41話 二の足を踏む
――見えずとも、嫌になるほど感じている。
正面から、真横から、うしろから。近くから、遠くから。
憎しみの込もった大量の目が、あちらこちらから私を監つめているのだ。視線に当てられた身体の熱は刻々と奪われ、不快な身震いが芯から全身へ、じわりと浸透してゆく。
草木から、花から、地面から、岩壁から、暗闇から。……窓の外から、布団の中から、戸の隙間から、人の眼から。
全てが私を見て、全てが私に語りかける。
聞こえずとも、たしかに感じていた。
身体の感覚は薄れ、中身には鎖が搦みついている。
もう、何も目にしたくなかった。
一歩踏む度にギシギシと軋む階段を上り、短い廊下に出る。女性の話によると、ミサは突き当たりの部屋に居るとのこと。
(……ここだな)
それらしき部屋の前に立ったウィルは、体の中央で拍動する鼓動が自分でも驚くほどに早まっていることに気付いた。思えば森を抜けて以降、彼女とはまともに言葉を交わしていない。加えて最後の会話など、彼女の心情の揺らぎを無視して考えを一方的に押しかけるような、それは酷いものだ。
彼は今になって焦りを覚える。あの場で男に差し伸べられた手を拒んだ結果が。自分勝手な理由で選択を下した結果が、彼女の心を更に捻じ曲げることになってしまった。そもそも変に意地を張らずあの男の提案を受け入れていれば、このような事態にはならなかったはずである。シャヴィは屈辱的な思いをするに違いないが、少なくとも命を落とすことはない。五人全員が生き延び、魔獣のいない平和な地で暮らす。機関とやらの思惑は不明だが、大事なのは、生きていることだ。生きている限り、自分たちの道も、シャヴィの道も、途切れることはない。
人の道とは、時として他人のそれに多大なる影響を与えるもの。シャヴィはいわば、閉ざされかけたミサの道を照らす灯だった。それは、ウィルとて薄々と気付いていた筈である。だが、自分の選択が今を招く引き金となった。
――彼以外に、誰が彼女を救えたのだろう。
(……俺はあの時、取り返しのつかないことを……)
男の言葉が脳内で反響する。
「こんな機会、二度もあると思うな」
「この先を行けば、死ぬより辛い目に遭うかも」
一日、二日ばかり経過した現状だが、はっきりと理解できる。全部、あの男の言う通りだった。男を信用できるか否かという問題以前に、真に仲間を思いやるならば、自我を押し殺してでも強者に従うべきだったのだ。
彼がこれほど自分を憎いと思ったことは、他にない。どのような精神状態で彼女に顔向けすればよいのかと、ドアの前から立ち去りたいという思いに埋め尽くされた。
(でも、ここで目を背けたらなにかが完全に途切れてしまう。そんな予感がするんだ。……それに、自分の過ちには責任を取らなきゃいけない……!)
