28話 流れゆく灯籠
降り注ぐ喧騒の中を、脇目も振らずに駆け抜ける。向かう先は、森の中の隠れ家。彼らはそこにいち早く辿り着き、男の帰還を待たねばなない。
その男は自ら身体を張り、仲間を逃がす為の隙を作った。彼らが必死に走っている今も、男はあのおぞましい圧力を放っていた騎士と命懸けで対峙しているに違いない。彼が残した時間と意志を一秒足りとも無駄にしてはならない故、三人は必死に手足を動かすのだ。
「......しつけぇ連中だ。いつまで追って来やがる!?」
「この追っ手の数です。恐らくお頭への対応は例の騎士を中心とした少数部隊に任せ、その他大勢で我々を捕らえるといった算段でしょう」
人波溢れる大通りを駆ける彼らの周囲には、数多くの騎士が目を光らせている。迂闊に手を出せば民衆が害を被りかねないので、騎士団の現状は脱走者の監視という形に留まっているのであった。
しかし、それは三人が大通りにいる間のみ。彼らが隠れ家に辿り着くには城壁の外に広がる平野に足を踏み入れる必要があるため、民衆による盾はいずれ剥がされてしまう。よって捕らえるのはそれ以降でも遅くはあるまい、というのが騎士団全体に下された判断であった。
頭脳明晰なスノウはそれを即座に見抜いた。このまま突っ走っていても、正門をくぐり抜けた瞬間待ち伏せに遭い包囲されるのは自明。民衆に紛れて建物などに身を隠すにしても国中の騎士が早々に捜索体制に移行するのは確実で、やはり発見されるのは時間の問題である。
彼は、頬に汗を伝わせながら残された手段を二人に向けて提唱する。
「これから城壁を跳び越えます。ガトーさん、彼女をしっかりと抱えるように」
「......なるほどな、それにお前の考えることだ。ただ跳び越えるだけじゃなく、正門付近で煙幕を焚いて騎士を混乱させるんだろ? それなら撒ける可能性は充分にあるわな」
「話が早くて助かります。陣を展開させますので、私が合図を出したら跳んで下さい」
スノウが話し終えると、ガトーはナズナの手を引き始める。そして、二人の男は更に速度を上昇させた。
「あわわ、ちょっ、速いです! もうちょっとゆっくりぃぃぃぃい!?」
疾走する二人に付いていけず半ば引きずられるような状態となった彼女は、前方から後方へと勢いよく流れゆく風に髪を靡かせながら、悲鳴にも似た声を上げた。
スノウは彼女の叫びに耳を傾けることはなく、意識を右手へと集中させる。そして、張り詰めた表情で声を発する。
「正門は目の前です。そろそろ合図しますので、準備して下さい。では、三......二......一......今です」
言葉の終わり間際、彼の右手には小型の魔法陣が展開された。
直後、ボンっといった低音と共に、濃厚な煙幕が術者を中心に広がる。正門付近に待機していた騎士達は驚き、微かな戸惑いの声が周囲から沸き出た。
ただ、煙幕等による視界遮断は騎士団にとっては想定の範囲内であったようで、僅かに生じた混乱は瞬く間に消え去り、数名の騎士による魔力放射により煙は跡形もなくかき消された。彼らは見失った三人を捜索すべく、城壁外に待機している者にも状況を伝え、総力を挙げて気配を探り始める。
「うっ............これは!?」
ーー突然、全身から力が吸われたように床に倒れ込む騎士。初めは周囲の騎士もそれに対して気を留めず、脱走した盗賊らの捜索に力を注いでいた。しかし、それは連鎖的に巻き起こる。
「な、なんだ!?」
「力がっ............抜けていく!」
次から次へと地に伏す騎士達。たとえ本職の騎士であってもその流れには逆らえず、抵抗虚しく倒れ込んでしまう。
