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星乃純は死んで消えたい  作者: 冷泉 伽夜
二年目
82/151

彼女を助ける方法 1




 アイドルトーク番組「ティーンエイジャー・アイドル!」の収録が終わる。ありがたいことに、純は初めて出演して以来、頻繁に呼ばれていた。


 帰り支度を終え、純は爽太と楽屋に散らかるゴミを片付けていく。


 スタッフは先に撤収し、熊沢は千晶と歩夢をつれて次の仕事先に向かった。


「和田くんは、スタッフと一緒に帰ってよかったんじゃない?」


 菓子の袋を捨てた爽太が顔を向ける。 


「ああ、うん、まあ、そうだけど……。俺もどうせ次の仕事ないし」


 マネージャーがもう二、三人つけば、わざわざ爽太が送迎を待つ必要もない。


 純は短く息をつく。


「グループ八人に対してマネージャーが一人って、ありえないよね。社長はそのへん考えなかったのかな」


 メンバーをデビューさせるのに必死で、という言葉を飲み込む。


「ごめん。ちょっと悪口っぽくなっちゃった」


 ほほ笑んでみせると、爽太も薄い笑みを浮かべる。


「普通は二、三人つくらしいね。でも人手が足りないんだって。さすがに来年からはつくらしいよ」


 楽屋はある程度、もと通りには片付いた。爽太はカーディガンを羽織る。


「さ。おれたちのお迎えももう来てるだろうから、はやく出よう」


「あ、うん」


 爽太は最近、純に声をかけることも多く、何かとフォローしてくれる。気を遣いながらも、純をグループの一員として受け入れているようだった。


 忘れ物がないか確認し、爽太と一緒に楽屋を出る。


「それなに?」


 爽太の視線が、純の手元に向いた。純が持っていたのはA4サイズの大きな封筒だ。


「これを渡さなきゃいけない人がいるんだ。先に行っててもいいよ」


「いいよ、一緒に行く」


 爽太が純を見る瞳には、ほのかな友好が浮かんでいた。純はほほ笑み、了承する。


 向かうのは、月子の楽屋だ。扉の前で、先輩の女性アイドルたちが、意地悪く笑ってたたずんでいる。中のようすを気にしていた。


「あ……どうする?」


 ためらう爽太を残し、純は近づく。爽太はため息をつきながら後に続いた。


「お疲れさまでーす」


 純の声に、女性アイドルたちは震えあがる。


「なにされてるんですか?」


 純は柔らかい笑みで、穏やかな声を出した。女性アイドルの一人が、ギスギスした声で返す。


「別になにも。ってか、千晶くんは?」


「仕事があるんで先に向かいました」


「ちっ。なんだいねえのかよ」


 瞬時に見えた。彼女たちが考えていることと、彼女たちの将来が。


 純は笑顔を崩さず続ける。


「おれ、月子ちゃんに用があるんですけど、みなさんも用があるなら一緒に入ります?」


「あー……あんた、あからさまにあの子に色目使われてるもんねぇ。お邪魔しちゃ悪いからうちらはいいわぁ」


 わざとらしく声を張っていた。


 女性アイドルたちは下卑た笑みを浮かべ、嫌な視線を向ける。純は笑顔のまま首をかしげた。


「え? 全然邪魔じゃないですよ? こんなところにいるってことは月子ちゃんに用があったんですよね? なんなら俺から伝えておきましょうか?」


「しつけぇんだよ! 二世風情がうちらに気安く話しかけんなっつうの」


 純が彼女たちに怖気づくことはない。小型犬がうるさく吠えるさまを見るような目で、笑っていた。


「あんたさ、星乃恵の息子だからって調子乗ってんじゃない? イノギフなんて千晶くんだけで成り立ってるようなもんだから。同じグループだからって勘違いしてたら痛い目見るよ?」


「まじ、それな~?」


 甲高い、耳障りな笑い声が響き渡る。


「千晶くん以外みんなザコだから」


「その他のやつらが売れるわけないじゃんね」


 純の後ろで、爽太が不快気ににらみつけていた。純は気にすることなく、明るく返す。


「さすが、先輩が言うことは勉強になります。今後の参考にさせていただきます」


「はあ? マジキモイんだけど。さっさと辞めたほうがいいよ? フローリアにブスはいらんから」


「もういこ。めんどくさいやつの相手することないよ」


 いまだにニコニコしている純を尻目に、女性アイドルたちはその場を離れていく。


 姿が見えなくなったころ、爽太が口を開いた。


「なんだあれ。あいつらだって大した活躍してないじゃん」


 眉間にしわを寄せる爽太に、純は優しい笑みを向ける。爽太の背中を軽くたたいた。


「まあまあ落ち着いて」


「いや、俺は落ち着いてるから。ってかなんで星乃くんは平気なわけ? 今回だけに限った話じゃないけど」


「……だって、彼女たちとは、これで会うのが最後だから」


「え?」


 爽太はいぶかしげに純を見すえる。


「もう二度と会わないってわかったら、何を言われても、これで最後だしなって思えるでしょ?」

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