043.読書とは娯楽だったんですよ
日を改めてやって来ました図書館です。
保証金と入館料合わせて銀貨五枚と半銀貨五枚を入り口で支払い、保証金の預かり証を受け取る。
眷属達は小さいから鞄に隠れてとか、ちょっと誤魔化し気味に一緒に入れるんだけど、狼姿のユースタスは身体が大きいし、そもそも本の汚損に厳しい図書館に連れて入れるのかどうか。
やっぱり人型になって貰うしか無いのかな。
保証金は戻って来るから、入館料分ぐらいは仕方が無いかと思っていたら、懐から金属のプレートを取り出して、入り口で見せたらフリーパスだそうです。ちょっと羨ましい。
王宮関係に顔が利くから、身分証に偉い人に裏書して貰っているんだそう。
まあ、長生きだしとの事だけど、幾つなんだろう?
魔法の事を先に調べるべきなのか、魔道具の事を先に調べるべきなのか。
とは言え今回は別に生活が掛かっている訳でも無いから、然程焦っている訳でも無い。
興味の趣くままに、気になった本から手に取ってみよう。
なんて言ったけど、割と適当に収容された蔵書は、どこに何が有るのかも分からないし、そもそもどんな本が有るのかも分からない訳で。
つまりは司書さんに頼るしか無いのです。
「魔道具に関する入門的な本で、お勧めをお願いします」
出来れば読みやすい奴を。
「ではこちらやこちらなどが、最初に読むには面白いかと思いますよ」
眼鏡を掛けた司書さんが、ちょっと悩んでから壁の本棚がから二冊抜き取って渡してくれる。
この人がお勧めしてくれる本は割と外れが無い。
図書館の本の殆どを把握してるんじゃ無いのってぐらい、迷い無く本を選んでくれるのだ。
「ありがとうございます。早速読んでみます」
お礼を言って本を受け取って、小部屋の中央に備え付けてある机の上に置いて椅子を引く。
「あ、そうそう。この部屋の本棚のこちら側の方が、大体初心者向けと言うか、汎用的な内容の物が収められていますよ」
「えーっと、『魔道具における魔法陣の構造について』と『伝説の魔道具物語』か。……全然方向性が違うな?」
いやでも、どっちも面白そうって言うか読みたい。
そうなんだよね。こっちって漫画とかそういうのが無いし、小説も本が貴重だってところから分かるように、殆ど無いのだ。
宗教関係の説話集だったりとか、建国に関しての物語風に脚色された話だったりとか(大体は立国に際しての正当性とかを付けるためだったり、初代王様の英雄性を高めたりするために、尾鰭とか背鰭とか色々くっ付いてる)が有るぐらいなのだ。
スマホも無いし、ゲームも無い。一応上流階級の間にはカードゲームとかボードゲームみたいな物が有るらしいんだけど、一般庶民の間にはそれ程浸透していない。
つまり娯楽が少ないのだ。
なので特に読書が好きだった訳では無いけれど、何でも良いから余剰的な楽しみに飢えているのである。
とは言え、読書ですらとはもう言えないのだ。何と言っても入館料日半銀貨五枚掛かる、贅沢な物なのだから。
「よし、『伝説の魔道具物語』から読もう」
伝説と言うからには、きっと凄いに違いない。これを読んで魔道具に対する情熱を高めてから、勉強のための本を読むのだ。
『伝説の魔道具物語』は、大判の革張りの立派な表紙で、本の角は保護と装飾のための金具が付けられていて、金箔が題の飾り文字に貼られていて、植物や花がカービングで描かれていて、素手で触って良いのかちょっと躊躇う様な本だった。
引き寄せるのも躊躇われて、持ち上げて手元に寄せて、少し重い表紙をそっと開く。
中扉も飾り文字の題字と、色とりどりに蔦や鳥などの絵でで縁取られている。
パラパラと中身をめくれば、美しい挿絵や所々飾り文字などが挿入されていて、それだけでちょっとドキドキするような心持にさせられる。
「みんなも一緒に読む?」
美しい装飾の本を前にして、興味深そうに寄って来た妖精達にそう尋ねれば、一様に皆頷いた。
とは言え図書館なので、読み上げたりなどするのは禁止されている。
「ユースタスはどうする?」
一人然程興味が無いのか、隣の椅子に座って本を覗き込むそぶりも見せないユースタスに問い掛ける。
「その本は読んだ事が有るから、読まなくても大丈夫」
長生きだからな。笑ってそう言うと、狼の姿になって足元の床に丸まってしまう。
足の上にちょっとだけ背中が掛かっていて、温かい。
「そっか、じゃあ休憩する時に起こすね」
もう一度中扉まで頁を戻して、そっと一枚めくる。
【竜を眠らせてしまう魔道具】
昔々、どうしても竜の心臓が欲しいと願った王様が居ました。
王様にはそれはそれは可愛らしい王女様がいたのですが、王女様はとてもとても体が弱かったのです。
ある年の冬に、王女様はちょっとした風邪を引いて寝込みました。
宮廷医達はただの風邪だから、時期に良くなるでしょうと診断しました。
しかし王女様はそれきり、目覚めなくなってしまったのです。
(これって、寝込んで起き上がれなくなったのか、死んでしまったのかどっちだろう?)
嘆き悲しんだ王様は、死者さえ蘇らせるという霊薬を求めました。
しかし、一国の王様の力と財を以っても、どうしても手に入らない材料が有りました。
それが竜の心臓だったのです。
竜は険しい山の上に住んで居て、軍隊を差し向けても到底大軍で襲い掛かる事は出来ない様な場所なのです。
将軍達に頼もうにも、とてもそんな事は出来ませんと断られてしまいます。
傭兵達や冒険者など金で請け負う者達を探しても、皆竜は無理だと断って来ます。
それでも諦められない王様は、どうにかする事が出来た物に欲しいだけ褒美を取らせるとおふれを出します。
ある日、見すぼらしい格好をした男がやって来て言いました。
「私が何とかしましょう」
男は、自分は魔道具技師だと言い、竜を眠らせる魔道具を作って来るので暫く待って欲しいと言いました。
そして一月後、男は小さな箱を持ってやって来ました。
「これはとても強力な魔道具なので、竜の前以外では使わないでください」
そう言って王様に魔道具を渡すと、竜の心臓が手に入った頃に褒美を受け取りに来ると言って帰って行きました。
ギリギリ投稿です。日付変わる1時間前に書きあがりました。どこでスケジュール管理間違ったのかな。
ちなみにユースタスさんが長生きだからと言っていますが、実際にはオスカー>ユースタスな感じです。年齢的には。その後エドワード>ゾーイ>ララと続きます。
ユースタスさんはずっと人の間で暮らしていたので、人の世には詳しい感じです。妖精は細かい事は気にしないので、気になった事だけ覗いて後は流して生きている感じです。
と言う訳ですが、今年一年(投稿初めは4月末ですが)ありがとうございました。今回が今年最後の更新です。次は年明けなのですが、元旦なので年末忙しく無ければという感じでしょうか。
それでは皆さま良いお年をお過ごしください。