「やられた。この煙............毒か」
一人の騎士か呟いた。
スノウが逃走の際に撒き散らした、魔法製の煙幕。"蝮霜雪"と呼ばれるそれは周囲の目を眩ませると同時に、吸った者に対して神経麻痺を引き起こす効果を持っていたのだ。毒のまわりは早く、シャヴィ程の強者でもなければ一分程度で症状が現れ始める。
ガトーらが走る速度を急激に上昇させたのは、ナズナに煙を吸わせない為に他ならない。屈強な盗賊である二人は毒への耐性を持っている故、多少煙を吸ったとしても動きが少々鈍る程度で済む。しかしか弱い彼女にそれを吸わせたならば、最悪の場合重症を負わせてしまう可能性があるのだ。
城壁を越え、平野へと身体を降ろす。ガトーは、一歩遅れてやってきた相方に向かって声をかける
「身体、大丈夫か?」
「勿論。私は自分の首を絞めるような間抜けではありませんよ。それよりナズナさん、どこか異常はありませんか?」
「私は大じょ............あ、そういえば、さっきからお腹がぐうぐう鳴ってますねぇ」
彼女に大した異常は見られず、ほっと胸を撫で下ろすスノウ。
「それは良かった。食糧問題はアジトに着いてから考えましょう。もしかしたら、リッキー達が既に動いているかも知れませんし......」
そう告げると、彼は城壁に背を向けてローグリン公国を早々と後にする......筈であった。
三人は、すぐさま異常事態に気付いた。
夜空から降り注ぐ妖しげな薔薇色の光。反射的に空を見上げた彼らは、その光景に思わず目を見開いた。真っ黒なキャンパスに描かれた不気味な模様。平野に降りた彼らは、城壁に阻まれてその全容を視ることは叶わない。しかし、"それがどういったモノなのか"ということは瞬時に理解できた。
「これは......まさか魔法陣か? 国の上空を覆うほどのサイズとなりゃ相当な規模の魔法なんだろうが......一体誰がこんなことを」
「............わかりません。この国の戦力の大半は徴兵された騎士であり、術師の部隊を隠し持っているなどとはとんと耳にしない話ですからね。さすがのお頭でもここまでの陣を展開することは出来ませんし。ただ、現状我々がすべき事は一つです。いち早くここから離れましょう」
スノウが自らの感情を表面に出すことは、稀である。しかし、国の上空を覆う魔法陣にただならぬ予感を感じ取った彼の言葉は、震えていた。無論、彼の真の人格が臆病なものであるから......といった理由では断じてない。三人の中では最も魔法に精通している彼であるからこそ、その場を取り巻く事態の異質さを認識できるのだ。
ガトーはそれを充分に理解している。故に彼の言葉を耳にするなり、即座に頷いて肯定の意を示した。
ーーだが、次なる異変が逃走を決意した三人を襲う。
「............っ!?」
空に浮かぶ模様から目を離そうとしたスノウは、咄嗟に城壁を見る。
一本の矢が、彼の頬を掠めたのだ。
「ひうっ!?」
直後、背後から耳を打つ短い悲鳴。スノウは咄嗟にその方向を振り向く。
彼の目に映ったのは、ガトーに放り投げられて尻もちをついたナズナだ。突然の出来事に激しく動揺しているのか、両目を丸く見開いておどおどしている。そして彼女の目線の先には、何者かが振り下ろした凶刃を、魔力の込められた両手で受け止めているガトーがいた。
スノウは冷静に事態を受け止め、周囲に警戒の目を向けつつ彼への援護を試みる。
左手を、鍔迫り合いを繰り広げるガトーらの方向に向けてかざす。ガトーと対峙している者はそれに気付く様子も無く、振り下ろした剣を握る力を緩めようとはしない。
スノウは隙だらけの対象に狙いを澄ませ、己の魔力を解き放った。
