第61話:リーダーの秘密
すいません、今回は長めです!
side:佐賀
何が起きたっすか…?いや、なんでバレた?さっきまで全然気づく素振りすらも見せなかったのに!!
「俺の剣を…どうするだって?」
リーダーが冷や汗をかきながらそう尋ねる。
「邪魔だ。破壊する」
「エライ事言ってくれるな」
平然を装っているが内心では汗ダラダラなのがわかる程、あのリーダーが顔を青ざめていた。だが、そんな中で俺は二人の会話を遠目で見つめることしか出来ずにいる。別に動く事を禁じられた訳じゃないのに本能が動くなと訴え続けている。
「暴君。僕も本気出すよ」
いつの間にか隣に移動していた触手君がそんなことを呟くと、あの白ずくめと同等のオーラを纏い始めた。
「俺一人で十分なんだがな」
「手間が省けるからこれが最適だよ。…ねぇ?雑魚共」
囁く様に、静かにリーダーの元へと近づきリーダーの体に刃に変形させた腕を刺す。
「───ッ!?」
「リーダぁぁ!!」
「てめぇ!!」
俺と雅人さんが咄嗟にその場から動き、リーダーの元に駆け寄ろうとするが…
『動くな』
白ずくめの声が聞こえてきた瞬間、何故か体が動かなかった。まるで体だけが石にされたかのような…。
「あ…」
否、そんなことは無かった。声すらも出せない。
「て…ぇ…めぇ…ッ!」
(くそ!リーダーがっ!!)
動けない。声も出せない。魔力も…魔気も…練れない。あらゆるものの動きを制限する強大な言霊に為す術がなく、リーダーの苦しそうな所をただ見つめることしか出来なかった。
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side:???
「──ッ…」
「苦しい?痛い?…それとも熱いかな?」
言葉を掛けながら、ゆっくりと…刃に模した腕を深く刺してくる。それに伴い痛みと苦しみ、そして焼けるほどの熱が俺を襲う。
「サイコ野郎が…!」
触手を無理やり引き抜き、触手馬鹿から距離を取るも…体がいつもより鈍く重い。そのせいで思うように体が動かせなかった。
「チッ…重いな」
「そりゃそうだよ。毒塗ってるから」
「ははっ、厄介なもん塗りたくるな」
毒は聖魔法、もしくは回復魔法でなければ解毒が出来ない為、峰屋の所に行って解毒してもらわないといけない。だが、それはダメだ。今は智洋の治療が優先…。対処療法になるが魔気を全身に巡らせて毒の効力を下げつつ、血の循環を抑えるか。そうすれば毒が全身を侵す時間を遅らせれる。
(ま、時間との勝負に切り替わるがな)
そんな皮肉じみたことを考えながら、刺された箇所を手で押さえる。
「ねぇ…?蒼牙のリーダーくん」
「あぁ?」
魔気を体に浸透させている最中に、触手馬鹿が感情の籠ってない顔で俺に訊く。
「君の能力の秘密知ってるよ」
「は?」
(急にどうしたこいつ?力の行使で頭のネジ飛んだか?)
そんな俺の考えを読んだのか、一瞬鼻で笑い飛ばすと話を続ける。
「ユースティティア。ローマ神話に出てくる正義の女神であり、司法の公正さを象徴する神でもあり日本にとって…いや世界にとっても重要な存在といえる。そして、君の能力もユースティティアだったよね?」
「っ…それがどうした?」
俺が問返すと、不敵な笑みを浮かべる。
「いやぁ…なに。君ってさ、出身地や歳、経歴もそうだけど、名前すらもこの日本のどこにも詳細が載ってないんだよねぇ?」
そんな核心をついた台詞に一瞬だけ俺の心臓が跳ね上がる。
「っ!…調べたのか?」
「うん」
「はっ、それが何だ?貴様のさっきの説明と俺の生い立ち諸々になんの関係がある?戦いすぎで頭が沸騰しだしたか?」
冷静を装い、普段通りの口調で話すが…少し動揺をしているせいなのか、無意識に焦っていた。
「僕は三桁程度じゃ沸騰しない。さて…なんでユースティティアと繋がるかだって?そんなもの考えればわかることだったさ。ユースティティアは公平に裁くため目隠しをしている。だが、君は目隠しをしてない。なら、何が目隠しの役割を担っているか…考えれば簡単だったよ、この答えは、ね。…君のその能力は───
────名前を知った者には効力を失う」
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side:峰屋
