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神なんかいない

作者: 琵琶湖は大きい

 私には、二年間付き合った元カレがいた。LINEで告白されて付き合い始めた。彼は変わった人だった。

 整理整頓も身だしなみもできなくて、字も汚かった。かっこいいというより可愛かった、ローラーコースターにも乗れないし、辛いものも無理だった。でも頭は良かった。今思うと天才だったのかもしれない。

 期末テストも勉強もせずに学年10位を取り、授業中遊んでいて勉強もしていなかったはずの数学の偏差値も67だった。中学校入学の段階で、ニュートン算などはできなくて数学も勉強してないくせに1次関数もすらすらといていた。

 彼の変わった部分はそこだけではない、発想も変わっていた。税の作文では、なぜか割合の計算方法を書いていたし、めざしたい人の作文では、みんなが有名人、歴史人物を書いている中で、

”僕は僕だ。僕は織田信長でもないし豊臣秀吉でもない。僕は他人の敷いたレールの上なんて、他人の人生の真似事なんて嫌だ。レールくらい自分でしける。自分の人生は唯一無二のものにしたい。”なんてことを書いていた。図画工作で動物を作るときには太陽の塔を作っていた。

 でも今はもういない。死んだ。

 彼は中学2年生の夏、心臓病と診断され余命宣告された。余命は半年だった。最初のうちはクラスメイトが千羽鶴を折ってくれにぎやかだったが、飽きてきたのかお見舞いも何もない。それでも私は彼の病院に通い続けた。部活もやめた。彼はいいよと言ってくれたけれど、私は嫌だった。一時的な道徳精神のみのクラスメイトとは違うことを彼に見せたかった。4時半に学校が終わり、三十分かけ病院へ行き、7時まで、彼と勉強したり お話したり いちゃついたりしていた。あの時は本当に楽しかった。塾のある日曜日以外は毎日通った。

 ある日彼の容体は急変した。急に苦しそうにして、何かを私に言っていた、あまり聞こえなかったが、最後の一言だけは聞き取ることができた、”ありがとう”だった。のちにその時の録音を聴くと、彼はこういっていたことが分かった。”本当に今まで通ってくれて、勉強も教えてくれて、ありがとな、葬式では絶対泣くなよ 別に来なくてもいいからな もうこれ以上迷惑はかけたくない 今まで ありがとう”

”ありがとう”この5文字は私の友達が軽々しく言っている言葉とは違った、重かった、重すぎた。私は泣いた。泣き叫んだ。泣いて泣いて そのあと彼の心臓は何も刻まなくなった。命の炎は消えた。

 もし神様がいるなら、もう一度だけ彼と話がしたい。そうお願いしたい。こんなこと彼に言ったらどうこたえるだろうか。確か寒い寒い冬に彼は神についてこういっていた”神なんかいない、いてほしくない 神なんか もしいたらこんな運命から助けてくれるはずだ だからいない”彼はこの後泣いた。彼は無神論者でも何でもない。ただ、自分が死ぬ運命を変えてくれない神様を恨みたかったのかもしれない。でも今になっては分からない。


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