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035.まるでそれは嵐の様でした

「ちょっと! デイライトちゃん!」

 ばばーんと効果音を背負った感じで、串焼き屋のおばちゃんが朝も早々に飛び込んで来た。

 ノックとかは勿論無い。おばちゃん達にはそんな文化は無いのだ。

 家の場所は昨日開店したと伝えた時に教えたのだけど、それにしてもやって来るのが早過ぎでは無いだろうか。

 即断即決が彼女達の良い所では有るのだが。


「ユリアナさんおはよー。どうしたの? 俺まだ朝ご飯食べている所だったよ」

 お茶でもどうぞ。と癖の少ないお茶を濃い目に淹れてミルクティーにしたのを出す。

 お腹に空きは有るか聞いて、小さ目に焼いたパンケーキを三枚とバターと蜂蜜とジャムはお好きにどうぞと勧めてみる。


 自分たちの分は朝食なので、牛乳を入れてちょっとふわふわ甘目にしたスクランブルエッグと、しっかり焼いて割れ目の入った腸詰肉と、櫛切りトマトと湯通ししたキャベツと、バナナ半分。それからみじん切りにした野菜と塩漬け肉のスープと用意する。


「まああ、美味しそうだねえ。……じゃないよ! 昨日の! あの! ハンドクリーム! あれは、不味いわよ~」

 しっかりパンケーキを三枚完食して、ミルクティーまで飲み干してから、思い出したようにユリアナさんは勢い込んで言った。


「えっ? 不味いって? ……もしかしてかぶれたりでもした?」

 一応自分でも使ってみたんだけど。……そういえば俺、丈夫になったって事は肌も丈夫って事なんだ。

 慌てて目の前に座っているユリアナさんの手を取って、異常が無いか確認する。


「違うわよ! そうじゃ無くて。効き過ぎなのよ~」

 見て見て、全然傷が無いでしょ? ほら、ほら! と手を引っ繰り返して見せてくれる。


「昨日ねえ、夜寝る前に折角だからって塗ったのよ。そしたら、あかぎれとか火傷後が綺麗さっぱり消えたのよ!」

 これは不味いわあ~。とユリアナは、盛んに不味い不味いと繰り返す。


「効いたんなら良い事なんじゃ無いの?」

 何をそんなに騒ぐ事があるのだろうかと、首を傾げる。


「違うわよ~。これって、傷が治るお薬みたいなものじゃない。しかも回復薬と違ってちょっとだけ塗るって事が出来るじゃないの」

 売り出したら売れるだろうけど、昨日の感じだと売るつもりが無さそうだったし、薬師ギルドにも登録して無いんじゃないかと思って、取り敢えず確認に来たのだと言う。


「一応他の子達にも口止めはして置いたけど、新しい商品は製法の登録とか値段付けとかもあるし、決まる前にホイホイ他所で漏らしちゃだめよ」


「あ、ありがとう? でも製法って言っても凄く簡単だし、別に秘密にするような物じゃないと思うけど」

 そもそも不要物の再利用から出来上がった代物なのだ。真似する真似しないという程の物でも無いだろう。


「駄目よ。こういうのはちゃんとしておかないと、後々面倒に巻き込まれるんだから」

 と、そういった類の面倒事のあれこれを、ユリアナさんは面白可笑しく話してくれた。


「後ね、これが有ったら冒険者やってる子達も、随分助かるんじゃないかと思ってね。だからちゃんと製法の登録をして欲しいのよ」

 沢山喋って喉が渇くだろうと思って、ユリアナさんにお茶のお代わりを出したら、真面目な顔をしてお願いされる。


「冒険者って回復薬が有るから、ちょっとの切り傷ぐらいしか治らない奴は要らないんじゃ?」

 どちらかと言うと、回復薬一本が一日分の稼ぎに相当する、街の人達に必要なのではないだろうか。


「回復薬をじゃぶじゃぶ使える様な、稼ぎの有る子達には必要無いだろうけど、駆け出しの子達はそうじゃ無いからねえ」

 最初は碌な武器も防具も無くて、簡単な採取とお使いから仕事を始めて、少しずつお金を貯めて出来る事を増やしていく子達には、下級回復薬でも気楽に使える様な物では無いのだとユリアナさんは言う。

 小さな傷を、これぐらいはと我慢した結果、痛みに気を取られて取り返しの付かない大怪我や命を落とす事だってあるのだと。

 そういう子達が少しでも減るなら嬉しいと。


「回復薬だったら、一瓶使い切りじゃない。でもこれだったら何度にも分けて使えるよ」

 だから需要は有るだろうし、製法を登録しなかった場合に、デイライト一人で全て賄うだけ作れるのかと問われる。

 勿論それは無理な話だ。そもそも回復薬を作った残り滓を使っているのだから、これのために回復薬を作ると言うのも本末転倒であるし。


「うーん。そういう事なら、師匠にちょっと相談してみるよ。偶々出来た薬かもしれないから、再現性が有るかとかもだし、値段とかの相場とかも有るだろうしさ」

 製法の登録とか、新参者の自分が申請するよりも、偉い人を通した方が早いだろうという打算もちょっとある。何と言ってもアイビンさんは薬師界隈ではとても偉い人なのだ。


「そうそう、それからこのクリームね、顔に塗ると皺とかシミが薄くなるんだよねえ。売り出したらすっごく売れると思うよ」

 他の子達も、定期的に手に入る様に説得してって言ってたんだから。とか何とかユリアナさんが言っていた気がするけど、俺は聞かなかった事にしたのだ。

 今回ちょっと短めなのですが、区切り的にこうなりました。


 ノックして論争では何時も喧嘩になります。なりませんか?

 うちの親は入ってからノックするという技を使いますよ。半分諦めていますが。


 読んで下さってありがとうございます。ブックマークなども嬉しいです。イケメンも出なければメリハリも無い話ですが、多分これは賛同者……!と思って自重せずに書きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] やだこのハンドクリームほしいわぁ シミシワ消えるなんて最高かよ
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