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プロローグ(2019年)

「ふぅ、今日も叫びすぎて喉がカラカラだよ」


 貴一(きいち)は「絶許安倍」と書かれたマスクとサングラスを外して机の上に置くと、冷蔵庫からビールを取り出して一気に飲み干した。


「くぅー、デモの後のビールは最高だね。モテない俺にも出会いはあるし、大声で叫べるし、お年寄りは若い参加者には優しいし。言うことなしだね。だけど……」


 ノートパソコンを開くと貴一は嫌な気分になる。


「ネットでの活動は全然楽しくない。ネトウヨはすぐ論破してくるし、数多すぎ!」


 貴一は空になったビール缶をゴミ箱に投げつけると、ゴミ箱の角に跳ね返り、壁のポスターに当たった。するとポスターの中の男が貴一に語りかける。


「……ファッキン!ジャップ! 痛えな、おい、俺様を誰だと思っている。革命家にとってのアイドル、チェ・ゲバラ様だぞ。肖像権ガン無視でいろんなところに使われている男だぞ。このポスターもそうだ。子孫に金払え、馬鹿野郎! 死んでまで搾取しやがって。ハァ…ハァ…」


「――口悪かったんすね……、チェさん」


 俺はポスターが話すことより、ゲバラの(やから)のようなしゃべり方のほうがショックだった。


「……ゲバラって呼んでくんない? お前さあ、革命ナメてんだろ。ネットで叩かれただけで、すねやがって。こっちはジャングルで銃弾ぶっ放してくる相手にも、優しくしたんだぞ。まあいい。俺様は民に優しい男。お前の願いをかなえてやろう。ネトウヨがいない世界に飛ばしてやる。そこで、じっくり革命を平等とは何かを考えてみるんだな。ただし、答えを見つけるまでは、この世界に戻ってこれないと思え!」


「待ってよ、チェさん!」


「チェって言うな!」


 貴一はポスターから顔だけ飛び出したゲバラに飲み込まれた。

 異空間を飛ばされる貴一に別の声が聞こえる。


「それは可哀そうですよ、ゲバラさん」


「なんだ、マルクスの頭でっかちか?」 


「現代人の彼が生き抜けるよう、最強の男に転生させてあげましょうよ。貴一さん、聞いてください。転生先は剣術の神と呼ばれ、兵法を極めた“鬼一法眼”です。だけどね、彼は……、あっ!」


 ゲバラが鼻で笑う音が聞こえる。


「能書きが長いからそうなるのだ」


 異空間から貴一の姿は消えていた――。

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