ウィルはドアを二度ノックした後、部屋の中にいる人物に要件を伝えるべく、口を薄く開く。
「え……っと、ミサ、いる?」
――返事はない。部屋を間違えた、或いは完全に嫌われてしまったのかと思い、冷や汗が流れる。この場合、実際に部屋に入って確かめることが最も手っ取り早い。ただ相手が相手な分、同意を得ずに立ち入ることはさすがに躊躇われる。如何すべきかとおどおどしている最中、ドアを隔てて掠れた声が聞こえた。
「ここはウチの部屋じゃないし、別に入ってきても何も言わないけど?」
「……い、いや、そういうわけにも、いかないというか、なんか申し訳ないというか」
「変に気を使わなくてもいいよ。ニケなんかノックも無しにいきなり入ってきたけど、今はそんくらい馴れ馴れしい方が逆に丁度いい」
「……そ、そうなんですか? ……ごめん」
予想外にも程がある返答に、思わず辿々しい言葉を返すことしかできない。だが、ひとまず会話が成立したことには安堵した。
「そういうところが堅苦しいんだって。ウチら一応中等部からの付き合いだよ? ……ま、あんたらしいから良いか」
ドア越しに、何かが擦れるような音。囁くような声にも関わらずはっきりと聞き取れることから、彼女は今、ドアを背に腰を下ろしたのだろうと察する。ウィルは直立したまま、足元に目をやった。
「……この家の人たちが、朝食を用意してくれたんだ。一昨日の料理屋……いや、昨日は丸一日何も食べていないから、えっと、よかったらミサも一緒に食べない?」
「……そうなんだ。でも、ごめん。なんか今は気分じゃない、かな。身体はダルいし、ちょっと熱っぽいし……たぶん疲れが出てきたんだと思う。だから……」
「なら尚更、何か口に入れないと。そうだ、朝食の中に味噌汁があったんだ。食欲なくても水分くらいは取らないと」
自分の声色が熱を帯び始めていることに気付き、すかさず声を押し留める。彼女の容態が気掛かりなのは本心だ。だが、どうも言葉の突っ掛かりが取れず、踏み込むことに躊躇いを覚えてしまう。
一、二年ほど前に知り合った、やや波長の合う同級生。ウィルとミサの関係は、元よりその程度のものだった。家族でもなければ、友達と呼べるような間柄でさえない。知り合った当初は会話を弾ませることもあったが、高等部に進学した途端に彼女は変わってしまった。
口数が少なく、野に咲く花のように慎ましい文学少女だったミサだが、以前の彼女を知っている分、ウィルの受けた衝撃は凄まじいものだ。髪型が変わり、口調が変わり、ついでに一人称も変わっていた。閑散とした部屋で独り粛々と読書をしていた姿は影も形もなくなった代わりに、化粧をし、多くの友人たちと交友を深め、彼らと共に築く輪の中で眩しい笑顔を浮かべる姿がそこあった。髪型などは数ヶ月経った今では幾分か落ち着いたが、以前までの所謂"地味な娘"とは程遠い言動から窺える通り、春初、彼女は確かに自分を変えていたのだ。
とりわけ残念に思っただとか、以前の彼女に戻って欲しい云々といった負の感情を抱くことなど、あろう筈もない。何故ならばウィルの目に映る彼女の表情は、自分と会話している時と比較して明らかに豊かだったから。悲しむばかりか、彼女を知る者としては寧ろ喜ぶべきこと、とさえ感じていた。
その傍、自分という大して面白くもない人間と会話しているところを彼女の友人らに見られてしまっては、折角築き上げたであろう人間関係に支障をきたす恐れもある。経験上、ウィルはそれを過剰に恐れていた。故に進学以降ミサとは距離を取り、彼女との関係は殆ど終わりを迎えたのだ。
この地に飛ばされた直後は、事態が忙しなく移ろうあまり気を回す余裕はなかったが、漸く落ち着ける場所に立ったからか、或いはこの家の雰囲気が元の世界の光景を脳裏にチラつかせたのか、今になって再びそのことを意識してしまった。
彼女の返事は、時を置かずとも耳に届く。
「…………優しすぎるよ、ウィルは」
たった一言の呟き。以降、彼女が言葉を重ねる様子はなかった。
