第91話:太陽の化身
side:???
病院の地下二階。そこに異様な空気を放っていた鉄製のドア…その奥にいるであろう大物に緊張が走る。
「…行くぞ」
「ったりめぇだ」
ドアを開けば徐々に中の様子が見え、一つのダイニングテーブルと計二つの木製の椅子が対面する形で置かれていた。内装は素朴だが、中々と広い。
(まだ誰もいない、少し早すぎたか?)
そう思ったその時、俺から見て右方向にあるステンレス製の扉から誰かが現れた。少し青みがかった薄いねずみ色の様な髪に鋭く、そして美しいまでの銀眼。程よく鍛え抜かれたれた青年だった。
だが、何処か傲慢に思うその姿に冷や汗をかく。俺たちには目すら向けずに席に着いて、やっとこっちに視線を移したと思ったら…。
「なんだ貴様ら、早く座れ」
テーブルに肘を着いて不機嫌そうな声色で吐き捨てた。何だこのクソガキ…すげぇ態度がでけぇな。とは思いつつも俺は従ってその席に座り菊池は俺の隣まで車椅子で来る。
「さて、本来ならこんな面倒この上ないものをこの俺がやる筈が無かったが…そうはいかんくってな」
段々と、微かに目の前の男から気が漏れる。身も毛もよだつ程の殺気に加え、あまりにも強大な気が俺の意識を狂わそうとしてくる。あの態度はクソだが、流石十二神星の一柱…傲岸不遜の王子───矢銀陽だ。格がちげぇ。
「俺は気が短い、尋問(事情聴取)始めるぞ。嘘偽りなく進言しろ」
もしこいつがオリュンポスじゃなければ今頃ぶん殴っていたところだった。…とは言え一応アレでも政府から直々に依頼されて来ている分何も出来ないって言うのもあるが…。
「わかった────」
色々と思う所はあるも、イライラを抑えながら俺は話し出した。
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それから俺たちは一時間以上にも及ぶ事情聴取を終え、取り調べ室的な部屋から出ていく。
「協力感謝する」
部屋を出ようとした俺たちの背後で取り調べ中とは打って変わった優しい声で謝意を示した。
「当然のことをしただけだ」
「そうか。心身疲労中に有難いことだ、用は済んだ、貴様らはもう戻れ」
「言われんでも戻る」と去り際に言ってなんとか終えたことに安堵した。あの傲慢王子と言えど流石に人の心を持っていたようだ。最後の言葉には正直驚いたからな、噂では感謝という言葉すらない人の形をした不敬罪って言われていたからな。
不敬罪はお前らだろ。相手は法が効かない神みたいな奴らだぞ…と思ったのは内緒だが。
「リーダー。言わなくて良かったのか?」
「あぁ…少し、きな臭い事件だからな。まだ言わない方がいい」
考えれば考える程疑問が尽きない。それが今回の出来事だ。禁忌の実が現れた直後、上級大会の中継が全世界規模で途絶えたと言っていた。なら何故もっと早く誰も来なかった?なぜ誰もこの結界を抜けて来れなかった?あの結界は閉じ込めた相手を外に出さないだけの結界。
外から入る分にはなんら問題のないものだった。なら、何故来なかったのか?警戒していた?それとも…この世界そのものが禁忌の実に毒されていた?…わからん。本当にわからん。どんな些細なことにでも疑ってしまう。疑心暗鬼が肥大化して何も信じれなくなりそうだ。
…だからこそ信じれる者だけにしか言わん。どこに目が潜んでいるのかもわからん。あらゆるリスクを抑え最小限のリスクだけでレオンを捜す。
「菊池、俺らは俺らなりでやるぞ。アイツらと協力する中で俺達も独自にやる」
「良いのか?」
「今回ばかりは仕方がねぇ…」
菊池の心配そうな目と俺の目が一瞬交差するが、すぐに逸らして前を向く。多分今の俺は不安定になっている、だからこそ心配しているんだろう。だが、そんな心配は杞憂で終わらせてやるよ。
「心配すんな、俺は蒼牙のリーダー────エルスフィールだぞ」




