038.依頼を出します
ユリアナさんは仕事が早い。本当に速い。
正直舐めてた。
てかあの人、冒険者達の弱味でも握ってるの?
ユリアナさんに報告した翌日から、冒険者の人達が来店するようになった。
大体は皆、下級回復薬一本ずつとかそんな感じで購入していく。
お店に来て薬を購入してくれるのは、ユリアナさんへの信用だからだ。でもそれが一本だけなのは、俺への信用がまだ無いから。
だからって特別今からするべき事なんて無いんだけどね。俺は普通にちゃんと回復薬を作って、適正な価格で提供するだけです。
それでも、薬師を何人も抱えている様な大きな店の薬は回復量がギリギリだし(これは大量に作って利益を上げるために、使う薬草の量を細かく調整しているかららしい)、回復量がちょっと多目の丁寧に作っている様な個人の店は、供給量がそれ程多くないから買えたら運が良かった的な感じだったらしくて、購入してくれた人で回復薬を使う様な羽目に陥ってしまった人からは、またよろしくなんて言われてしまった。
他人の不幸で飯を食べてる気がしないでもない……。ううん、きっと気のせい。
怪我をして痛い思いをしている人を救ってるんだ。人助け、人助け。
それはともかくとして、思ってたより在庫の回転が速い。
勿論一回購入していった人が、全て再顧客になる訳じゃないし、回復薬をそれ程使う事のないまま依頼を処理している人だって多い。
でも、一日に二本ぐらい売れたら、ギリギリ生活出来るかななんて、呑気な事を考えていたのに、それどころじゃ無かったみたい。
早くも在庫の心配をしないといけなくなって来た。
作るのは魔力に任せて割とぱぱっと出来るんだけど、素材をどうにかしないといけない。
自分で採取して来るか、ギルドとかから購入して来るか。
でも、ギルドからの購入になると、基本的に乾燥した薬草しか卸して貰えない。
個人で乾燥させていない薬草で丁寧に作っている様な薬師は、一日に作れる数が限られているし、作れば作っただけ売れるから、ギルドから決まった量を購入する契約をしているらしいけど、俺は有れば有るだけ作れるから、作る数は在庫が減った分って感じになるから、同じ様な契約は出来ないし。
自分で採取してきても良いというか、多分それが一番利益率は高いんだけど、日中お店を開けていて夕方から採取に向かうと門が閉められるから野宿する事になるし、移動時間を短縮できても余り早いと怪しまれるからそれは出来ないし。
お店を休みにして採取に行っても良いんだけど、一度や二度ならまだしも、そもそも薬屋に成りたかったのは、冒険者が向いていないからって事だったのに、本末転倒過ぎるし。
「……と言う訳で、薬草を採って来て欲しいんだけど、どうかな?」
グレアムさんのお店で配達のお手伝いをしている子供達を捉まえて、話を持ち掛けてみる。
お店のお手伝いにそれ程人数は要らないし、子供達は何人も居るから交代でやっているのだと以前ソフィーさんから聞いていたのだ。
冒険者ギルドを通した方が良かったのかもしれないけど、彼等を指定して定期的に依頼を出す方法が無かったのだ。
難しい内容で高ランク対象の依頼なんかは、指名する事も出来るらしいのだけれど、銅級が受ける様な依頼では無理だと断られた。
それに報酬だってギルドに中抜きされる分も上乗せして、彼等の懐に入った方が良い。
「どうかなって言われたって……。条件はどうなんだよ」
仕方無いから聞いてやるよ、みたいな感じで答えたのは、大工になりたいと言っていたデニス。子供達の中でも身体が大き目で力が強いから、生かせる職業に就きたいのだそうだ。
「ええと、王都から多分君達の足だと鐘半分くらいの所にある森で、薬草を採取してそれを納品して欲しい。なので、そこまで行って帰って来れるぐらいの子で、小鬼とかが出るから、少なくとも二人以上でお願いしたいかな。採取用のナイフは貸すから、それで小鬼程度なら倒せると思うけど、足はそんなに速くないから逃げようと思えば逃げれるかな。薬草は一本銅貨二枚で買い取るよ。冒険者ギルドが銅貨一枚だからそれ程悪い条件じゃ無いと思う」
その代わり採取する時に、注意して欲しい事が幾つか有るけど。と付け加える。
「取って来る薬草は、沢山でも少なくても良いのか?」
取りに行った事が無いから、どれぐらい用意できるか約束出来ないと慎重な返事をデニスはする。
「うん。特にペナルティも無いし、納品したいだけ納品してくれれば良いよ」
「分かった。他の奴にも聞いてみて、やりたい奴が決まったら、兄ちゃんの店に話を聞きに行くんで良いかな?」
二、三日の内に行くからとデニスが言うので、店の場所を教えた。
「デニスだ」
「フレッドです」
「ニコルです」
二、三日と言ったのに、翌日には子供達を集めてデニスはやって来た。
王都の外に出るから、比較的年長さんの子達だ。
「デイライトです。よろしく」
回復薬を買いに来るお客さんも途切れているし、店内にあるテーブルセットでお茶を勧めた所だ。
使うかなと思いながら、何もない店内も寂しくて置いたテーブルセットだったんだけど、割とその、屋台をやっているおばちゃん達が、代わる代わるやって来ては雑談をしていくから、案外使用頻度は高かった。
置かなかったら居座られなかったかもしれないけど、おばちゃん達の情報網は馬鹿に出来ないので、情報代だと思ってお茶とちょとしたお茶請けは用意するようにしている。
美肌効果のあるハーブティを出したら、食い付きが良すぎてびびったのは内緒です。
美肌とか美白とか何種類か、ハーブティも商品として取り扱う事になってしまった。
「ええと、薬草なんだけど、乾燥してないのが欲しいから、採取した後枯れない様に気を付けて持って帰って来て欲しいんだ。水を入れた容器に挿して置くとか、布に水を含ませて根元を包んで置くとかね」
それから薬草は葉が五枚以上付いている物。根元から掌一枚分ぐらい残して刈り取る事。等々、採取する際の注意を並べて行く。
採取用のナイフは貸与するので、出掛ける前に取りに来て、帰って来たら納品の時に返却して欲しい事も。
「とまあ、色々言ったけど、薬草とかどれが必要なのかとか、どこで採って来たら良いのかとか、言葉で説明しても分からないだろうから、一回一緒に出掛けてみようか」
第三章開始です。って言っても二章から間も開かなければストーリーが大きく変わる訳じゃないので、何が変わったのやらですが。(二章タイトルが開店準備だったので、開店したら変えなきゃぐらいの感じです)
子供達再登場です。トニー君(商人希望)とニーナちゃん(針子希望)は希望に沿わなかったため、今回は出番が有りません。残念。
まだまだのんびりと日常回を繰り広げる感じで、特に進展も無いんですがこれからもよろしくお願いします。
ブックマークや評価などもとても嬉しく思ってます。続き書いたらもっと読んで貰えるかなって、執筆の燃料です。本当に。
よろしければ感想などもお待ちしています。