わからない。
人の本性など飽きるほど見破ってきたにも関わらず、ドアの向こうにいる少女の感情はまるで読むことができない。故に今のウィルは少女に掛ける言葉を見失い、苦悶の表情を浮かべているのだった。
彼女の様子が普段とは明らかに違うこと自体は察している。想像を絶する経験を強制されたのだから、その心がウィルの想像に及ばないのは、言わずもがな。それゆえ、如何なる言葉を掛ければ彼女の朗らかな姿を再び見ることができるのか、彼にはわからなかった。
赤髪の盗賊の姿が過ぎる。
(シャヴィさんならこんな状況でもきっと、いや、絶対にミサを連れ出していただろう。……ドアの前で相手の顔も見ることすら躊躇っている俺とは全然違う。…………俺は、何をしているんだ)
何も出来ない自分が情け無くて、やるせない。居た堪れなくなった彼は、惨めにもその場を離れる他なかった。
背後から徐々に離れ、消え行く足音。コツン、コツンと階段から響く微かな音が耳に刻まれる。
再び訪れた廊下の静寂を背で感じながら、少女は独り蹲るのであった。
「……あの子は、何と?」
「旅の疲れが出て、あまり食欲が無いって言ってた。体調も優れないみたいだし、今は暫くそっとしておくのが良い……のかも」
ギシギシと鳴る階段に目を向けるも、そこに少女の姿が無いことに気付いた"姉"は、憂鬱な面持ちでウィルの顔を見た。
「そう……ですか」
彼女は目線を下げ、力なく呟く。
ミサの身を案じる彼女の表情には、不思議と浅薄な偽りは感じられない。ウィルの瞳には確かにそのように映っていた。会話すらまともに交わしていない筈の、赤の他人を想うこと。その気持ちがどれほど尊く希少なものであるかは、生憎ウィルの想像には及ばない。これ以上、彼女ら姉妹の姿を疑念で燻んだ両目で見たくはないという気持ちがじわじわと込み上げてきた。
ウィルは彼女の声に対してこれといった反応をせず、そのまま玄関へと足を進める。
「ちょっと、どこ行くつもり? せっかくご飯作ってあげたんだけど」
「……仲間が、一人いないんだ。きっと近くにいる筈だから探してくる」
食事の席につき、左手に箸を持つ"妹"は、扉の取手に手をかけた少年を睨みつけた。
「ウィル、そのナズナちゃ......ナズナのことだけどさ、どうやら倒れていたのは僕たち三人だけだったみたいで……えっと、ここの人たちはそんな子見ていないらしくって……」
「…………仲間を一人でも見失うってのは、俺たちにあってはならない事なんだ。それに今のナズナの状態を思うと、独りにはさせておけない。他の人たちが無理なら、俺がナズナを見つける」
背後からニケが告げるも、ウィルはあくまで静かに、それを跳ね除けるかのように口を開いた。
扉を開け、家の外へと足を踏み出した少年に目を向ける幼馴染は、絶句していた。理由は単純で、普段の彼は他人からの親切を無碍にするような人間ではないからだ。姉妹の心情を傍らにて察するニケは、おどおどと目線を泳がす。
彼に嫌悪感を抱くことはない。今に至るまでの経緯から、彼が計り知れない程の責任を感じていることは明白であり、その真面目さ故に自身を責めていることも理解している。足を引っ張るだけの自分如きが彼の行動に異を唱える資格など無いと、ニケは玄関の扉から目を逸らしたのだ。
ナズナの身を案じているのはニケとて同じだ。しかし、現状を把握し切れていない以上迂闊に行動するのは得策ではなく、彼女を探すのは一先ず目の前にいる姉妹に話を伺ってからでも遅くはないことを、彼は冷静さを失ったウィルを横目に思い至った。
(……って、本来こんな感じで難しいことを考える役は君だろっ! まったく、暴走気味のアイツを見てると、なんでか知らんけど逆に落ち着いてくるんだよなぁ……とりま腹ごしらえをした後、ここは僕のトーク力でこの子たちをときめかせると同時に色々聞き出してみるか。ふふ、まさに一石二鳥。我ながら完璧な計画だね)
