プロローグ
ざあざあと雨が降りしきる。
吹き荒れる風によって木々は激しくその身を揺らし、猛烈な雨音と相まって、周囲を覆う夜の闇の不気味さをより一層際立たせている。
その暗闇の中、二人の青年が対峙していた。
一方は金髪の青年。鍛え抜かれたその肉体は日々の鍛錬の賜物であり、彼が一流の戦士である事を明白に示している。
一方は銀髪の青年。灰色のロングコートに覆われた色白い肌に、華奢な身体。美しく整った女性的な顔はどこか冷たく、寂しげな雰囲気を連想させる。
「どうしてだ......?」
金髪の青年が口を開いた。その瞳は燃えるような橙色で、眼前の青年を突き刺すように凝視している。
「何故こんな事をした? 答えろよ! ーーッ!!」
刹那、轟! という凄まじい重低音が遥か上空から鳴り響き、眩い光が辺りを照らした。
ーーだが、身体を震えあがらせるような強烈な爆音も、二人が放つ気迫の前では赤子の泣き声のようなもの。両者微動だにせず、鋭い視線を交わし合う。
不意に、銀髪の青年がニヤリと口元を歪ませた。
「悪いが、お前が友であってもそれを話すことはできない。それにーー」
銀髪の青年は腰に吊るした鞘から剣を抜き、その切っ先を眼前の青年に向ける。
「今ここで、お前の未来は断ち切られる。教えたところで何も変わりはしないさ」
銀髪の青年は、ただ冷酷に言葉を告げた。
しかし金髪の青年の気迫は減衰の色を見せず、それどころか彼の瞳の橙色は、より激しく燃え盛る。
「......わかった。じゃあオレはお前を討ち、全てを暴いてーー」
金髪の青年も鞘から剣を抜き、その切っ先を敵に向ける。
「彼女を取り戻す!」
剣を構える両者。深く、静かな呼吸を一つ。もはや雨音や木々の揺れる音などは、時が止まったかのように聞こえない。脈打つ心臓の鼓動だけが全身にこだまする。
ーー両者が地を蹴ったのはほぼ同時であった。時が流れ、静寂が破れる。そのコンマ数秒後、再び大音量と共に眩い光が辺り一面を包み込んだ。