とある末弟の一生
私は自分の身を切りながら生きてきた。
巨大な生き物が来るたびにその身を切り取られて生きてきた。
今日を生き延びることができるかと丸まった状態で生きてきた。
何かが来るたびに自分の命はここまでかと感じながら生きてきた。
日に日に痩せゆく身体を丸めながら生きてきた。
生まれてからしばらくの私は一人ではなかった。
何人もの兄弟と一つの家で暮らしていた。
狭いながらも身を寄せ合って暮らしていた。
兄弟で仲良く丸まって暮らしていた。
ある日のことだ。
ある巨大な生き物が家ごと私たち兄弟を連れ去ったのだ。私たちは恐怖を覚え、怯えていた。
一番上の兄が言った。どこへ連れ去られようとも私たち兄弟が揃っている限り大丈夫だ。その言葉にひどく安心感を感じたことを覚えている。
だが兄弟が揃って過ごせたのはそのすぐ後までだった。
私たちの家よりも大きな場所に閉じ込められたのだ。家の屋根が破られ一番上の兄が連れて行かれた。
心配するな。すぐに戻る。その兄の声を聞いたのはそれが最後だった。
それから大体一週間ほどがたった頃。次の兄が連れて行かれた。その時私たちは理解した。連れて行かれた兄たちはもう戻っては来ないのだということを。
それからは私たち皆恐怖に怯えながら暮らしていた。大体一週間に一人のペースで兄が連れ去られて行く。初めの二人を含めると3ヶ月もする頃には私たち兄弟は誰も残っていない。
一人。また一人。気づけば私たち兄弟の家には私しか残されていなかった。私もついに連れて行かれる。
真の恐怖はそこからだった。
その部屋に誰かが来るたびに私の身体は巻かれ、切られていった。兄たちもこんな恐怖を味わっていたのか。いずれ来る終わりを覚悟しながらそう思った。
部屋に入れられてから後数日で1ヶ月が経つ頃、私は自分の命が今日までであることを察した。その予想は的中した。
部屋に入ってきた人は私の最後の身体を巻き取りちぎると自分のお尻を拭き、水の中に流した。
あぁ、やっと終わった。やっと兄たちのところへ行ける。
その感情を最後に私、トイレットペーパーの一生は幕を閉じた。
一度読めばわかります。二度読むと楽しい。