テーブルの上に置かれた茶碗を口元へと持ち上げ、右手の箸を使って一気にかき込む。
――最初の一口を入れた瞬間、彼は目を目開き、その色を変える。以降、彼は食事を終えるまで、右手を止めることはなかった。
突然この場を去ったウィルへの苛立ちを露わにしていた"妹"や、気を沈めて下を向いている"姉"でさえも、その清々しいまでの食いっぷりに目を奪われていた。自分の目の前にある朝食を軽々と平らげたニケは、間髪入れずウィルがいた席に配膳された食器へと手を伸ばしながら、声を上げる。
「うまい、美味すぎるっ!! これ食べる機会を逃しちゃうだなんて、アイツあとで絶対後悔しますよ!」
引き気味で苦笑いを浮かべる"妹"と、眉をひそめながらも柔らかく微笑みだす"姉"。微笑ましい様子で少年を見つめる"姉"は、ふと思い立ったようにテーブルに寄った。
妹は彼女を目で追い、少年は手と口を動かしつつも視線をそこに向ける。
少量の料理が乗った茶碗や皿をお盆に乗せる"姉"。彼女が手に取るそれらは、二階で蹲るミサのために用意されたものであるとニケは気付いた。
「私、あの子に届けてくるわ」
彼女はにこりと微笑みながら言い残し、朝食をのせたお盆を両手に二階へと上がっていった。
――青と緑の輝きが、視界いっぱいに広がる。
心地よく吹く微風、優しく包み込むような土の匂い。とうとうと響く波音に惹かれて右方を向けば、そこには一面に朝の光を照り返す巨大な大河。
先ほど彼女が言った通り、ここがメナス河の畔であることは間違いない、とウィルは確信した。先日とは異なり霧が晴れているため、今は対岸をはっきりと視認できる。自分たちの目指す場所はあの地の更に向こう側なのだと、彼は待ち受けるであろう険しい道のりに身を震わせた。
――はっとして、直ぐに気持ちを切り替える。現在最優先にすべき事柄はナズナの捜索であり、雄大な自然に思いを馳せている暇などないのだ。また気持ちを切り替えたついでに、視界の景色にどこか違和感のようなものを感じ取る。しかし、彼は自身に余計なことに考えを裂く余裕など無いと戒め、背後を向いて即座に駆け出した。
少し走れば、人の声が彼方此方で行き交う場所に出た。周囲には十にも満たない数の円形の住居群。
ナズナを探すに当たって、今の彼に欠けているのは情報だ。何より未だに現状を把握し切っていないため、このままでは未知なる地をしらみ潰しに探る他なかった。
一晩ウィルら三人の世話をした姉妹の元を飛び出したことは失策だったかもしれないが、話ならば他の住人にも聞けよう。そう考えたウィルは、適当な住人に尋ね始める。
「あの、すみません」
「……ん? なんだ、坊主?」
目の前を過ぎるのは、ガタイの良い男性。男は少年に話しかけられると、物珍しそうに彼を見た。
「むむ……坊主、見ねぇ顔だな。そうか、てことはつまり、お前が集落の近くで倒れてたっつー子供か!」
「……た、多分そうなります。えっと、その事でお聞きしたいのですが、僕たちが発見された時の状況を教えてくれませんか? ……その、僕たち何も覚えていなくて」
「状況……っつーと、お前らが何処で倒れてたとか、誰が助けたとかか? ……わりぃが、昨日は仲間と飲んでてよ、お前らの事はチラッとしか聞いてねーのさ。役に立てそうになくてすまんな」
男はその厳つい外見に反し、気さくな態度で言葉を返す。申し訳なさそうな困り顔でウィルを見ているが、当のウィルにとって、男との会話は現状解明のための一つの手掛かりとなった。
どのようにして自分たちがこの集落に足を踏み入れたのか。その解は、"集落の近くで倒れていた"ところを誰かに運ばれたというものだ。彼にとっては概ね予想通りではあったが、ここは未知なる異世界であり、予想はあくまで予想に過ぎない。絶対的な根拠を見つけぬ限り、仮定に仮定を重ねることは避けるべきである。故に、目の前の男――第一村人との会話は実に有意義なものであった。
役に立てそうもないという言葉に対し、ウィルは「そんなことないですよ」と首を横に振る。
