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06

これから公開処刑でも始まるんじゃないかと思われる雰囲気の中で。


「ルイ」


雰囲気にはちょっとそぐわない優しい声音がルイと呼んでいた。


呼ばれたルイのほうはピクリと肩を揺らすとバッとすぐに声がしたほうを振り向いた。


私もルイの目線の先に目をやってみると……。

(ななッ!?)

私は一瞬で目を見開いた。


ルイを呼んでいたのは、死んだ後、私に転生を勧めたあの球体だった!


「ちょ、な、なんでここにいるの!? それより、聞きたいことがあるんだけど!!」

私に話しかけた訳じゃないことをわかっていながらも私は思わず聞いていた。


「ちょ、ちょっと!」

私はルイに肩を掴まれた。けど、私は気にせずに球体を見ていた。


ところが、その球体はぐにゃぐにゃと形を変えようとしていた。

「ひぇ!」

私は驚いて後ずさりをした。


「失礼でしょ! 下がりなさい!」

ルイの厳しい声が私に向かって飛んできた。

言われなくてももう下がっているよと思わなくはなかったけど、私は何も言わずにただ、形を変えようとしている球体を見ていた。


(一体、どういうこと? 形を変えるなんてことしていなかったけど)

まさかとは思うけど、私が死んだ後に出会った球体とは違う……? と思い始めそうになった時に球体が人の形へとなっていた。


「妖精王様」


ルイをはじめとする私以外の妖精全員が一斉に頭を下げた。

私はただ、ポカンとした表情でその光景を見ていた。


「頭を下げて!」

ルイに注意されて、私も慌てて頭を下げた。

頭を下げつつ、チラリと妖精王様のほうを見ることを忘れなかったけど。


妖精王様は人間の姿になっていた。

人間と同じくらいの大きさになったと言うべきなのか。

存在感が半端なかった。


「ルイ。新人妖精にそのような物言いはいかがなものかと思うぞ」

「は、はい。申し訳ありません。妖精王様」

妖精王様の言葉にルイは一瞬で気落ちしているように見えた。


「顔を上げなさい。新人妖精」

(新人妖精って私のこと、だよね?)

私はゆっくりと顔を上げて妖精王様の顔を見た。

そう、見ようと思ったのだが。

(か、顔が見えない!!)

見上げても妖精王様の顔が見えなかった。

人間のような大きさになっている妖精王様の顔を拝むには背も小さく手足も短いミニ妖精の私には難しく感じた。


「妖精王様、発言をお許しください」

私は思いきってそう言った。

「もちろん、許そう」

妖精王様は何故だが楽しげにそう言った。

「先程のように勢いよくまた何か聞き出そうとするのではないかと思ったのだがな」

「妖精王様だとは知らず失礼な態度を取りました。申し訳ございません」

「かまわぬ」

妖精王様は笑いながらそう言った。

あまりにもあっさりしていて私のほうが拍子抜けしてしまった。


「それで? 何が言いたい?」

妖精王様の問いに私はハッと我に返った。

「妖精王様。きちんと目を見て話がしたいので、私は浮いた状態になってもよろしいでしょうか?」

私の言葉にルイを始めとする妖精たちが一斉にざわついた。


それと同時に妖精王様は我慢ならんとでも言うように大笑いをしていた。

(な、何? 私、何かおかしなこと言った?)

私は首を傾げながら今の状況を見ているしかなかった。

「ふふっ、新人妖精なのに怖いもの知らずなヤツだ」

妖精王様の言葉に私はカチンときた。

「怖がって自分の意見が言えないのはもうイヤなのです!」

(人間の時はそれで苦労したから)

もう人間ではないのに。詩織だった頃のことを思い出すと直さなければならないところだろうと感じていた。


「許そう、と言いたいところだが、そなたとはゆっくりと話がしたい。場所を変えるから先に行っていてくれ」

「え? は、はい……?」

(私と話? 何を話すつもり?)

私はぐるぐるとそんなことを考えていた。


「ルイ、一緒に行きなさい」

「わかりました」

妖精王様はそう言うとパチンッと指を鳴らした。

一瞬で私とルイの姿はその場からなくなっていた。


「さて」

私とルイの姿がなくなった途端に妖精王様は纏う空気を変えていた。

「大事な羽なし妖精にヒドイ言葉を投げ掛けていた妖精たちには罰を与えてやらねばな」

妖精王様の冷たい声音だけが響いていたことを私は知る由もなかった。


「ここは?」

妖精王様に瞬間移動をさせられた私とルイはとある部屋にいた。

部屋というより王様が民と謁見するための場所にも思わなくもないその場所にはまず、目の前に大きな水晶があり、奥のほうには教壇のような机と王座を思わせる椅子が置いてあった。

教壇の上にはちょこんと台座も置いてあった。

「妖精王様がよくいる場所よ」

ルイはぽつりと言った。


(え? いいの? ここって妖精王様のプライベート空間ってことでしょ?)

妖精王様がよくいる場所ということは部屋ではないのか? そんなことを思わず考えてしまう私だったが、大きな水晶が目について気になっていた。


水晶には私の姿が写っていた。

(そういえば私、妖精になってからの姿、まだ見てなかったな)

ピンクブラウンの髪色をした髪の毛は腰のところまで長くなっていた。

目はぱっちりと大きく、目の色はエメラルドグリーンを思わせる色だった。

羽なしと言われていたから、背中に羽がある感じはしなくて、自分の姿を確認しても羽は見えなかった。

手足は短く背が低いミニ妖精で、白のワンピースを着ていた。

(これが今の私の姿。これから先ずっとお世話になる姿……)

意外と可愛いわねと思わず自分で思ってしまった。

(可愛いんだけど、小さすぎるなぁ。妖精だから仕方ないのかな)


そんなことを思いつつも。

「……よろしくね」

ルイに聞こえないくらいに小さな声で私は自分に声を掛けた。


「ところで、あなた、名前は?」


ルイの質問にピキーンと私の思考は一瞬ストップした。

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