「......!」
ーー直後、対象の頭上に展開される、緑色の魔法陣。そこから放たれるは、眩い閃光と共に敵を穿つ雷撃。同時に鼓膜を破らんとするかのような大音量が鳴り響くものの、ガトーはそれを全く意に介さず、相方が発動した魔法によって勢いを落とした敵の剣撃を跳ね除けた。
「............なんちゅー馬鹿力だ。それにこいつ等、いつの間に回り込んで来やがった!?」
相手の体勢が崩れかけた隙を突き、軽快な動作で相手の剣を弾き飛ばしたガトーは、汗を額に浮かべながら呟く。彼と対峙した何者かの正体は、ローグリン公国の騎士であった。
夜闇が周囲を覆う現状、本職の騎士のような手練れが自らの気配を抑え込めば、遮蔽物が無くともある程度身を隠すことは可能である。おおよそ三人の脱走経路を先読みして待ち伏せていたのであろうが、ガトーとスノウは盗賊団の幹部。偵察隊長であるリッキー程でないにしろ、索敵や隠密行動の技術に関してはある程度精通している。であれば、重装備を纏い騎士道を掲げる騎士が、彼らの鋭い嗅覚を完璧に誤魔化すことなど到底受け入れ難い話であった。城壁方面からの謎の射撃を含む理解不能な状況を前に、スノウは思わず爪を噛む。
「む......? おい、あれ見てみろ」
放心しているかのように立ち尽くす彼の肩を、ガトーは軽く二度突いた。そして、ある一点に向けて指を差す。彼はすぐさまガトーに目をやると、言われた通りの方向に目を向ける。
「......これは............」
数えきれぬほどの殺気が、四方から自分を突き刺すーーそのような悪寒を感じ取ったのも束の間。スノウは視界に映ったそれを認識するなり、強烈な目眩に襲われた。
それは、薄い影のような存在であった。枝のように細い胴体に、植物で編まれたような濃い緑色の外套を羽織っている。更には、獣の頭蓋骨を被ったような頭部。人とも、或いは魔獣とも形容し難い異形は飛び掛かってくるでもなく、何もせずにただ三人を見つめるのみ。だが、その様子が返って気味の悪さを引き立たせていた。
(なんだ、あれは......? 魔素を全く感じない割に妙な圧を放っている。怨霊、霊魂の類? 若しくは何らかの幻覚か............っ!?)
ふと先程触れた殺気の色が深まるのを感じ取り、スノウは異形から目を逸らして周囲を見回した。
「なっ......」
殺気の主が複数存在していることは気配感知によって大方窺い知れたものの、その正体に関しては知る由もなかったのだ。だがその者達の素顔を直接目にした彼は、突然何かが喉に詰まったかのように、言葉を失った。
「............ラドン、ゲッソク、ダラン..................リッキー......?」
ガトーの掠れた声色が、平野に降りし闇へと虚しく消えてゆく。
三人を囲い、彼らに対して得物の切っ先を向ける者達。その集団は、盗賊団幹部である二人の良く知る人物たちで構成されていた。
自分達を慕う部下。頭領の元で日々を過ごした仲間。無念にも捕らえられ、処罰を受けてしまった彼らが、目の前で自分達を凝視している。
首を切られた者達だけではない。例の部屋では姿を確認することの出来なかった仲間、即ち襲撃された当時はアジトの外にいた筈のリッキーやその他の盗賊も同様に、この場で三人を囲っているのだ。
(どうやら私は、本当に幻覚を見ているようだ。ガーリックとジャクソンの姿が見当たらないのが不可解ではあるが......それにしても、本当にタチの悪い幻だ)
冷たいものが背中を伝う。甲高い耳鳴りが、脳内をぐるぐると掻き乱す。吐き気を催すような怪奇を前にしたスノウは両手で頭を抑え、呻き声を漏らした。
