067.ウィルウルマイヨール討伐
蜘蛛注意です。
「準備が出来ましたよ」
端に錘を付けた網を樹上に吊るし、効果が有るか分からないけどその下に落とし穴を掘る。
水を張っておこうかとも考えたけど、今回の目的はただ倒せば良いだけじゃ無くて、相手から毒の採取をしなければならないので、後々の事を考えて止めておく。
後は落とし穴の上を分からない様に枝や葉っぱで覆って、真ん中で足を止める様に罠の準備をしている間に狩って来て貰った獲物を置く。
獲って来れなかったら、保険の為に貰って来た村で飼っている山羊の血でも使おうかと思っていたけど、ヒューバートさんは腕の良い狩人なのか、枝の上で揶揄う様に鳴いていた派手な羽色の鳥を射止めて来た。
「なのでお願いします」
洞窟に入ってウィルウルマイヨールを見付けたら、使わなかった山羊の血が入った瓶を投げ付けて、相手の興味を引く事。
投げたら即後ろも見ずに走って戻って来る事。
落とし穴には落ちない様にしておくから、気にせず駆け抜ける事。
と、打ち合わせした事をお願いする。
つまりヒューバートさんは囮なのです。
大丈夫、サポートにゾーイが付いて行くから。
「分かった……」
一方ヒューバートさんは悲壮な覚悟を決めましたって感じの顔をして、重々しく頷く。
「そんなに緊張してると、足が縺れますよ」
大丈夫。と背中を叩いて送り出した。
「ぅああああああっ……!」
程無くして、ヒューバートさんが叫びながら駆け戻って来るのが見えた。
後で聞いたんだけど、瓶を投げて注意を引くまでも無く、洞窟に入ったぐらいで獲物認定されていたらしくて、向こうから襲い掛かって来たそうだ。
そんな訳で十分な距離や心の準備を取る事も出来ず、洞窟に入って三つ目の曲がり角を曲がる前に、ゾーイから即座に引き返す様に言われて、半信半疑で戻り掛けたら二つ目の角を戻る前に追って来るのが見えたんだって。
もうそこからは形振り構わずに走って走って戻って来たんだとか。
ご苦労様です。
打ち合わせ通りヒューバートさんは落とし穴の上を駆け抜けたので、折って来たウィルウルマイヨールもそろそろ落とし穴の手前に差し掛かろうとしている。
ちなみにゾーイが水球を飛ばして蜘蛛の進路を妨害していたから、ヒューバートさんは追い付かれていなかった訳です。
それでもあれだけ大きい魔物に追われて怖かっただろうな。
ヒューバートさんは駆け抜けたけど、ウィルウルマイヨールは落とし穴の上に置いておいた鳥にまんまと気を取られたらしい。
そのために獲物の血とかを周りに振り撒いておいた訳だしね。
「今だっ!」
足が止まった瞬間に、エドワードは落ちない様に落とし穴の覆いを支えていた力を抜いたし、俺も網を落とすための紐を引っ張った。
網はララの補助も有って、蜘蛛の身体全体を覆う様に綺麗に広がって落ちた。
「ついでに錘は重くなっちゃえ!」
エドワードが飛び跳ねながらくるんと一回転して、網の端に付けてあった錘の重量を蜘蛛が暴れたくらいじゃ持ち上がらない程に重くしてしまう。
「ヒューバートさーん! もう戻って来ても大丈夫ですよ~」
全力で走り抜けていったヒューバートさんに、戻って来る様に呼び掛ける。
この辺りはウィルウルマイヨールが居たから他の魔物なんかが居ないとはいえ、どこまでも走って行ったらその限りでは無いしね。
引き返して来たヒューバートさんは、息が切れて喋る事も出来なさそうだったけれど、無事蜘蛛を捕まえる事が出来た事は分かったみたいで、落とし穴に近寄って来る。
皆で落とし穴を覗き込めば、蜘蛛は網の中で藻掻いて、上顎の部分を擦り合わせてギギギと音を鳴らしている。
うう、虫系の生き物の大きいのって何かこう背筋がぞわぞわするよね……。
落とし穴は結構広めに掘ったから、ウィルウルマイヨールが居てもまだ余裕は有るんだけど、まだ生きて暴れている訳で、網の隙間から脚を伸ばす事だって出来る訳です。
「これ毒の採取をしないといけないから、迂闊に頭を潰す訳にも行かないよね……」
落とし穴に下りずに安全に倒す方法は何だろうか?
「弓矢は……、やっぱり刺さらないな」
ヒューバートさんが試しに射てみるけれど、お腹の部分の柔らかそうに見える所にさえ刺さらずに跳ね返された。
「前にやった、矢に魔力を纏わせてみるのやってみる?」
冒険者ギルドで練習した時は、的が壊れるぐらい威力有ったけど。
「他の部位まで爆散してしまう危険があるから、止めておいた方が良かろうよ。主殿」
それとも力の加減が出来るようになったのだろうか? とユースタスに問い掛けられる。
「……大人しくしておきます」
回復薬を作る魔力操作は、最近割と自信を持って出来ると言える様になったんだけどね。攻撃関係は今一上手く行かないのですよ。
「普通にそこらの石ころでも拾って、投げ付ければ良いんじゃないかな~?」
デイライト様の力なら、十分威力有ると思うよ。エドワードが厳選しました! と、つるつるで縞模様の入った石を持って来る。
「頭には当てなさらん様にのう」
こちらの方角から投げるのが宜しかろう。とオスカーがアドバイスしてくれる。
「これってさー。ぐちゃってなっちゃわない?」
石を投げるのに関しては吝かでは無いんだけど。
気になって聞いたら、誰も答えてくれなかったから、きっと結果は……。
とは言え倒さなきゃいけないし、そうしないと毒を取るために落とし穴の中に入る事も出来ないからね。
なるべくぱーんって弾け無い様に、鋭く刺さる様に、えぐる様な角度で投げますよ!
まだ討伐していません。タイトル詐欺ですね……。
まあ、特に大立ち回りをする事も無く、あっさりと蜘蛛は捕まった訳です。過剰戦力気味なので。
読んで下さってありがとうございます。蜘蛛はもうちょっと出て、それが終わったら森の村でちょっとぶらぶらする予定です。




