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「この空に」(In this Sky):響生×塁生

#記念日にショートショートをNo.39『真面な人』(Decent person)

作者: しおね ゆこ

2020/7/24(金)スポーツの日 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n8819id/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/n40995deb3e63)

【関連作品】

「この空に」シリーズ

走る。走る。

インパラのように、風を走る。

速い。速い。

駆け抜けた後に、砂埃が鋭く立つ。

➖やっぱり、塁生は速い。



 高校最後の体育祭、最後の締めとなる紅白リレー。今年は、私は赤組,塁生は白組と、組が分かれてしまった。

だから何だって言うのか、組が違うから何だって言うのか。

別にだからどうだ、って言うわけでもないんだけど……同じ方が良い。


 野球をやっている塁生は、よくモテる。先日の告白現場を目撃してしまってから、塁生は何だか素っ気ない。

私の中にも、少しそうしたい気持ちがあった。

2人の間には、蟠りが立ち込めていた。


 体育祭が終わり、何気なく校舎の脇に入る。

水道の蛇口を捻り、塁生が顔を洗っていた。

あっ、と思う間もなく、塁生と目が合った。

咄嗟に、逃げ出していた。

「おい響生!」

後ろから塁生の声が飛ぶ。感情が戻るように促す。けれど足は止まらなかった。

グイッと腕が引っ張られた。次の瞬間、校舎の壁に押し付けられる。

「何で逃げんだよ。」

手がきつく押さえられる。目の前には塁生の顔。どうすればいいか分からなくなって、千切れた言葉が、そこかしこから引っ張り出される。

「だって…この間から…塁生がおかしいんだもん……。」

俯く。

沈黙が流れる。

「響生。」

名前が呼ばれる。俯いていた顔を上げる。

と、塁生の唇が私の唇を押さえ付けた。

突然のことに思考が停止する。身体が、言葉が、止まる。押し付けられた唇の間から、舌が私の唇をくすぐる。

ビクッと肩が震えた。塁生がハッとしたように、慌てて唇を離した。

「悪い……。」

塁生が顔を伏せる。

時が、歪に流れていく。

「ごめん…忘れろ。」

視線を私に合わせないまま、塁生が足早に立ち去った。

呆然としてその場に立ち尽くす。

幼馴染という空気の膜が、膨らみを喪い、揺れ始めているように感じられた。

唇を指でなぞる。

拒絶を覚えない自分を、高みにいる自分が嘲笑している。

【登場人物】

○高瀬 響生(たかせ ひびき/Hibiki Takase)

●桐早 塁生(きりはや るい/Rui Kirihaya)

【バックグラウンドイメージ】

【補足】

【原案誕生時期】

公開時

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