ーーその場を取り巻く状況が一変したのは、それから僅か十数秒後であった。張り詰めた空気の中、均衡を守るように静止していた盗賊の集団は、異形が亜空間から妖しげな布を取り出したと同時に三人を目掛けて飛び掛かった。
「ぐっ......ぬおおぉ!!」
襲い来る盗賊達を、咄嗟に取り出した自身の巨大な得物で追い払おうとするガトー。
彼の武器は大槌。かなりの重量を持つ打撃用のそれを攻撃対象に向けて振り下ろそうものならば、彼の腕力も相まって圧倒的な威力が生み出されることとなる。
だが現在の彼の心境は、未だ状況の変化に追い付けていない。その為迫り来る者達を薙ぎ払おうと試みるも、様々な思いが交錯して充分な威力を発揮することが出来なかった。
同じ屋根の下生活し、苦楽を共にした仲間達。彼らとの生活は苦しく、困窮に耐えつつ砂利を舐めるような日々が続いた。だが、彼が水夫として働いていた時の、退屈さを紛らすよう横たわって空を見上げるような時間など、一度たりとも存在し得なかったのだ。その記憶全てが、今まさに彼の判断を狂わせている元凶である。
彼らは、既に死んだ。故に現在自分達に襲い掛からんとしている集団が自分の知る仲間達でないことは、頭では承知している。そうであっても、姿形が仲間達に瓜二つである彼らを傷つけることは精神的にひどく耐え難いものであった。
盗賊の一人が、鋭い輝きを放つ短剣を片手に飛び掛かる。その者の虚ろな瞳に反射するは、大槌という巨大な武器を持ちながらも、それを振るう様子を一切見せない男の姿。
逞しき男は、迫る盗賊を視認するなり一歩身を引き、防衛に専念すべく構えた。
「......!!」
しかし盗賊の動きは、判断を鈍らせた男のそれを上回る。一撃目は躱されたものの直ぐに体制を立て直すと、胸の前で逆手持ちにした短剣の刃先を男に向けるなり、そのまま真っ直ぐに突進した。
容赦なく突きつけられるプレッシャーに対し、僅かに怯んでしまったガトー。生じてしまった隙を埋めるべく即座に構え直そうとするも、刃を受け止める為の拳が視認できた時には既に、相手の殺意は自分の腹の中心を捉えていた。
至近距離まで接近した盗賊の表情が、はっきりと見える。躊躇いなく短剣を握りしめる盗賊の瞳は、空虚の色に染まっていた。
ーー痛みは、然程感じなかった。
彼の鍛え抜かれた身体が、鉄のように頑丈だったからではない。現に魔力の込もった短剣は彼の腹を貫き、大量の血液が刃を伝って体外に流れ出んとしている。
ガトーは、目の前の盗賊を見つめる。その瞳に映るのは殺意の塊で自分の身体を貫いた"幻"ではなく、共に悪事を働いた、かつての姿。
与えられた痛みを、透明な感情が上回ったのだ。
彼の様子をひっそりと窺っていた盗賊達は、彼が腹に傷を負った瞬間、ここぞとばかりに飛び掛かった。ガトーはそれに気付いたが、何故かそれらに対応する様子を見せない。身体を思うように動かせない彼はそのまま目を閉じ、最後の時が訪れるのを待つ。
(悪りぃ、お頭、ナズナちゃん。俺はこいつらとは、戦えねぇ)
彼が覚悟を決めた時、背後から大きな魔素が動く気配を感じた。
不思議に思ったのも束の間。数秒後、強烈な熱を纏った巨大な魔素エネルギーが背中に勢いよく接触し......ガトーは身体ごと前方に吹っ飛ばされた。
予想外の痛みと衝撃に目を見開き、咄嗟に受け身の体勢を取った彼は、何が起こったのかと周囲を見回す。
左右には、彼を目掛けて飛び掛かった数人の盗賊が、身体から炎を出しながら倒れている。そして、先程謎のエネルギーが放たれた方向には......
