第76話:数々のピース6
何かが足りない。歪な日常から目を背け、これが現実なんだと必死に言い聞かせた。何も変わらないはずなのに自分の心だけが腐敗していく。周りが成長する中、自分だけが退化していく。それは絶対的な孤独。崇拝的な異端。───何を言ってんだ僕。
side:???
「ふぅぅ…疲れたな」
ギルドから帰ってすぐ、俺は風呂場に直行して今に至る。やはり浴槽に浸かってると蓄積された疲労が癒される。
「…今日がヤマだな。飯を食べたら呼び出すか…」
この前の事を尋ねるべく、浴槽内でどうするべきかを熟考している事数時間…。
「リーダー…お前何してんだよ…」
全身が赤く、目眩が止まらない。浴室で横になっている俺の隣で呆れた顔で俺を見てくる佐賀がため息をつく。
「何千度の熱も耐えるリーダーが、たかが44度の風呂でのぼせるってどういう理屈だよ」
「…それは俺が聞きたい」
天井を見つめ、自分のバカ具合に心底呆れた。なんでこんな事に…。
(…多分、智洋関連のせいだろうな……ははっ情けない)
一瞬で思い当たる節につい苦笑いが零れる。
「少し安静にしといてよ?今夜は俺が用意するから、着替えとかその他は…」
その他まで世話になる訳にはいかん。と強く顔でアピール。すると、佐賀は乾いた笑みを零しつつ「要らないね。じゃあ部屋に行っとけよ、出来たら呼ぶ」と言って浴室から出て行った。
(…着替えるか)
それから数分後、部屋に戻った俺はそのままベッドに横になり一睡した。
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誰かの声と体を揺さぶられる感覚で目が覚め、重たい瞼を開ければ「やっと起きたか」と、安心した顔つきをしている佐賀と心配そうに俺を見つめる智洋の二人がいた。
「おはようございます。大丈夫ですか?体のお加減はどうですか?」
「あぁ。良好だ」
「峰屋さんも大丈夫って言ってたから問題は無いだろーな」
「そうだったか。あとで礼を言わねぇとな」
ベッドから降り、伸びをして佐賀の方に顔を向ける。
「佐賀、ありがとな」
「いやいやーそれほどでも〜」
後頭部を掻きながら照れ笑いをしている佐賀に反して俺は真顔で言う。
「あぁ、そうだな。行くか」
「え?あ、はい」
「はーい!」
部屋のドアノブに手をかけて、夕食をしにリビングへと向かった。
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「智洋、この後暇か?」
夕食を取り終え、後片付けもすませたあとにリビングで一人寛いでいた智洋に声をかける。
「?は、はい。そですけど…」
「大事な話がある。ついてきてくれ」
「え…わ、分かりました…」
俺が先導する形で玄関の方へと向かう。話があると智洋に言った時、何故か暗い感じをしていたが…怒られると思っていたのだろうか。
だとしたら悪いか…?とそんな俺の考えに反して、智洋は全く違う考えをしていた。
(り、リーダーがわ、私に用だなんて…なんだろ…大事な話なんだよね…こ、告白?いや、まさか…そんな、私たちまだ会って間もないのに…!)
火照った頬を両手で隠してキャッキャしていた。だが、これをリーダーが知る由もなく、今も罪悪感に苛まれていた。
(これは今すぐ誤解を解いた方が良いのだろうか…つっても外に出たらすぐ言うしな…はぁぁ…言った方がいいか?)
ひたすらこれを繰り返している。そんなこんなで気が付けば玄関のドアを開けて外に出ていた。
「…もう少しついてきてくれ」
「ふぁい!(あぁ…!噛んじゃった噛んじゃった…私のばか!)」
ふぁい…?と思ったものの気にせずそのまま歩き続けること数分、目的の場所に着く。着いた場所は首都圏にしては珍しい広々とした土地だ。確か、50坪はあったはず。
「リーダー?ここは?」
「俺が所有している土地だ」
「え、リーダー土地持ってたんですか!?」
クワッと俺の方に顔を向けすごいですね…と驚嘆の声を上げる。
「まぁな。元々知り合いのだったんだが貰って俺のになった」
「そうなんですか……所で何も無いようですがどうしてここに?」
「ん?あぁ…。少しそこで見ていてくれ」
そう言って俺は草が膝辺りまで生え茂った土地に足を踏み入れ、真っ直ぐに進む。
(中央はここら辺か)
手を伸ばし、詠唱を唱える。
『開け』
すると、その直後に目の前の空間に亀裂が入りバチバチと音を立て人が一人入れる隙間が生まれた。
「来ていいぞ」
「…え、なんです?それ…?」
「これか?まぁ気にすんな」
「えぇ…いや、えぇ…」
「ちなみにこれは佐賀も開けれるぞ?」
「は、はぁ…。もう気にしたら負けですね」
開き直った顔をして、こっちに近づく。そうだ、気にしたら負けだ。と俺も心の中で納得させ智洋が隣に来るまで待つ。
「んじゃ、入んぞ」
「はい…!」
「緊張しなくていい。行く場所は地獄でも魔界でも無いからな」
「わ、分かりましたっ!」
俺が先に亀裂の中に入り、それに続いて智洋も亀裂の中に入った──。
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side智洋
不安な気持ちを抑えながら瞳を閉じて亀裂の中に入ると、どこかに出たのか優しい風が体を通り越す。
「…(あれ?着いたのかな…?)」
「もう目を開けていいぞ」
リーダーの言葉に頷き、徐々に瞼を開ける。そこに映った景色に私は大きく目を見開いた。
「すごぉい…綺麗…!」
目の前には透明な大きな湖に加え、周りには見たことも無い草木が生え、光る蝶や星の様に煌めく花。夜空に輝く無数の星空と青い満月の光が相まって幻想的な空間を生み出している。
「ここは幻想郷と呼ばれる場所でな、元の所有者が愛していた大事な場所だ」
テンション高いのは許して下さい。




