第85話:ここから始まる戦い
side:セリカ
まだ、結界が解かれる数分前…。ジンが結界維持装置を解析して、私が周りに浮いている防御装置を精密な魔力操作で狂わせている時だった。
「やぁ、セリカ。大丈夫?」
私の後ろに急に気配を感じたと思ったら、同じ団員の隼也だった。後ろを振り返らず、前を向いたまま尋ねる。
「あれ?隼也じゃんどうしたの?上は?」
「大丈夫。これは僕の分身だから」
え、まさかとは思うけど…。
「気づかれてない?周りに」
「力を使ってるから誰も気付いてない」
杞憂に終わった事で一安心したが、すぐにここに居る理由を問いただした。
「そう。それでどうしたの?」
少しの間を開けて喋りだした。
「実は、蒼牙のリーダーに頼まれてね。この結界を解くの早めてほしいんだって」
それを聞いた瞬間私の中で警報が鳴り、隼也を警戒した。私が居ることを知ってるのは隼也とだんちょーだけなのに…。
「なんで知ってるの…?」
「僕が教えた。害はないから安心して」
「まぁ、守ってくれるならいいけど…何か策でもあるの?」
「うん。だから僕が来たんだ、力を貸すよ」
自信満々な声で頷く。隼也が力を貸してくれるならこんな面倒さい方法でやらなくても済む。だけど、一つ問題があるとすれば…。
「…隼也。使える?」
今の隼也らは疲弊しきっているはず。もし、今も無理をしているならここは頼むべきではない。とは思ったが杞憂に終わった。
「任せて。僕にとったら人に使うより簡単だから───」
『偽りの真実』
声を発した瞬間に、周りに浮遊している防御装置が突然、力を失ったかのように地面に墜落した。しかも、維持装置にも何かをしたらしい…。
「これで周りの装置は機能しなくなったよ。後は、任せた、僕はもう行く」
そう言うと、踵を返して出口へと向かう。
「ありがとね。隼也」
「うん」
「ありがとよ!これで俺も本気を出せる!」
あの防御装置は別名、自律型自動防衛装置。あの結界維持装置を守護するゴーレムのような役割と魔道具の力を強化する役割を持ってる。本来なら簡単に壊すことが出来るけど、あの魔道具は普通じゃなかった。だから壊す事よりも狂わすことを選んだ。時間は掛かるけど私のコントロール技術なら造作もない。と思ってたけど…。
(隼也のおかげで何とか早めに解除出来るね)
深呼吸をして私も解析しているジンの隣に行き、内部構造を把握する為とどんなカラクリがあるか調べる為に自分の魔力を魔道具の中に侵入させた。それからすぐに私はジンに顔を向けた。
「ジン!二層目の所に抜け穴がある!ここから先に解析して!」
鑑定や解析すらも欺く精度を持った隠蔽で隠されていた抜け穴があった。私の魔力浸透が無ければ気付かない程高度な隠蔽だなんて…。やはりあの禁断の実とか言うやつは相当な連中らしい。
「なに!?そんなもんあったのか!?わかった!」
私の魔力から何か波紋のようなものが伝わる。これはジンの解析の波長が私の魔力に伝わっている証だ。
「マジかよ…ホントにある。ここを探れば…一気に行くぞ!!」
ジンが抜け穴を解析する事二分…。大の字になって倒れ込み、叫んだ。
「終わったぞ!!プログラムを改竄した、後は破壊のみだ!!」
魔導具の中にある私の魔力がジンの声に反応し、徐々に暴走しだす。すると、魔道具に亀裂が入り過剰な魔力圧に耐えきれず砕け散った。
「これで任務完了」
「おつかれ、ジン」
「あぁ、セリカもな」
私たちは拳を軽くぶつけて互いに労った。後はだんちょーたちが頑張ってくれれば全て終わる。
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side:隼也
「け…結界が…!?」
「馬鹿な…アレは簡単に壊せるはずが…」
二人の困惑した表情が僕の心に刺さる。その表情がたまらなく好きだ。とてつもなく唆る。
…のだがこれ以上はやめよ。流石にキモイ。
「絶望にひれ伏せながら聞くといいよ。虚無の世界は蓄積された負の感情をダメージとして相手に返すカウンター技でね。蒼牙の皆が受けた精神攻撃を物理攻撃に変換して自分の元に還元されたんだよ。余っ程酷いことしたらしいねぇ?」
より分かりやすく言わんでも…。と智ひ…誰かの呟きが聞こえたが無視しよう。
「まぁ、もうじき死ぬ奴にこれ以上は言わなくてもいいか」
って言うのは嘘で、これ以上の情報の開示は危険だからね。発動条件が相手の心が揺れた時にしか発動出来ないってデメリットは僕の心の中に仕舞っていた方がいい。
「そうだな。隼也、ナイスだ」
蒼牙のリーダーが僕の隣に。
「隼也やるね。見直したよ」
そして、その隣に智洋が。
「坊主、中々良いじゃねぇか。気に入ったぜ」
「あと少しっすね。頑張りましょう!」
「ええ、ここから私たちの反撃です」
菊池さん達が僕の左に並び、相手を威嚇する。ここからが僕らの本当の戦いだ。
「てめぇ…らぁ…!!」
「体が…くそ!厄介なことをしやがって…!」
足を震わせて立つのもやっとな体で構える。そんなボロボロな体では戦うことすらもままならない、もう勝ったも同然の話になる。
「さてっと…そろそろ行こうか。本────」
その直後、巨大な威圧感に呑まれ、野生の勘が最大の警報を鳴らした。
僕「眠いっす」




