始まりの出来事
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アメリカ合衆国テキサス州
日が暮れた広い平野に3人の男が立っている。
1人は白衣を着た男。それに対峙するかのように、数メートル間隔をあけて黒のコートを着た男と白のスーツを着た男がいる。
「ジェイ、考え直さないか」子供に言い聞かせるように白スーツの男は問う。
「本気で言っているのか、シライ」とジェイと呼ばれた白衣の男は言い返す。
「私たちが長い時間をかけて作り上げたものを処分するなど馬鹿げてる。世に送り出されてこそ意味があるだぞ」
シライも言い返す。「ほとんどの人はをそれを正しく使うことができない。性善説では成り立たないんだ」
ジェイは憤りながら「そもそもシライが私とスズキに協力を依頼してきたんじゃないか。なぜ完成した今になってそんなこと言うのか理解できない」
「作っていく内に気づいたんだ。人々が私たちの想定しているようにそれを使うとは限らない。事実、作った私たちでさえ使い道で意見が割れた結果、君が保管庫の鍵を盗んでいってしまったじゃないか。」
そう語りながらシライとスズキは徐々にジェイに向かって少しずつ近づいていく。
シライの言葉を無視するかのようにジェイは「スズキはどう思うんだ。これで良いのか? 君がしてきた努力が無駄になるんだぞ」と問いかける。
「自分の努力が無駄になってしまうのは確かに残念だ。だが、不特定多数の人によってそれが無駄な使われ方をされてしまうのはもっと残念だ」とスズキは返す。
「どうやらこれ以上話しても意味が無いみたいだ」
どこか諦めた表情をしたジェイは腕時計で時間を確認して、おもむろに胸ポケットから銃を抜いてスズキに向ける。
即座に反応したスズキも銃を抜いた次の瞬間――銃声が響き渡る
ほぼ相打ちだった。スズキとジェイが同時に倒れる。
「スズキ! 大丈夫か!」「私のことはいい。鍵を早く回収しろ!」「分かった」
シライは撃たれたジェイに駆け寄って、ズボンのポケットからは服の中まで探る。
しかし「無い。どこにも無いぞ」と焦りながら探し続ける。
すると、気絶していたジェイが目を覚ます。とはいえ出血の具合から長くはもたない。
「私がロケット開発にも関わっていたことを忘れたかい。どうせこんなことになるだろうと思ってロケットに細工しておいてよかった。宇宙からの贈り物も来ているみたいだしね」
そう言ってジェイは目を閉じた。
それを聞いたシライは最悪の事態が頭に浮かんだ。ジェイが関わったロケットの発射日は今日なのである。そのロケットは地球から惑星まで大量の物資を運搬するという試みから大容量の積載室が備わっていた。
「中の荷物をそれと入れ替えていたら……」シライは急いでジェイの時計を見ると、発射予定時刻は過ぎていた。
シライはこれから始まる長い闘いを悟り、その場で一人脱力した。