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革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~  作者: キムラ ナオト
4.戦うアイドル編
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第31話(1177年9月) 決算報告

 八坂神社の大神楽祭りで称賛を浴びた神楽隊だったが、出雲国に戻ると練習は以前より、激しさを増した。静の舞に刺激を受けたことは明らかだった。特に蓮華(れんげ)はショックを受けていた。出雲国では天才と言われていたが、静を見て力の差を思い知らされたようだ。

 ソロでの練習を志願する蓮華に対し、貴一は稲刈りライブの練習が先だと言って許さなかった。


「どうしてですか? 稲刈りライブの練習は副隊長の小夜(さよ)ちゃんがやってくれます」


「ダメだったら、ダメ! 静御前の舞いを練習するつもりだろ? あれは邪道だ。美しくなんかない。それに、あの舞いは常人には無理だ。やっても壊れるだけだ」


「なんで、そんなことがスサノオ様にわかるんですか!」


「俺の剣術が凄いのは知っているだろ? だが、誰も俺のようにはなれない。そう言うことだ」


「意味がわかりません!」


「話は終わりだ! 神楽隊は集団での踊りを大事にする。どうしても一人で踊りたければ、神楽隊を辞めるんだな――蓮華、どうするか今ここで決めろ!」


「……わかりました。スサノオ様の言う通りに従います」


 蓮華が泣く姿を貴一は初めて見た。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 稲刈りが終わり、10月後半に入ると貴一は出雲国最高幹部に召集をかけた。3日後、大神殿に、鴨長明と絲原鉄心、さらに今回からチュンチュンと、長門国を占領して帰還した弁慶、熊若が加わった。長明が作成した報告書を広げる。


---------------------報告書---------------------------

(出雲国・石見国・長門国を合算)

石高 9万石 → 23万石

人口 6万人 → 14万人

牛馬 600匹 → 2000匹

鉄 200トン → 600トン


弁慶隊 1500人 → 2200人

熊若騎馬隊 70人 → 150人

民兵 5000人 → 5500人


開発終了:蒸気トラクター、蒸気ブルトーザー、蒸気ショベル、蒸気船

---------------------------------------------------------------


「石見国・長門国を併合したことで、石高は大きく増えました。開墾・灌漑事業も順調で、年1.5倍の成長率を達成しています。蒸気トラクターの運用が上手く行けば、年2倍も見込める。そうですね、チュンチュン」


 長明の言葉にチュンチュンがうなずく。


「農業の効率化によって余った人数は、鉱工業に従事させています。今年、炭鉱を手に入れたことによって働き先は増え、移民の受け入れも問題ありません。すべて計画通りです。我ながら自分の頭脳が恐ろしい、ククク」


 石見国の戦いから、長明は諸葛孔明のような羽毛扇を持つようになっている。みんな、長明の自画自賛には慣れているのでスルーした。


「わしのほうは、輸出する鉄の量はそのままで、増産した鉄は国内に貯めてある。蒸気機関でどれだけ必要になるか読めないからな。鍛冶屋街も集団で物作りができるよう再編成中だ。工場というやつにする。その代わりといっちゃあ何だが、米は輸出できるぐらい収穫できたが、どうする?」


「倉を増やして、備蓄できるだけ備蓄したい。それでもあふれたら、1日1食分だった米の支給を一時的に2食分にしよう。次、熊若」


「はい。兵力の増強ですが、精鋭を維持しろということでしたので、騎馬隊は月に10人。弁慶隊は月に100人を目安に増やしています。大幅に増やすのなら民兵に頼ることになりますが……」


「それでいいよ。神楽隊も130名に増えた。守りの指揮なら彼女たちにもできる。鉄心、槍を5000追加ね。それに盾も5000頼む」


「今の出雲国の生産能力なら問題ないが……戦をするのか?」


「京へ行ってわかった。朝廷をごまかせるのは数年が限度だ。戦う準備はしておかなきゃね。俺も中国に行って火薬の材料を手に入れてくる。出来たばかりの蒸気船を使ってね。行こう、チュンチュン!」


『こ、こら、お待ちなさい!』


 貴一は一回り大きくなったチュンチュンを背負うと、ウッキウキで海岸まで走っていった――。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 出雲大社近くの海岸。


「……ねえ、もしかして蒸気船って、あのオモチャみたいなやつ?」


 海岸の桟橋につながれていたのは10人も乗れないような小舟だった。ポン、ポン、ポンとのどかな音を立てている。


――平和だなあ~、ってオイ!


「あれで、中国まで行くつもりなの? チュンチュン」


『そんなワケありませんわ! な、何ですか、そのガッカリしたお顔は! はじめから巨大船が作れるとお思いになって。そのほうが、おかしいですわ!』


「ですよねー」


 貴一ががっくりと肩を落としていると、弁慶と熊若がやってきた。


「お前ら知ってたろ。何で教えてくれないんだよー」


「おぬしがあまりにも嬉しそうな顔で出ていくので、言うのも気の毒になってな。中国へは行けなくなったワケだが、どうする?」


「見どころのありそうな兵を鍛え上げるよ。こうなったら、出雲軍を豪傑だらけにしてやる!」


「やれやれ、八つ当たりでしごくのは勘弁してくれよ」


 呆れ顔の弁慶とは対照的に熊若はもっと強くなれると言って喜んでいた――。

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