遠くから聞こえてきた、信じられない言葉。リーダーが何故この数年間名前を教えず、自分の事を喋らなかったのかやっとわかった。私は…私達は段々とリーダー自身の事を聞かず、いつの間にかそれが当たり前と化してきていた。
「リーダー…」
その呟きはリーダーへの不満からなのか失望からなのか…もしかしたら、そのどちらかもしれない。
私達は完全に信用されていなかった。と、そんな考えがよぎる。だがそれも、直ぐにその考えをやめて私は触手君を睨んだ。言葉をかけたい、リーダーの隣に行きたい。たかがそれだけの願いすらもあの言霊に消えていく。
「……」
「なんで黙るんだい?図星をつかれたからか?もしかして、経歴だ!とか何とか言ってくると思ったかい?はは!なわけないじゃん!アレはカモフラージュとして君が情報全部を消したんだろ?」
「ははは!!どうだ!?蒼牙。所詮は上辺だけのチームだったね!!、君たちには信用って言葉が無かったんだ!その証拠に名前も生い立ちも何も知らない!それは、こいつが君たちを信用していなかったからだ!!」
滑稽だねと言って腹を抱えて嗤う。リーダーの顔が曇り、俯いていた。その瞳はどこか潤ってるようにも見える。
「り…あぁ…」
どれだけ振り絞っても声が出ないっ…!もうやめて!!これ以上リーダーをっ!リーダーを──。
「────ふざ…けんなっっ!!」
突然、怒りに染った声が響く。私は涙で滲んだ瞳をその人に向ける。
「…俺の言霊を…」
「…っる、せぇ!おい…!…あぁ…!うぜぇな!!この縛り!」
雅人さんが力強くで言霊の縛りを解こうと必死に試みていた。そんな事すれば体に影響が起きて、最悪脳の神経が破裂してしまう。
(本当は…ダメだけど、ごめんなさい…私は大事な人を見捨てれない)
智洋さんの治療を続けている最中に、奥底に眠っているとある能力を…使う事を禁じられ、三年前に封印された力を解放した。
ただ、それは誰にもバレずに。事象を改変した。言霊の縛りが徐々に消えて体に力が入ってくる。
そして…気が付けば私は智洋さんの治療から離れてリーダーに駆け寄っていた。違う、私だけじゃない颯太さんや雅人さんも駆け寄っている。
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side:菊池
さっきまで無理やり動かそうと、体に力を入れていたら急に解けた様に…全てが思うように動けた。一瞬だけ疑問が出たがそれはなんでかは直ぐに見当がついた。
「…なんの真似だい?」
「…ッ」
ただ、俺は気が付けば隣でリーダーの背に手を添え、片手斧を持ってクソガキを睨んでいた。同様に佐賀も隣で手を添えながら拳を握っていた。
「聞いてなかったの?ソイツは君たちを信用してなかった。つまりは心のどこかで君たちを仲間とも思ってなかったって事だよ?なんで今更ソイツの隣に立てるの?」
そう俺たちに問いただす。
「人間、隠し事の一つや二つぐらい持ってますよ。それが何であれ私達は仲間です。共に笑って、共に泣いて、共に戦った戦友です!」
リーダーの前で庇うように立っている峰屋が涙を流しながら叫ぶ。そうだ、俺たちは戦友であり盟友でもある。たった一つの隠し事如きで俺たちの絆が裂けるとでも思ったのか?阿呆、裂けねぇよ。
「分からないな。なんで許せる?なんで仲間と呼ぶ?本当に分からない」
「何がわからねぇんだ?」
目を細めて、クソガキに問う。
「だってさ、隠していた事が能力の秘密だよ?しかも、それは仲間なら尚更伝えなきゃいけない内容なんだよ?名前を知った者には効力を失う。こんなもの仲間に教えたとしても心の底から信用しあっているんなら教えてもいいと思うんだよねぇ?」
「っ…」
クソガキの言葉にリーダーがピクっと肩を震わせて反応した。
「ほら?ソイツも分かってて隠してた。それは心の底から信用してないからだ。上辺だけの人間なんだよ、人の心を持たない兵器と同じだ」
「んだと…?」
俺は怒りで頭が真っ白になった。
「ははっ、クズだよねぇ〜?こっちは信頼してるのにソイツは信頼せず、表向きだけで信頼を勝ち取って、何かあればすぐ切り離す。そんな人間なんだよ!、はっ!どうしようもないクソ人間なんだよ!救いよう─────」
「「ハァァ!!!」」
何かを考えるよりも、体が先に行動を起こしていた。気が付けばクソガキの顔面に俺と颯太で拳を叩き込んでいた。
人との信頼って時間よりもどれだけ寄り添ったかで決まる事ってありますよね。って結局時間も関係しますが…(´>∀<`)




