容赦しない
誤字脱字など有れば指摘していただけると幸いです。
避けられなかった。
顔面にキックは直撃し、クウカはふっ飛ばされる。
地面に叩きつけられ、目を一瞬閉じてしまったのがいけなかった。
強烈なキックが襲う。腹や脚を何度も。
かろうじて顔は腕を組んで守るが、あまりの衝撃に骨が揺れる。
(くッ……今だッ!)
隙を突いて身体ごと転がるようにして攻撃を避ける。
飛び起きて、上空を警戒する。
しかし、ミシロは再びジャンプすることはしなかった。
「普通の人間なら最初の一撃で頭部が粉砕されてもおかしくない。でも、君は僕の攻撃を何度も受けながらピンピンしている。やっぱり普通の時計じゃないんだね」
クウカの左腕を指差す。
「せっかくだから僕の時計の能力を教えてあげるよ。僕のはね身体を纏う空気の流れを自由自在に変えることができる。ジャンプの原理や強さもそういうことだ」
クウカはただ黙る。
「さて、君の時計の能力も教えてくれるか。確か熱を利用するんだったかな?」
ミシロのポケットからは微かに光が漏れている。
「私の能力が何であろうと、あなたには関係ない。私が与えられる猶予にも限界がある。あなたの態度次第だ。時計を渡してきた者に利用されるのか、悔い改めて普通の生活に戻るのか」
さっと顔が強張る。
「そりゃ答えはこっちだよッ!」
空を切る音がして、ミシロは大きく飛び上がる。
高さはさっきの比ではない。月明かりに小さい影が浮かぶ。
ミシロは上空で思案する。
(あいつの能力が熱の利用だとすれば、十中八九で周囲の空気か僕の身体を熱するだろう。でも無駄だ。僕の能力には、周囲の空気を比率は同じままに複製できる力もある。どれだけ熱しようがすぐに冷却できる僕の前にあいつは無力)
屋上の黒い影にアイコンタクトをする。
ポケットの光が消える。
眼下にクウカの姿を認める。あと一秒もすれば接触する。
(ああ、これで終われるんだ)
クウカの右手にはライターが握られている。
「自ら不幸な選択をする相手にはこちらも容赦しない」
蓋を弾き、炎が吹き上がり中から剣が現れる。
互いに目が合う。クウカの顔は険しく、ミシロは恐怖の表情になる。
(まさか…やめろおおおおお!)
剣はミシロの脚を貫いた。




