第81話:逆転
やっと来ました最終局面
side:智洋
この黒刃…!どこから来たんだっ…。
腹を押さえ、敵を睨む。出血しすぎて体がだるくなってきた、視界も悪いし状況が良くない。
「っ…」
「君たちじゃ僕らに勝つことは不可能だ。分かるだろ?この意味が?」
「うるせぇ…」
リーダーが反論するが…敵の言う通り、勝てるなんてほぼ不可能な戦い。正論だからこそイラッとくる。
「ほんっとに厄介っすね…」
あの黒い刃にはなにかが仕込まれている。さっきまであった余力が何故かない…。力が抜けていく。
「ごめん…なさい…私もう、無理かもしれません…」
愛奈さんが地面に膝を付いて苦しそうにしていた。魔力不足かもしれない、マナポーション…って今は持ってねぇじゃん…。
「だろ?もう脱落者が出てる。もう終われよ」
右腕を俺らに突き出すと、赤黒い光と黒いオーラがチラつく。
「後数十年あればマシになれるんだがなぁ」
そう言いながら白ゴリラも俺らに近づき、触手やろうの隣に立つと掌を突き出す。
「「死ね。人間」」
光が大きくなると、掌から光線が放たれた。それは地味な一撃だが…確実に俺達を殺す威力を持っている。食らえば終わる────
やっぱりレベル差が大きすぎた…こいつのレベルは正直言って俺たちの倍はある。そんな格上の化け物と戦って勝つ確率は低い、ほぼ0%の戦いだ。賭博同然の賭け戦…だけどそれでいい、もう…匙は投げられた。
「───すまん……遅くなった」
誰かの声が聞こえた瞬間…世界が歪み、轟音と共に一瞬だけ視界が白く染るが、直ぐに視界が元に戻った。放たれた光線が消えた以外は特に変わった事はない…。
だが、目の前を見れば触手やろうと白ゴリラが傷だらけになりながら地面に手を着いていた。
「なん…だこれ…」
「なにが…起きた…」
そんな問いをかける二人に俺は少し笑って上を指さした。上を見つめた二人は驚愕の色に染まった顔で震えていた。
「おせぇんだよ…馬鹿野郎」
リーダーの呟きに応えるように空から急速で降りて、俺たちを背で庇うように前に立った。怪しげな黒いマントを羽織り、細身でありながらその左手には大剣を持っている。その名も────。
「何故…貴様がここにいる!レオン!!」
十二神星の一柱にして、世界でも五本の指に入るクランのクランマスター。この場にいる誰よりも強い存在だ。
「なぜ…?」
首を捻らせて、問い返した。
「お前は…僕の仲間が足止めさせていたはず…」
「あれか…確かにてこずったが…ちゃんと…殺しておいた」
平然とした態度で告げる。てこずったが殺したって…このレベルをって事ですよね…?化け物ですか?いや、化け物なんだけどさ…。
「…失礼なこと、考えてないか?」
後ろを振り向き、俺をジト目で見る。
「い、いえ!!別に特にそんなことはないです!(っぶねぇ…下手な事は考えないでおこ…)」
「…一応ポーションは、持ってきた…飲め」
そう言って懐に手を入れ、小さな布巾着みたいなマジックパックをリーダーに渡した。
「その中にある…後ろへ下がれ」
大剣を横にして、俺たちを護る仕草をとる。
「…ありがとな。後は頼んだ」
「……任された」
(あとはほんとに…頼みます…レオンさん)
心配はないと思うが、それでもアイツらの実力は化け物級…分が悪いかもしれない。それでも、信じるしかない。
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side:レオン
「おいおい、流石に錬魔達じゃキツイんじゃないか?」
ガキと肉だるまの隣に数cm程度のトカゲが現れる。すると、トカゲの体が黒く変色し、溶けるようにして液体化した。黒い液が肥大化していき徐々に人型を形成していく…そして、そこから白ずくめの男が現れた。しかもそれだけでは無い、司会室に居たはずの白ずくめもこっちに来ている。
(四人か…まずいな…)
俺だけでは四人は捌ききれない。せめて俺クラスの者がもう一人居れば…。
「お前と組むのはいつぶりだ?」
隣に立つ男に驚く。先程までズタボロだった奴が何を言っている…。
「五年…ぐらいだ」
「そうか五年か。短いな、覚えてるか?」
双剣を両手に持ち、呟いた。レーヴァテイン───と。二つの剣が光を放ち焔を灯した。地味な見た目に反してその力は世界を滅する程強力なもの…。
「…俺を誰だと思っている」
「ただの馬鹿野郎」
いつものお前か…安心した。
「軽口叩けるのなら良い…」
「ありがとよ」
二人で構えを取り、四人の敵を睨む。五年ぶりの共闘だ、綻びは生じるだろう…だがそれがどうした、仲は悪かろうと…ブランクがあろうと…力を合わせるのに言い訳は無用だ。
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side:???
流石のレオンとてあのクラスを四人同時に相手はキツイ…。くそ、こうなれば…俺もやるしかない。
「お前ら、話が…」
「───行くぞ」
まだ内容を言ってねぇのに佐賀が力強く言い放った。他のやつも口には出さないが態度で佐賀と同じ事を言っている。あのなぁ…せめて内容は言わせろよ馬鹿野郎。
悪態を付いている裏腹に、その心は静かに澄んでいる。どこか嬉しさもあった。
「レオンの手助けをする。あいつだけじゃ四人はキツイ、できるか?」
四人を見渡し、確認を取る。だが、それは必要なかったようだ。
「「「「了解。リーダー!」」」」
言質はとった。なら、やる事は一つだけ。
「作戦は手短に伝える。レオンの補助を優先的に考えろ。だが…自分の命を最優先だ」
そんな作戦とは呼べない策だが、四人は笑って頷いてくれた。なら、後は参戦するだけだ───。
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「レオン」
隣に立つレオンに前を向いたまま口を開く。
「…分かっている」
何も言ってないが気配で感じ取ったか。
「なら無用か。行くぞ」
「…あぁ」
それを合図に俺達は走り出した。
うぷっ…




