第75話:数々のピース5
今回の話は意外にも二時間足らずで書き終えました!
side:???
「んで、どうしたってんだ?」
部屋に移動し、俺たち全員が席に着いた所でギルマスが真剣な眼差しで俺に尋ねる。
「俺達は今朝、鮮血の猛毒蛇の討伐依頼を受けて等々力渓谷に行ったんだが、そこで異常なまでの魔素濃度と変異種を見つけた」
やれやれ…と言った感じで俺は伝えると、ギルマスの顔が曇り、眉間をつまみ出した。
「そこまで酷くなってたのか…最初の二ヶ月ぐらいは要観察って事で見ていたんだが、問題は無いって上の連中が判断したんだよ。俺もそれに従って観察をやめたんだが…悪手だったか…すまねぇ、俺の判断ミスだ、報酬を弾ませてくれ」
席を立ち、深々と頭を下げる。流石の俺もここまで誠意を見せてくれる奴に対してどうこう言うつもりはねぇ。寧ろいい経験だった。
「やっぱサボってたのか」
だが、俺は性格が悪いようだ。
「…ほんとすまねぇ」
バツ悪そうに顔を上げて俺を見る。いじるのはここまでにするか。
「ま、過ぎたことだ。今更気にするな」
足と腕を組み、優しく微笑む。何も気にしてねぇよ?と態度で示したつもりでいる。
「だが…もし万が一があったらと思うとよ…」
気にするなと言ってもギルマスは罪悪感の篭った顔つきをしていた。ギルマスの性格からして無理もねぇな。ったく、しょうがねぇな。
「良いから気にするな。お前らも大丈夫か?」
左右に座る仲間に確認を入れ、ニマっと笑みを浮かばせる。
「はい!」
「大丈夫だぜ」
「私もです」
コイツらなら絶対そう言うだろうと分かっていた。仲間からの言質も取ったことだ、話題を逸らすか。
「んじゃ、この話は終わり。赤蛇の査定をしたいんだが良いか?」
「待ってくれ、場所を変えてくれないか?」
一瞬困惑をしていたが、フッと笑うといつものイカつい顔に戻った。
「あぁ」
「ついてきてくれ」
ギルマスが立ち上がり、扉の方に移動したタイミングで俺達も立ち上がって後を付いて行った。
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着いた場所はギルドが保有する魔物専用の大きな屠畜場。ここで討伐した魔物を出せってことか。一応、こっちで解体を済ませてあるんだけどな…。って言ってなかったわ。
「すまん、言ってなかった。こっちで解体してるんだ、このまま査定してくれ」
「おぉ、そうだったのか。解体してあるんなら別にいいぜ。ここで出してくれても大丈夫だ」
二、三歩下がるといいぞとの合図を貰いマジックパックに詰め込んだ蛇の魔石と皮と牙、そして肉を取り出す。
「やはり綺麗だな。毎回このレベルで魔物を持ってきてほしいぐらいだぜ…他の奴も見習ってほしいわこりゃ」
机の上に並べた素材を品定めしている中で、一つだけオーラが違うものがあった。そう、これが変異種のものだ。
「…おい待て。ただの変異種じゃねぇぞこれ…!」
緊迫した表情で変異種の魔石を見つめ、冷や汗をかきながらこっちにズカズカと寄ってくる。ほぼゼロ距離だ。少し動けばギルマスの鼻が俺の鼻と当たってしまう距離感。
「な、なんだよ」
三人がおぉ…やらきゃぁやらと声を上げている中、ずっと俺を見つめ続けてくる。
「はぁぁぁ…」
大きくため息を吐いてその場に中腰で座り出した。後頭部を掻いて深刻そうな顔でこう言った。
「これ…まさかとは思うが魔王種か…?」
「惜しい。準魔王種らしいぞ」
「…いや、惜しくても嬉しくねぇ…。マジかよ、なんてったって変異種が…しかも魔王種が…」
頭を抱え、またしても大きなため息を吐いた。
「準な」
「うるせぇ」
相当きているみたいだな。可哀想に。
「…報酬を倍にするわ。それと、今回は上の連中に報告しねぇと…こりゃ、一大事だ」
俺が思ってる以上に事態は深刻らしい。ギルマスの慌て具合を見てれば分かる。
「ギルマスさん。少しいいですか?」
峰屋が手を少し上げながら俺よりも一歩前に出てくる。
「なんだ?」
「異常な魔力溜まりに準魔王種の出現…。それらを考えると、もしかして近々何かが起こるってことですか?」
「定かではない。だが…何かが起ころうとしているのは間違えねぇと思う」
「魔災…ですか?」
「有り得ねぇ話ではない」
魔災とは、魔素が異常なまで高まって魔物が何段階も強くなり、とある魔物が産まれる現象の事。別名インフレ災害とも呼ばれている。
あの魔力溜まりは魔災とは呼べず不完全だからただの魔物も強化されていなかったが…それでも準魔王種が生まれていた。下手すりゃあ魔災になっていたかもしれねぇ。
「魔神が産まれりゃあ…国が動く。特にオリュンポスが…な」
ギルマスのそんな呟きに反して、一人だけ?マークを浮かべている人物が居た。
「魔神?なんだ?そりゃあ?」
菊池だ。
「魔災で産まれる存在、それが魔神だ。魔神は霊体と物理体の狭間に位置する半霊体の魔王と思え。だがまぁ…魔王以上に危険な存在だ。強さの桁もな」
やべぇのな…と息を呑みながら俺たちはその後も少し話し合い、やっと査定まで漕ぎ着けた。途中から佐賀も参加し、一緒になって査定結果に驚いた。
「いやぁ…まさか6千万を越えるなんてね、変異種こわ…」
「それな」
佐賀のそんな呟きを聴いて菊池がノリノリで答える。俺もその桁まで行くなんて思ってもみなかったからな。少し驚いた。
「…そんな大金が入ったマジックパックなんて持ってても緊張するですけど?」
マジックパックを左手に持ってゆらゆらと揺らしながらボヤく。
「佐賀さんファイト!」
智洋の激励を受けて若干元気が出たらしい。少し顔色が良くなっている。
「…うっかり落としても文句言わないでね」
「しっかり文句言うから安心しろ」
「一層泣けてきたわ」
そんな他愛もない会話をしながら、帰路についた。
(〃´o`)フゥ…




