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革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~  作者: キムラ ナオト
5.源氏旗揚げ編
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第34話(1179年11月) 出雲大社会主義共和国連邦

 出雲国の建国から4年。朝廷の目を警戒しながらも、国力は順調に伸びていた。目当たらしかった蒸気重機による耕作や開拓も、2年目になると日常の光景となっていた――。


「これが、1179年10月の我が国の状況になります」


 出雲大社本殿に集まった最高幹部に、鴨長明が報告書を配った。

 

(出雲国・石見国・長門国を合算 1177年→1179年)

石高 23万石 → 47万石

人口 14万人 → 19万人

牛馬 2000匹 → 3000匹

鉄 600トン → 1000トン

弁慶隊 2200人 → 4600人

熊若騎馬隊 150人 → 390人

民兵 5000人 → 6000人


「蒸気トラクター、ブルドーザーの投入により、開拓は著しい成果を上げています。出雲国・石見国の開拓はほぼ終わりました。これから蒸気シャベルによる干拓を計画していますが、今までほどの収穫の伸びは難しくなります」


「いや、十分だよ、長明。民衆に配給している米を増やしたとしても、まだ9万石も余る。こんな国は日本のどこにもないよ。まだ数万人の流民を受け入れられる」


「1日2食の米配給を喧伝すれば流民は喜んでやってくるでしょう。ですが、職はどうします? 開拓事業も終わりが見えてきているのですよ」


 貴一はチュンチュンと目を合わせる。チュンチュンがうなずいた。


「みんなの努力のおかげで、他国の民に比べ、多くの米を与えることができた。次は時を与える」


 蒸気船の大型化と、出雲から長門までを横断する鉄道の着手を提案した。この時代の道路は狭く、でこぼこで真っすぐでもなかったが、蒸気ブルドーザーで開拓作業をしていくなかで、道路整備ができるメドはついたとチュンチュンが判断したのだ。ちなみにチュンチュンは170cm90kgの立派なジャイアントパンダに成長している。


「鉄心、チュンチュンと開発していた新製品はどう?」


「蒸気機械を作り続けたこともあって、鍛冶職人の腕が上がった。今まで難しかった蒸気織機も年内にはできるだろう。それとおぬしが肥満解消に作らせたあれも量産化できそうだ。名前を何とする?」


「火の神から名をとって、カグヅチストーブにしよう」


 昨年、まんまると肥った貴一はダイエットのためにサウナを作った。当時の囲炉裏や火鉢では、そばに近づいてようやく暖かさを感じるぐらいで、部屋の中を暑くするには力不足すぎた。そこでサウナ用に石炭ストーブを作ったのだが、周りからは「これは冬にも使える」と、大好評になり、1村に1個配ることを決めていた。


「あれは良い品だ。重くて馬で運ぶのは難儀だが、蒸気船さえできれば寒い奥州に運んで売りまくってやる! おぬしが蒸気機械を他国へ売ることを禁じたので困っていたが、石炭と抱き合わせでストーブを売れば、大金に変わる。がははは!」


 久々の儲け話に鉄心の機嫌はいい。試行錯誤していた蒸気紡績機、蒸気織機も完成し、麻布の販売も視野に入ってきている。


 他には平家が管轄している博多ルートで、中国の南宋に石炭を輸出し、絹織物や技術・医術書を輸入している。だが、本命である硝石(火薬の原料)は未だに手に入らずにいた。南宋が軍事物資として禁輸措置をしているためだ。


 この後、様々な議題が話し合われ、会議が終わりが見えたころ、貴一が決めたいことあると言った。


「提案があるんだけどさ、今は出雲国・石見国・長門国の三カ国合わせたのも、出雲国って言ってるじゃん。ややこしいから名前を変えようと思う。その名は――ズバリ!『出雲・社会主義共和国連邦』だ。かっこいいだろう?」


「しゃかいしゅぎれんぽうきょうわこく?」

「仏教の文言のような……」

「出雲 釈迦主義(しゃかしゅぎ) 法蓮華協(ほうれんげきょう) 倭国わこく?」

「何やらわからないですね」

「長ったらしいな」

「法眼様がそれでいいと言うのなら……」


「な、なんだよ、みんな! その、コレじゃない感みたいな反応は。長ったらしいのは略せばいいだろ。略して、い連や、いず連。これならどうだ!」


 みんな無言になった。貴一も譲る気は無いので、会議の間に気まずい空気が流れる。

 議長役である長明が咳ばらいをして言った。


「このままでは埒があきません。この国の最高指導者はスサノオ様です。私はいいと思います。でも、どうせなら、国が大きくする希望をこめて、出雲『大』社会主義共和国連邦にしませんか」


「おお、長明! わかってくれるか! それでいい!」


「では、私に略称を決めさせてくれませんか? みなに受け入れやすいものを思いつきました」


「うん、いいよ! 俺の希望の国名になるのなら」


「ありがとうございます。では、みなさん。略称は『出雲大社(いずもたいしゃ)』にします。ククク」


「なっ!!」


「それならかまわん」

(もっと)も! 尤も!」

「さすがは知恵者の長明!」

「いいですね」


 口をあんぐりと開けた貴一の側で、全員が賛成の意を表した。

 話はこれで終わりだというように、立ち上がる幹部を貴一は引き止める。


「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ、今までと変わんないじゃん!」


 そのとき、本殿の戸が開けはなれた。弁慶隊副官の水月が肩で息をしている。水月のただならぬ様子に、全員の動きが止まった。

 弁慶が水月をうながす。


「どうした、水月。何が起こった?」


「平清盛が数千の兵を引き連れて上洛。後白河法皇が幽閉され、反平家の公卿たちも次々と捕らえられた模様!」


「スサノオ様!」

「鬼一!」

「法眼様!」


 全員の視線が水月から貴一に移った。判断を求めている目だ。


「これ、もう国名を議論している場合じゃないよね?……」


 皆が当たり前だろ、という顔をしてうなずく。


 こうして、出雲大社(略)が誕生した――。

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