表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/58

時間

第一部はこの話で終わります。

誤字脱字など有れば指摘していただけると幸いです。

 アカツキは汗が止まらない。

 地下駐車場は陽射しこそないが、空気が熱せられて簡易的なサウナのようになっていた。

 そこに黒い自動車が入ってくる。

 出入口のすぐ側に駐車した。


 アカツキが乗り込むとシライの方から口を開いた。

 「早めの夏休みはどうだったかな?」

 「全く休んだ気がしませんね」

 「そりゃあ残念だ。それでどこまで分かったんだ」

 シライの口調が厳しくなる。顔もアカツキを少し睨んでいる。


 「本題に入る前に一つ。まず、なぜ東京駅で私を燃やさなかったんですか?」

 「いきなり何言ってんだ。部下を見捨てられないだろう。そのために電光掲示板に指示を出して、ケースに性能書を入れたんだろ」

 「TCCを見捨てられないの間違いではなく?消防の検証によれば出火予想時刻は私が東京駅に入ってすぐみたいですね。イチジもろとも燃やしても良かったのにそれをしなかった」

 シライは黙っている。

 「次に私が病院まで搬送されたとき、なぜあなたが付き添ったんですか?いくら直属の上司といっても一人の部下のために東京駅と大勢の命を見捨てますか」

 シライは口を閉ざしたままである。 


 「黙秘ですか。仕方ない。では本題に入りますよ」

 シライがアカツキの目をまっすぐ見る。

 「シライギンジロウ。あなたは公安の任務でTCCの開発をしていた。日米合同の研究で完成すれば両国の諜報機関、軍の特殊部隊に配布される予定だった。事実、あなたは完成させることができた。しかし研究員の裏切りによって地球全体に拡散。その責任をとって表向きは職を辞したが、実際は日本におけるTCCの回収任務に就いた。極秘任務だから少数の人間で班を運用。そして今回日本での任務を達成した」


 少しの間があってシライが口を開く。

 「そこまでか」

 「はい?」

 「そこまでなんだな。その程度なのか」

 呆れと残念の感情が混ざったような表情になる。

 「じゃあどうするんだ。公安は日本の脅威となるものに未然に対処すべきだ。私をここで殺すか。ほら、私はコレを着けてないし簡単だろ」

 袖を少し上げて腕を見せる。そこにはTCCも腕時計も着いていなかった。


 沈黙が続く。クーラーの音と二人の呼吸音だけが車内を支配する。

 何分経ったか互いにわからないほど時間は流れた。

 

 

 「このTCCを外します。公安を去ります」

 その目には迷いや嘘はなかった。

 「あなたは日本を排除するのはまだ早い。だから私が先に責任を取ります」

 留め具を外しベルトを緩める。

 あと少しで皮膚から時計本体が離れる。

 

 

 「TCCは…」

 時計を持ち上げる寸前にシライが諭すように語りかける。顔は無表情である。

 「TCCは時間エネルギーを人間が受容できるエネルギーに波長を変換する装置だ。少しでも時間エネルギーを取り込んだ者は常にエネルギーの供給が必要な身体になる。もしTCCを外したり壊したりしてエネルギーの供給が無くなれば、分子の結合が失われて身体は煙のように発散していく。同時にTCCも変換したエネルギーの行き場を失って、内部機構が損傷して使い物にならなくなる」


 大きく深呼吸をしてアカツキは時計を着けなおし始める。

 「公安にいる以上は正直者ではいられないですね。まだ終わりじゃないってことなら日本のために付き合いますよ」

 今までよりも強くベルトを締める。

 

 「そうか」

 鍵を回しエンジンをかける。ハンドルを握る。

 「君には少しだけ正直になってみるか。TCCはリューズを押し込むのが本来の使い方だ。刀や電流はオマケみたいなものだ。君の能力は十二秒間だけ他のTCCの能力を停止させることができる。私は勝手にこう呼んでるよ」

 

 「クロノロック」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