潜入
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アカツキは、上は白のパーカー下はジーンズにスニーカーというラフな格好で、東京駅八重洲口に立っていた。
「指示書通りには来てみたものの、本当に東京駅の地下にアジトがあるのか」と独り言をつぶやきながら、駅口内のロッカーへ向かって歩き出す。
八重洲口には多くのロッカーが設置されているが、一カ所だけ客から死角となる場所に設置されているロッカーがある。
目的のロッカーの前に立ったアカツキは、入力パネルに「0891」と入力した。すると「18」と書かれたロッカーが開錠された。
アカツキが恐る恐る扉を開けると、中は奥の壁がなくずっと先に続く通路となっていた。
成人男性がかがんでやっと通れる通路を抜けると、コンクリートで打ちっぱなしの狭い空間に一人の男が立っていた。その奥にはエレベーターらしき扉もある。
「君が新たなに派遣された調査官かい」と男はアカツキに歩み寄りながら問う。
「何のことですか。私はただ招待状の通りにきただけなんですが」とアカツキは返す。
「ああ、警戒するのも当然だ。安心してくれ。私は君より先に潜入調査を行っていたイホカだ。本部には訳あって連絡することができなかったんだが、新たな招待者が来ると知って待っていたんだ」
信用し切れていないアカツキは「あなたが調査官だと証明できるのか」と問う。
「シライ班長は元気かな。あの人のことを知っているのは公安の中でもT処理班に配属された人だけだ。これでも信用できないというならどうしょうもないのだけどね」と肩をすぼめる。
少し考えてアカツキは「確かにシライ班長は私も配属されてから知った。分かった。信用しよう」
「ありがとう。仲間が増えたと思うと心強い。立ち話もなんだから先に進みながら話そう」とイホカは今度はエレベーターの方へ向かって歩き出す。
やって来たエレベーターに乗り込むとイホカが話し出す。
「ここを降りるといよいよアジトのお出ましさ。と言っても僕たちの目当てのボスにすぐに会える訳じゃない。ボスに会うためには信用を積まなきゃいけない。」
「どうやって信用を積むんだ」とアカツキは問う。
「コレを売るのさ」とイホカはTCCを指さして言う。
「TCCを」驚いた表情をするアカツキ。
(シライ班長からクラブがTCCを売っていることは聞かされていたが、まさか自分が売り手になるのは想定していなかった)
「ボスの部下達から配られるTCCを売ってノルマを達成する。そうやって信用を積むことで、ボスから認められる必要があるんだ」
「なるほど。これからしなきゃいけないことの道筋はついた」
そこまで話すと、ちょうどエレベーターが停止して扉が開いた。
長い通路が続き、曲がり角の先から微かな光が見える
降りた直後にイホカが思い出したようにアカツキに声をかけた。
「そうだ君のTCCを見せてくれないか。確認したいことがあるんだ」