即時適応せよ
誤字脱字など有れば指摘していただけると幸いです。
箱を開けると、赤を基調として黒のラインが入った作業服が出てきた。
胸元には「みずほ運輸」と刺繍がある。
車を飛ばしながらシライが話す。
「クウカ君には空港併設の倉庫に潜入してもらう」
「併設というと十年前にできたあの巨大倉庫ですか?」
「そうだ。君の任務は敵の監視網の構築を阻止すること。詳しい中身は改めて連絡しよう」
話をしている内に空港に近づく。
窓から少し見上げるだけで飛行機がはっきりと見える。
「さあ、車で入れるのはここまでだ。二人とも頼んだよ」
「「はい」」
車を降りてアカツキは空港に、クウカは倉庫に向け歩いていく。
案内表示に従って倉庫の玄関にたどり着く。
建物には社のロゴがデカデカと描かれている。
自動ドアをくぐり抜けると、一人の女性が立っていた。
クウカが入ってきたことに気づくと声を掛けてきた。
「あなたが今日から採用されたっていうクウカさん?時間ないので、今から言うこと一回で覚えてくださいね」
そう言うとツカツカと歩きだしてしまった。
女性は倉庫内を一通り説明して回った。
クウカに質問する隙を与えず、一方的な説明であった。
終始不満げな顔でクウカに目も合わせず、説明が終わればすぐに次の場所へと歩き出す。
一時間ほどかけて最後の施設であるロッカーまでたどり着いた。
「ここが従業員用のロッカーです。鍵はしっかり掛けてくださいね。最近、よく物が無くなるので。という感じですね。というかメモとか取らなくて良いの。もう一度聞かれても説明しないですからね」
「大丈夫です。覚えてますから」
それに返事をするでもなく女性は歩き出す。
「あっセンター長!」
社員用のデスクに戻る途中で、女性が呼びかける。
「どうした」
「今日から入ったクウカさんです」
「おお、そうか。期待してるよお。まあよろしく」
センター長と呼ばれた男は、ガタイが良く声が大きい。
大きな手でクウカに握手をすると上下に大きく振る。
ひとしきり振り終わると、女性の方に向き直る。
「やっぱり君を教育係にして良かった。大ベテランだからね」
「まだ4年目ですけど」
「平均勤続年数二年以下のウチではベテランの部類でしょ。まあ頼んだよ」
センター長が立ち去ると、クウカに話しかけてくる。
「ここ慢性的に人手不足なんですよね。人間関係も希薄ですし、何なら仲が悪い社員の方が多いですね。私もセンター長のこと良く思ってないですし。とにかく、仕事をさっさと覚えてもらわないと迷惑なんで頑張ってください」
女性はまたツカツカと歩いてゆく
クウカは背中に向かって「はい」と一言投げかけるのが精一杯だった。




