限界
誤字脱字など有れば指摘していただけると幸いです。
赤スーツは明らかに動揺していた。
「何故です。糸は解除していないのに」
「どうして糸が切れたか分からないのか。それならもう攻撃は止めた方がいいぞ」
「はい?人質の身体が自由になったところで、あなたが不利なことには代わりないですよ」
「そうじゃない。お前がそのまま攻撃して命を落とされても困るから教えてやろう。ずばり、お前の時計は出せる糸に限界がある」
「ほほう」
「限界を超えて糸を出そうとすると、その時計は古い糸から解除して新しい糸を出し続ける仕組みになってる。だからこのまま糸を出し続けたらお前を支えている糸も解除されるから忠告したまでだ」
赤スーツは少し考えるしぐさをして
「忠告には素直に感謝しましょう。しかし、惜しかったですね。その優しさで私を倒す可能性を潰してしまったのですから」
と言うと頭上に向かって新たに糸を出す。
赤スーツ自身を支えていた糸は消えていき落下し始めたが、新しい糸がすぐに支柱に絡まり身体を引き留める。
「ハッタリかとも思っていましたが、本当だったんですね。まあこうやって巻き付け直せば何も問題ありません」
アカツキの顔には焦りが見える。
「では、試練の続きを始めましょう。と言っても結果は見えていますけどね」
赤スーツはアカツキ達を取り囲むように糸を張り巡らす。
それは一つの巨大な繭に成りつつあった。
繭は赤スーツを中心に徐々に小さくなり始める。
数分もすれば全員捕らえられてしまう。
アカツキは糸を切ろうと刀を振るうが、刃先が滑って切ることができない。
(これはいかん。糸も切れないし電流を流せるような金属もない。こうなったら繭が小さくなるのをギリギリまで待って、あいつのところまで雷撃で繭を駆け上がるしかない)
その頃、キアタとヤマワカも頭を抱えていた。
「せっかく解放されたってのにまたピンチかよ。アカツキでもあんな高いところは攻撃できないし、俺の時計も今は役に立たねえし」
何かに気づいたようにキアタはヤマワカの方を振り向く。
「そういやワカちゃんの時計って使ったことないよな」
「えっ。あ、そういえばそうですね。でもどうやって使えば良いんですか?」
「えーと念じるというか、時計に力を込めるというか。ううん、もうとにかく自分のやり方でやってみろって」
「そんなふわっとした感じで言われても分かんないですよ。こんな感じですか」
ヤマワカが右手のひらを上にして力を込める。
すると、手のひらが光始めて白の立方体が現れた。
「箱?でも持った感じはずっしりします。ってそんな場合じゃない。やっぱり私じゃ駄目です」
キアタとヤマワカはその場にうなだれる。
「今までは何とかなったが、今度こそ万事休すか」
「熱っ!」
ヤマワカが叫び、立方体を放り投げる。
「どうした!」
「箱が急に熱くなって。もしかしたら爆発するかも」
「はあ?こんな時にそんな冗談言われてもなあ。って本当熱いじゃねえか」
「だから言ったじゃないですか」
「くそっ!せめて爆発するならあいつも巻き込んでやるよ」
自棄になったキアタは立方体を拾うと、赤スーツに向かって思い切り投げ飛ばした。
「さあさあ。3人まとめて糸に絡まれ…んっ!」
喋りかけていた赤スーツの目の前に立方体が飛び込んでくる。
それを認識した瞬間、とてつもない光を発しながら立方体は爆発した。
アカツキは何が起きたか理解できず、キアタとヤマワカは爆発に驚く
「マジかよ。本当に爆発しちまったよ」




