072.探索開始!
「いや、別に誓約魔法までしなくても……」
お金が無いから払えませんって言っちゃわない所が、真面目だよね。
というか、お兄さん家族の借金なのにヒューバートさんも被る気でいそうだよね。
「ええと、ここの森って王都よりも南に在って植生も大分違うみたいなので、薬草とか素材類とか現物で支払って貰えれば良いですよ」
元々お金で払って貰うつもりも無かったし。
珍しい素材を持って帰って、アイビン先生にでも売り付ける心算だった訳ですよ。向こうはちょっとマッドが付きそうな研究者だしね。
アイビン先生なら王宮薬師の予算をちょちょいと回してしまいそうな気もするし、幾ら吹っ掛けても心が痛まないってものですよ。
「そんな物で良いのだろうか?」
アフロスートの街に売りに行っても、それ程大した値段は付かないのだが。と、ヒューバートさんは困惑したような顔で答える。
「それは、アフロスートでは周辺で採取出来るから、珍しいと思われていないからですよ」
流通の発達していないこの世界では、遠くの場所の物は当然高くなるのですよ。特に森の奥に何日も掛けて入らないと採取出来ない様な素材何かは。
王都で素材を手に入れようと思ったら、冒険者ギルドに依頼を出すとかしなくちゃいけなくて、往復で掛かる日数分とか馬車を使うなら馬車賃とかもだし、依頼を出すのも採取する素材の難易度に寄っては鉄級か銀級かでも金額が変わるし、諸々を引っ括めた値段が付くという訳なのだ。
なので素材や薬草などが有ったら持って来て下さいと伝える。
「それはそうと、投薬して様子見するだけで後は割とする事が無いので、あちこち見て回っても良いですか?」
村の中とかこの前の遺跡とか見たいのだと頼んでみる。勿論余所者が入ったら駄目な所とかは、無理に見ようとは思わないけれど。
「それならヒースを連れて歩けば良いと思うわ。お客様を歓待もせずに働かせたままだなんてダメだもの」
シルビアさんが名案だわと目を輝かせて言い、それからお弁当を作るからちょっと待っててねと台所に行ってしまった。
「何かそんな訳なんで、案内よろしく」
「で、ここが村の山羊を纏めて飼育している場所」
ヒース君が連れて行ってくれたのは、村の外れ過ぎる程ではないにしろ端の方に在る小屋だった。
大体ニ十頭ぐらいの山羊が飼育されているらしい。
本当はもう少し数が居る方が良いのだけれど、森の中の村なので中々飼育場所を確保するのが大変らしい。
森に放せば肉食の魔物何かの餌食になっちゃうらしいからね。
飼育小屋とそれに隣接して木の柵で囲った広場なんだけど、山羊達は囲いの中に入らずに村の中を好きに歩いて草を食んでいるらしい。ぷるぷると左右に揺れる短い尾が可愛らしいよね。
ヒース君は先ず案内を始める前に、村長さんの所に案内してくれた。
村に着いた後は薬を作るためにウィルウルマイヨールを捕獲する準備とか、色々忙しかったから他の人と会う暇も無かったからね。
村の中や遺跡何かを見て回るなら、ちゃんと話を通しておいた方が良いだろうっていう配慮だね。有難い。
「初めまして、デイライトと言います。よろしくお願いします」
「こちらこそ。村長をしているヨランダだよ。リンドンを助けてくれてありがとう。あなたに何か困った事が有れば、出来得る限り力を尽くすと誓おう」
紹介された村長さんは、握手のために差し出した手を取ると、そのまま持ち上げて額に当てて感謝の言葉を述べる。
狭い村で長命の種族だから、皆家族も同然なんだそうです。
あんまり感謝されると、ちょっとくすぐったいよね。
「俺は薬師として依頼された事をしただけですよ。報酬もちゃんと貰うのでお気になさらずに」
ちゃんとかどうかは分からないけど、まあ程々に素材が手に入れば良いかなぐらいなので大丈夫の筈だ。
「ヒース、支払いは大丈夫なの?」
ヨランダさんの銀色の目が心配そうに瞬く。
まあ、アフロスートに物を売りに行くのは村の分で纏めてだし、皆がそれ程現金を持ってない事など分かっているからなんだろうけど。
「この周辺の素材とか薬草の物納で良いって言ってくれたから、大丈夫」
だよね? とヒース君がこちらを見て確認して来るので、頷いておく。
「そう。それなら他の子達にも素材を採って来る様に言わないとだわね」
大丈夫よ、直ぐに集まるわ。ヨランダさんは微笑んで、ヒース君の頭を撫でた。
そんな感じで村長さんに挨拶をしてから、村の中を案内して貰っている訳なんだけど、ヒース君が会う人会う人にリンドンさんが治った事を伝えて回っているので、必然的に俺も感謝されまくって照れくさくて大変でした。
村長さんのヨランダさんは女性です。年齢的には割とお年寄りなのですが、見た目はシルビアさん達とそれ程変わりません。
ダークエルフの村編は名前の有る人が沢山出て来たけど、覚えきれるかな……。
ブックマークや評価などありがとうございます。誤字報告も。ぼちぼち直したいと思います~。