「……えっと、では金色の髪の女の子が倒れていただとか、見かけた、などの話に聞き覚えはありますか?」
「金髪の? そんな明るい髪色の子がいたら間違ぇなく集落中の噂になる筈だが……うーん、やっぱり記憶にねーな。……悪い、俺はこう見えて仕事中だから、まだ何か知りてぇことがあるなら他の奴にでも聞いてくれ。ほんじゃあな!」
男は申し訳無さそうに手の平を合わせた後、そそくさとどこかへ立ち去ってしまった。ウィルはその背中に向かって一言礼を告げ、即座に情報を収集するべく辺りを見回す。
(思ってたより親しげに接してくれたな。……この調子で少しずつ、手掛かりを集めていこう)
外から訪れた子供が突然訳のわからぬことを尋ねたところで、適当にあしらわれるのが落ちだと思っていたウィルだが、想定とは真逆の反応を受け少々困惑している。更に、先の男性の声や仕草からはどこか暖かいものを感じていた。
(この状況が魔獣の罠。ましてや、ここの人たちの正体が魔獣だなんて。……ありえないな。今ではその可能性を疑ってしまった自分が信じられないくらいだ)
今更ながら、姉妹の話を碌に聞かずに飛び出した己の行動に嫌悪感を募らせる。突然の出来事に平常心が崩れていたとはいえ、仮にも自分たちの恩人であろう者達に対する態度ではなかっただろう。姉妹やニケ達の下から離れ、体感二十分ほどが経過した現在、心境は手のひらを返したように変化していることを自覚し、そんな自分に呆れ、少し不快な気持ちになった。
分からないことが多すぎる。今の彼が抱える本音は、その一言に尽きる。自分たちを襲った何か、ミサの心境、ナズナの行方。また、対岸に渡る手段についても考えねばならない。それらの要素が一挙に押し寄せ、彼の心のバランスは崩れ始めていた。自分が信じられないくらいだ……と自己嫌悪に陥ったが、それで集落の住人たちへの信頼が絶対的になった訳でもない。何を信じれば良いのか、何に寄り添えば良いのか、どのように行動すれば良いのかが、出口の見当たらない洞窟の中を彷徨うかの如く見つからないのだ。
(…………何をすれば良いのか、か。見えないこれからを考えるより、とにかく出来ることをやる。今の自分にはそれしか無いのかもな)
深く息を吸い、地面に向けてゆっくりと吐く。ウィルは前を向き、改めて情報収集に勤しむことを決意した。
「そうねぇ、チラッと小耳に挟んだだけだから、詳しいことは分からないわねぇ」
「そ、そうですか……」
通りすがりの人々に尋ねること、小一時間ほどが経過した。が、状況解明の核心に迫るような情報は未だ得られていない。そもそも、ウィルを含む三人が運ばれる場面を目にした人物が少なく、"外れの姉妹の家に旅人らが保護されている"といった話が風の噂として広まっているに過ぎなかった。現にウィルが今尋ねている婦人も、彼の姿を目にした際に驚きの反応を見せていた。
「でも、ここだけの話だけどね。あんた達を運んできたっていう人物には少し心当たりがあるわよ」
「……? え、それってあの姉妹じゃないんですか?」
「何言ってるの。あのか弱い子たちが人を三人も運べると思う?」
「……そ、それは確かにそう、かもしれませんが」
彼女の言うことはもっともだが、魔力やら魔法を使えば、人を数人運ぶ程度誰でも容易く出来るのではないか、と思わずにはいられない。少なくともウィルはそう解釈しており、運んだ人物のことなど気にも留めていなかった。だが、情報は一つでも多いに越した事はなく、一見関連性の無いような話が手掛かりに繋がっている可能性もある。そのため困り顔を浮かべつつも、彼は彼女の話に真っ直ぐ耳を傾けた。
「……ここにやって来た旅人は、実はあなた達だけじゃないの。此処らに生息するっていう恐ろしい魔獣をやっつけに、都からやって来たとかいう旅の剣士。少し前から滞在してるんだけど、あなた達を助けてここに運んだのは、多分あの人じゃないかしら」




