第73話:数々のピース3
Zz┌( ̄〜 ̄)┐ムニャムニャ...
side:???
「ここが…あの等々力渓谷…?」
ギルドを出た後、俺たち五人は等々力渓谷まで愛車で向かったんだが…。どう見てもこれは別世界だ、禍々しすぎる。なんだアレは、変なもんも見えるぞ…。
「観光地と言うより魔境だろ」
「下手したら魔王領かもしれねぇ…」
「ここ漫画の世界じゃねぇから」
鮮血の猛毒蛇だけじゃここまで魔素が濃くならねぇ。考えたくはねぇけど…この感じからして変異種の可能性がある。もしそうなら少し手強いかもしれん。
「そんな事より絶対Aランクじゃないですよ。AAランクは確実ですよあの見た目」
「ギルドの人達手抜きしました?」
「ギルドの連中血抜きしてやらねぇとなぁ」
「俺も手伝う」
完全に悪人顔をしている三馬鹿にため息をつきたくなる。そんな事したら指名手配されるわ阿呆。
「やめろ。馬鹿野郎。早く行くぞ」
それを聞くとさっきとは打って変わった様に顔つきが変わった。そして、等々力渓谷に足を踏み入れた。
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進んだ先は観光地とは思えない程魔素で濁っていて、視界も悪く不気味な感じだ。正直言ってここまで来ると異常事態以外のなにものでもない。
「厄介な事になってんな…ったく」
「変異種ですかね?魔力溜まりが発生しているとは言えここまで濃くなることは珍しいです」
「峰屋。こういう事には詳しいのか?」
「はい。私はこれでも魔法学院を出ていますので詳しい事には詳しいんですが…」
少し考えるように俯く峰屋だったが、直ぐにこっちに顔を向けて緊張気味に口を開いた。
「これは多分変異種の中でも特異とされてる…魔王種の可能性があります」
魔王種。この世の厄災を具現化した存在と呼ばれ、過去にゴブリンの魔王種によって国が滅んだとさえ記述されているレベルの化け物。これを相手取るには最低でもAランク六人が必要とされている。それ程までに魔王種とは強力なのだ。
「だとしたらやばくないですか?私たちで対処出来ます…?」
智洋の言い分は尤もだ。俺たち五人で勝てるほど魔王種は甘くない。
「…っと、北48m先に三体確認」
佐賀の言葉を聞き、すぐさま命令を出す。
「ここは菊池と峰屋に任せる。力を見せろ」
「「了解!」」
掛け声を発した瞬間、菊池と峰屋の姿が消えた。
「ほう…瞬間転移か」
空間転移の上位互換にして瞬間移動の下位互換。瞬間移動と違う所は魔力消費量と術式範囲の差異だ。実の所戦いの場では瞬間移動よりも魔力消費が少ない空間転移の方が重宝されている。理由は言わずもがな。
蛇の真上に転移した二人は即座に構えると、峰屋は指を上にクイッと上げ、菊池は左手に持つ片手斧を素早く持ち上げて振り下ろした。
刃が蛇の首を切断した直後にもう二体の蛇の真下から土の槍が現れ、胴体を貫いた。
ほぼ完璧なタイミング。これでアイツらの実力はわかった、後は連携だな。
「どうでした?」「どうよ!!」
瞬間転移で戻ってきた二人は褒めてくれるの待っているかのような期待の眼差しで俺を見つめる。
「あぁ。おどろ────」
それ以上言葉を続けることは無く、後ろを振り向いた。今…。ものすごい殺気が俺達を襲ったからだ。
「リーダー…」
智洋の震える声が聞こえる。
「これって…っ」
言わなくてもわかる。あれは───。
「魔王種っ!!」
振り返った先に見えるのは、血肉色の鱗を纏い、黒いオーラを発しているビル六階並の高さを持つ巨大な鮮血の猛毒蛇。
「グルルゥ…」
「…っ」
やはり魔王種なだけあって威圧感と瘴気が半端ない。並の人間ならこの時点で死んでいる。
「これ…っ勝てんのかよっ!」
「ちょっ…厳しいんじゃねぇか…?」
「っ…」
「私…ちょっとやばいかも…」
あぁ、震えてる。足が…腰が…全部震えている。これは恐怖か?否──。違う。武者震いだ。
俺は小さく震える足を一歩前出して、秘めたる闘志を燃やしながら仲間に告げた。
「この程度なら問題ねぇ…。片付けるぞお前らァ!!」
魔力を一気に解放して声と共に仲間にぶつけた。奮い立たせろ、その闘志を。その心を。
「…すまん。右腕ともあろうものがビビっちまった」
そう言って隣に佐賀が立つ。佐賀に続いて智洋、そして菊池と峰屋が左右に立った。
「オラァ、あんた…リーダーについて行くと決めた。ここでチビっちまってたらいけねぇよなぁ!」
「そうですね。もう怖くないですよあの蛇」
「皆みたいに強く保てれないけど…私だってやれる!」
それでこそ蒼牙。どんな敵に出会おうと…俺がいる限り敗北はありえねぇ。
「空気読んで待っててありがとよ」
もう──いいぞ。と言い放った瞬間俺達の戦いが始まった。
Q:魔王種の事分かりやすく教えて。
A:長い時間を掛けて自然界に発生した弱いウイルスが突然変異して更にワクチンの抗体を持って生まれた存在とでも思ってください。




