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革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~  作者: キムラ ナオト
終.最後の戦い編
135/136

最終話(1200年~1210年) 大帝スサノオ

 1200年・中国大陸


 黄河を挟んで二つの軍がにらみ合っていた。北はモンゴル軍、南は平軍。

 5年前、貴一が平国とモンゴル帝国の同盟を結ばせ、両国は南北から金国を滅ぼした。

 その後、両国は領土をめぐり争い始める。


 激しい戦いが続いたため、両国は過去の同盟の立役者である貴一に仲裁を頼んだ。そして、今、両軍の代表者が会談をするために、黄河にある中洲に集まった。

 牢屋から出た4人が東西奔走して、作り上げた舞台の最後の幕だ。


 平国からは安徳帝と朱熹、モンゴル帝国はテムジンから名を変えたチンギス・カンと右腕の源義経がテーブルについた。少し離れたところには、両国の幹部が100名ほどいる。


 安徳帝とテムジンだけが、特製の椅子に座り、朱熹と義経は傍らに立つ。他には仲裁者である貴一用の椅子があるだけだ。しかし、貴一はその椅子には座らず、安徳帝が座る席の前に立った。


 チンギス・カンが不審な顔をする。


「スサノオ、ナゼ、仲裁者ノ席ニ座ラナイノカ」


 安徳帝が椅子から立ち上がると、椅子の横に跪いた。


「兄上、どうぞ」


 貴一が皇帝の席に座る。チンギス・カンはポカンとしている。朱熹が渋い顔をした。


「俺が交渉相手だ。チンギス、降伏しろ。逆らえば首をはねる」


「フザケテイルノカ! 断ル! ヨシツネ、ワタシヲ守レ!」 


「――チンギス、悪いな。師匠のいうことは、絶対だ」


 義経は剣を抜くとチンギス・カンの首をはねた。

 貴一は椅子から立ち上がる。


「よくやった。義経」


「師匠には頼朝(あにうえ)との兄弟の縁を繋ぎなおしてもらった。恩返しはしないとな」


 笑い合う二人。

 モンゴル帝国の幹部たちは、義経の裏切りに騒然となった。


「誰も逃がしはしないよ。1つあれば充分だ」


 そう言うと、貴一は赤い小壺を握りつぶした――。


―――――――――――――――――――――――――――――――


 1210年・平帝国臨安


 モンゴル帝国を併呑した平帝国は、地中海まで版図を伸ばしていた。モンゴルの軽騎兵に鉄砲隊、蒸気戦車を加えた軍団を止める敵は、もはやこの世界に存在しなかった。

 安徳帝から禅譲を受けた、貴一は今ではスサノオ大帝と称えられていた。


 臨安の大宮廷に文武百官が集まる。この10年で百官の肌の色は、多様になっていた。

 百官を前に貴一は言った。


「俺は大将軍の熊若に帝位を禅譲することにした。皇帝の俺に最後のわがままを言わせてくれ。隠居の場所がほしい。自分でいうのも何だが、これほどの大帝国を築きあげたのは大いなる偉業だ。だから、ただの隠居場所では満足しない。隠居用の国が欲しい。周りを長城で囲み、誰も入ってこないようにしてくれ」


 もちろん世界の支配者となった貴一の意見に逆らう者など誰もいなかった。


 ちなみに、貴一の後を継ぎ、平帝国・三代目皇帝となった熊若は、思いやりの政治を心がけ、後に『仏帝』と称されることになる。


――――――――――――――――――――――――――――――――


 一年後、平帝国の中にスサノオ国が誕生した。国土は広いが大半が砂漠で小さなオアシスが1つあるだけの国だ。


 砂漠の真ん中で貴一が叫ぶ。


「チェよ。聞け! この国の民は俺一人、つまり完全なる平等の国だ! どうだ、実現してやったぞ! 出てこい! チェ!」


 空中に砂が舞い上がり、男の顔を形作る。


「チェって言うな! ……ん? 誰だ。お前みたいなジジイに知り合いはいないぞ」


「忘れたのか? 貴一だよ。異空間に飛ばされてから40年。顔も変わるさ」


「ああ! 革命をナメてた若造か」


 チェ・ゲバラは周りを見渡す。


「これがお前の答えか。つまらんな。ナゾナゾやってんじゃねーんだぞ」


「チェを呼び出すために作った国だ。俺を現代に帰してもらおう」


「フン、いいだろう。しかし、平等を考えた結果がこれとはな。いいか、よく聞け。現代に戻ったところで、お前は前と変わらない、口だけ男のままだ」


「いや、現代に戻ったら俺は行動するよ。少しでも社会が良くなるようにね」


「革命か?」


「もう血は見飽きた。地道にやるさ」


「――そうか。お前は別の答えを見つけたんだな……」


 チェ・ゲバラは少し寂しそうな顔をした後、貴一を口から飲み込んだ――。

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