第67話:奥底に眠る既視感
ポケ○ンのメタ○ンって何味するんだろう。いちごかなぁ…
side:???
その名を聞いてすぐ、訳の分からない強い衝動に駆られ女の両肩を掴んだ。
「とも、ひろ…っ」
「えっ!?え、な、なななんですか!?」
「リーダー!?」
周りが見えない、何故か呼吸が荒く苦しい。溢れ出る変な感情、なにか大事な事を訴えられてる気がするのにそれがなにか分からない。
「…えーっと…はい───大丈夫ですよ」
優しく俺に言葉をかけて、俺を強く抱き締める。
(俺は何をしてるんだ…)
心の中でそう思うも、不思議と安心感があり、さっきまでの不安定な精神が嘘のように鎮まった。
「…初対面だよね?えっと、まず場所移さね?」
佐賀の呆れ声と共に俺の心拍数が上がり、女も自分のした事を恥ずかしみながら俺から離れて私は何をしてっ…!!と狼狽えていた。
(何やってんだ俺は…初対面の女に…!)
抱き締められるどころか、安心感を得てずっとこうされていたいとか…俺はいつからこんな特殊性癖を持ってた…?
困惑しつつもこの場に留まるのは苦痛な為、さっさとずらかり俺らの拠点である家に帰った。
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帰ったのはいいが…。
「……」「……」
俺と向かい合う形で座ってる女…智洋が視界に入るだけでさっきの出来事を思い出して、居た堪れなくなり、そのせいで俺達は無言を貫いていた。
…が直ぐにそれは破られる。
「え、えーっと。もっかい自己紹介しよう!」
隣に居る佐賀のそんな提案で少しは良くなるが所詮は少し。0に1が足されただけの事。たった数秒で再び沈黙が流れる。
「…俺こういう空気苦手なんだけど」
「偶然だな、俺もだ」
「私もです…」
なんだ、俺達相思相愛じゃねぇか。…とか言えたら楽なんだがな。ははは。
「まぁ…俺達は相思相愛ってとこで改めて自己紹介しようか!」
お前のその砕けた所がよく分からんが今は助かった。ナイスだ佐賀。
「じゃあ、言い出しっぺの俺から!俺は佐賀颯太!職業は格闘家でリーダーの右腕!ちなみにランクはB!よろしくっ!!」
はい次言ってみようと上機嫌で俺に促す。深夜テンションかお前は…。仕方ない、ここは腹を括るか。
「俺は…」
と言いかけた所で俺は言い淀んだ。名を言ってもいいのか…もし言ってアイツらが情報を売ったりしたら…。いや、あの女はともかく佐賀は絶対しない、しないが…ここは止すか。なら、どうするべきだ?偽名を使うって手もあるが、それはなんか申し訳ない…よな。
「リーダー?」
「…?」
…何だこの違和感は?くそ、ここ最近おかしいだろ俺。自分だけではなく周りにも変な違和感を抱いてる現状に嫌気がさしてくる。
(いかんいかん、今は考える時間じゃねぇ)
気持ちを切り替えて女の顔を再び見る。
「悪い、俺は蒼牙のリーダーだ。職業は剣豪でランクはA、よろしく頼んだ」
名前を言ってないところ以外は当たり障りない自己紹介だが、やはり二人とも頭に疑問を浮かべている。
「え…っと、じ、じゃあ私ですねっ!」
緊張した声で言うと、一度深呼吸をする。俺に事情があるってのは察してくれたようだ、最初の時から思ってたが良い奴だな。
「私は先程も言った通り、木崎智洋ですっ!男っぽい名前ですけどちゃんと女ですからねっ?職業は英雄でランクはDです!よろしくお願いします!」
最後に頭を下げてる光景を見て、例の違和感が襲いかかる。別に変な所はない…いや、あるんだけどそうじゃない、英雄がすごいって所ではなく、なんで職業が英雄なんだ?
「すごいでしょ!」
「ん?あ、あぁ。凄いな」
「なんかあんまし驚いてねーな」
一瞬だけピクってなったが、動揺を隠して平然を装う。
「そ、そうか?なんかすごすぎて逆に驚けねぇだけだ、内心驚いてる」
「なーんだ、そうだったのか!だよなぁ!」
はははと少し大袈裟に笑う佐賀とえへへと照れる智洋をよそに一人考えていた。なんで職業が英雄って部分にすごい違和感を感じたのかわからん。一応、念の為正義の裁判を発動していたが嘘はついてなかった。なのに…なぜ?違和感を──
「自己紹介も終わった事だし、今日はもうお開きにしない?」
熟考に浸っていると佐賀が席を立ちながら俺らを見る。まぁ…出来れば新メンバーの募集したい所だがさっきあんな事あったし行きずらいわな。ここは佐賀の提案に乗るか。
「そうだな。また明日にするぞ。それでいいか?」
女の方を見ると、頷いて賛成の意を示す。
「よし。今日はもうこれで終わりだ」
席を立ち、用を足しに行こうとしたその時だった。
「そういえば、智さんどうする?ここに泊まる?」
なん…だと?おい待て佐賀、何を言って…
「そうですね、もしお邪魔にならなければ泊まりたいです…」
ちょ、おい。待て待て…何勝手に進めて。
「おっけい。そっちの方が効率もいいしそうしよう!いいよなー?」
佐賀がこっちに振り向き、訊いてくる。ここでダメとか言える雰囲気じゃねぇな…。はぁ…女なんだからよ、もう少し危機感持てよ馬鹿野郎。
「ったく…わぁった」
そんな事思っていても、断れないから許すしか無かった。
「ありがとうございます!」
背中越しだからわからんがお辞儀してるよな。律儀だし。
「よっし!智さん家の事教えるから着いてきて〜!」
今日は家が騒がしくなるな。はは…懐かしい光景だな、と不意に思った言葉に何言ってんだ俺?と思いつつもその場を後にした。
ふぅー寝不足続きはよくないね