「......お前、何してんだ?」
両腕を前に伸ばし、手の平を広げている金髪の少女が居た。彼女は顔を引きつらせながら、呟く。
「ま、巻き込んでしまいました。本当に、ごめんなさいです」
彼はその言葉を聞いた瞬間、彼女が取った行動を理解する。
詰まるところ彼の目に映る少女は、目の前の盗賊を助けようとしたのだ。おおかた大きな火球を幾つか作り出し、彼を目掛けて襲い掛かる集団に向けて放つつもりであったのだろう。結局彼女にはそれを行うだけの知識が無く、巨大な火球を一つだけ作り出し、それを放つことで彼をも巻き込んでしまう始末となったのだ。
しかし、そのお陰で目が覚めた。
ガトーら二人の盗賊より、戦闘技術も経験も少ない少女。庇護対象としか見ていなかった彼女が、自分を救おうと勇気を振り絞ったのである。
ガトーは、目線を地面に向けた。
受け身を取ったことで、右の手の平は地面に触れている。土や草を巻き込むように拳を握りしめると、それを支点に立ち上がった。
右手を開いて、ズボンを軽く叩くように汚れを払い、ガトーは少女に向かって歩み始めた。
そして、声をかける。
「悪りぃな。まさかお前に喝を入れられるとは思っても......」
「え? あわわ......す、すみません! 背中燃えてますね......! 今すぐに消します!!」
直後、ガトーの頭上に現れる緑色の魔法陣。
コンマ数秒後。彼に静止の言葉を発する隙を与えず、魔法陣から大量の水が真下に向かって流れ出した。
「..................」
全身がびしょ濡れになったガトーは、先程自分を助け出した筈の少女を、握り拳を小刻みに震わせながらえも言えぬような表情で見下ろす。
「......」
彼はすぐさま怒鳴りつけようとしたものの、今はそのような気分にはなれなかった。彼女はある意味では命の恩人であり、その行動に悪意などかけらも感じなかったためだ。彼は拳の力を緩めると、その手で彼女の肩にポンポンと軽く触れた。
彼は先程吹っ飛んだ際に手放してしまった大槌を拾い上げると、再び盗賊の集団と戦うべく、彼らを睨みつけるーーはずであった。
「............我ながら、甚だ決まりが悪いものです。この体たらくでは、お互いお頭に顔向けできませんね」
彼が目にしたのは、ダガーを片手に二人の元へと歩み寄るスノウと、いつの間にか地に伏している盗賊集団。乱れた前髪をかき上げた後、普段と変わらぬ飄々とした態度で眼鏡の位置を直す彼は、さながら猟奇的に獲物を引き裂く狩人だった。そんな彼に対し、ガトーは口元を緩ませる。
「お前、完全に吹っ切れたな。流石は元暗殺者だぜ」
「......ダガーであれらを斬った瞬間、彼らの身体からは血液が飛び散る様子が見られず、代わりに黒い靄のようなものが空気中に散らばるだけでした。よって彼らが本当に盗賊らの姿形を模しただけの存在であると再認識でき、私は遠慮なく仕留めることが出来たんですよ」
その後数秒の間を置いて、スノウは「まぁ、行動のきっかけを与えてくれたのはナズナさんでしたが」と小声で付け足した。
大鎚を背負ったガトーはニヤリと笑い、異形の方向に目をやる。
「さて、そろそろ大元を倒しに行くか」
「............その前にもう一段、段差を踏まねばならないようですがね」
再び周囲に目を向けたスノウは、魔法陣を作るべく魔力の操作を開始した。
辺りを取り囲むは、ローグリン公国の騎士団。スノウが警戒していた弓矢による狙撃は彼らによるものであり、ガトーらが偽りの盗賊集団に気を取られている間に城壁からこっそりと近づき、身を潜めつつ陣形を整えていたのだ。
しかし三人はこの状況に怖じ恐れるどころか、敵集団に向かって面と睨み返す。
「ククク、いいぜ。今の俺は気分がスッキリしている。全員まとめて、どっからでもかかってこいやぁぁぁぁ!」
「わ、私も援護させていただきます!」
ガトーの闘気に満ちた雄叫び。そして再び立ち上がった彼らの影響を受けたのか、静かな闘志を燃やすナズナ。
今まさに、逃げるばかりであった三人の大暴れが幕を開ける。




