が混じってくるのでは?
(あれ……?この人どっちな訳?え??)
◇◇◇
あの後、特に不敬罪をグチグチ言われることはなく、笑顔で帰っていった。自分の兄がどちらなのかは私にとってはまぁまぁ重要(兄を喜ばすような事はしたくない)で、剣の練習中もずっと考えていたら日は過ぎていき、早くも武道大会が来てしまった。
「主ちゃん!目指すは優勝!がんばるよ!」
「主様!わたくし達もお役に立てるように頑張りますね!」
使い魔を人型にして人避けにする案は我ながらいい案だ。しかし、使い魔たちがバリバリ意気込んでいる。
「あの……わたくしは優勝など……いえ、1試合も勝つ気はないのです。」
「は?おいガキ、何言ってんの?俺らに恥かかせる気?」
「おい白虎……!」
そう来ると思ったよ白虎くん。しかし、私には素敵な言い訳があるのだ。
「“能ある鷹は爪を隠す”と言うではありませんか?存じていらっしゃるでしょう?」
「も、ももももちろんだ!!あはっ……あははっ……」
こーれは存じてないね。確定演出。
「しかし主、侯爵家の令嬢が一勝もしないのは少々恥をかくのでは?」
確かに、侯爵家は貴族のトップクラス。王族や公爵家の次に地位がある。兄はこの王立学園の生徒会長でもあるし、結構プレッシャーと期待がかかる。が、そんなことどうでもいいのだ。他人の評価など気にしない。
(他人に流されすぎないところ、私の駄目なところなんだろな……)
「ハル様!1戦目頑張ってきてください!」
「あ、はい」
いよいよか……よし。頑張れ私。勝つな。
「朱雀。わたくしは恥をかいてもいいのです。侯爵家の養女ですから。」
「……」
◇◇◇
『1回戦目は、侯爵家、ハル様と伯爵家のアイウエオ様の対決です!』
……なんと分かりやすい名前なんだろう……
「俺は!この時のために努力を重ねてきた!首席のあなたと対決なんてこんな喜びない!!」
「そ、それはどうも……」
「俺の完全必殺技!!行け!『ファイアードラゴン』!!」
彼がそう言うと、大きな炎が私に向かって飛んできた。いきなり大技を出すのはあまり良くない。
(まぁ、避けたらあの人にとって最強の技が通用しないということだから負けも同然になるよね……)
ここはあえて避けない!!
キンッ
「なっ!!その剣、暴食付与の剣か!!」
グラトニーって暴食だよね?確かに剣に吸い込まれて行ったような……あれ?これ、魔法攻撃無効???
「アルさんって酷いですねー」
「何がだ?あの子が痛いのが嫌と言ったから俺の秘技である暴食付与を与えたんだぜ?柔らかくはないが痛くはない!」
「アハハ」
◇◇◇
その後、馬鹿なアイウエオは攻撃を連発し、魔力切れで運ばれて行った。
『1回戦目はハル様の勝利!!自分の手を煩わせず、自滅へ追い込むその実力は見事でした!!』
「ハル様つえー」
「俺大丈夫かな……」
そう、他の生徒はザワついていたのだが、当の私は……
「……」
バチッバチにピリピリしていた。いやいや、まさかの呑み込みは聞いてませんが?これじゃ魔法攻撃系の生徒にはほぼ全員勝つ。物理攻撃はまだ分からないけどやばい、一勝もしない私の目標が……!!
「ハルルーン!!凄かったねさっきの試合!!」
「ハルさんって結構弱いイメージあったけど〜結構強いね!」
「やっべー俺優勝目指してたんだけどなー」
Ωクラスの生徒がぞろぞろと集まってきた。
「ねぇねぇレッシェルトンさん!私ニッシェイル!あなたと友達になりたかったの!!なって下さい!!」
前世では友達なんて作らなかった。作りたくもなかった。だって友情なんて人間関係の中でも薄っぺらいものだもん。だからもちろん断らせていただく。
「あの……いいです」
「本当!?ありがとう!!」
……大丈夫って意味なのに、結構ですと言った方が早かった……
「えー抜け駆け酷い!……あ、私はフランチェスカ・ナッシュ。使い魔で戦うよ!……って言ってもハルちゃんは人型4人も呼び出したか。私も仲良くしたいな」
流石に、あなたは嫌。とういうような反応をとる訳にもいかず……
「……よろしくお願いします」




