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034.相変わらずおばちゃん達には人気です

 沢山採取して来た薬草で回復薬を作る。

 乾燥させた方が煮出す時間が短くて済むって話だったけど、自分の持つ魔力量が多ければ時間は短縮出来るって事をアイビンさんに習ったから、乾燥させずにそのまま葉の主脈を取り除いて使う。

 計量はちゃんとするけど、鍋に入るだけまとめて作る事にする。


「鍋の大きいのが欲しいな」

 中級回復薬なんかは一度に沢山作らないけど、下級回復薬はまとめて作ってしまいたい。


「まあ、どれだけ在庫の入れ替えが有るか分からないから、今急いで鍋を新調する必要は無いけど」

 どれだけ売れて、どれだけ作り足す必要が有るのか分からなければ、鍋を大きくしても使わないかもしれない。


 薬草を自分で採りに行けば、付随して討伐した魔物を売り払ったお金で生活資金は十分賄えるから、売れないからと焦る必要もない。


 ともかくも、優しく優しくと念じながら鍋を掻き混ぜて、薬草から成分を押し出して下級回復薬を作る。


「下級回復薬四十本に、中級回復薬五本。毒消し十本出来た」

 これが多いのか少ないのかは、よく分からない。

 多分初動はそれ程良くない筈だから、下手をすると使用期限まで売れ残ってしまうかもしれない。(回復薬は特別な容器に入れて置かない限り、約半年程で劣化が始まるらしい。薬効を反応させていた魔力が抜けるからだとか何とか)


 瓶に詰め、栓をしてから封を貼る。この封は使用期限が半分以上残っている時は文字が青色で、半分を過ぎると黄色になって、残り一週間で赤色になるらしい。そして段々色が薄くなって最後に文字が消えてしまうのだそうだ。

 そういう封紙を作る魔道具が有って、魔道具の作り方は秘密になっていて、使って良いのは薬師ギルトなどの一部の機関なのだとか。

 だから、封紙を張り替えても残りの使用期限は変わらないし、封紙を貼っていない回復薬何かは誰も買わない。


 出来上がった回復薬は間仕切りのある木箱に詰める。アイビンさんの所でノルマの回復薬の納品に使っていた奴で、運ぶにも積み上げて仕舞っておくにも便利なのだ。


 それから使用した器具の後片付けもする。綺麗に洗って乾かしておけば良い。


「それにしても、この薬草の残り滓、勿体無いね。……お浸しみたいに見えるけど、食べられたりとかしないのかな?」

 パウ草とメル茸を煮出してろ過すれば、くなくなになった葉っぱと茸が残る訳で。


「薬草ですから、毒では無いですわ」


「ちょっとだけ薬効が残ってますから、身体には良いかもですけど……」


「あのね~、多分結構苦いと思うよー」


「一回だけなら食べるのも良いとは思いますが、この先もずっと回復薬を作る度に食べる心算ですかのう?」

 口々に否定はしないがお勧めしないといった感じの事を言う。


「そっかー。やっぱりそうだよねえ」

 でも取り敢えず一回は食べておこうと、一食分だけ取り分ける。出汁醤油で食べるのが良いだろうか?胡麻和えにしてしまえば、胡麻の風味が有るからそこそこイケるかも?

 大根菜とかちょっとほろ苦系の奴は美味しいから、苦くてもワンチャン有るかもしれない。


「でも沢山有るんだよねえ」

 他の所はどうしているんだろうか?

 定番の処理方法としては、ペーストにして固めるとかだけど、乾燥させて固めても苦いから美味しくなさそうだしなあ。

 刻んで保存食に混ぜ込むとか……。ただでさえ美味しくないらしいと噂の保存食を、更に不味くするだけな気がする。


「薬効は少し残ってるんだよねえ……」

 ならペーストにして塗り付ける。……日持ちし無さそうだな。


「日持ちとか携帯性とか……」

 何かに混ぜて魔力掛ければ駄目かな?




 練り練り練り練り。

 オーガニックなハンドクリームはビーワックスとナチュラルプラントオイルとエッセンシャルオイルで作るのよとか、何だか呪文を聞いたことが有る様な気がする。

 蜜蝋と植物オイルと香り付けに何やら入れるとの事だけど、そこに薬草のペーストさんを混ぜ込めばいけるんじゃないだろうか?


 先ずは薬草の残り滓を丁寧に裏ごしする。

 それから蜜蝋と植物オイルを湯煎に掛けて混ぜ合わせる。

 ついでに薬草ペーストも入れて練る。均等に混ざったら、密封出来る缶か瓶に詰めて冷ませば出来上がり。


「どうかな?」

 魔力を込めたと言っても、薬草ペーストが混ざりやすいようにしただけだから、気持ち掻き混ぜるためにぐるぐるしただけ。


「そうですわね、回復薬の様な効果は無いですけど、手荒れぐらいは治るんじゃないかと思いますわ」

 薬草入りハンドクリームの詰まった瓶をじっと見詰めて、ゾーイがちょっと自信なさげに答えた。

 成分は分かっても、それがどういう風に作用するのかは相手の体質にもよるので断言出来ないそうだ。


「んん。それで十分だよ」

 害が有るとかだと困るけど、そうじゃないならそれで良い。




「まあ、よく考えたら作り過ぎなんだよね……」

 残った薬草の残り滓を調子に乗って全部ペーストにして、蜜蝋と植物オイルと混ぜてクリームにしてしまった。

 ペーストのままよりは魔力を混ぜたし日持ちするだろうけど、自分で消費する量との釣り合いが取れる訳が無い。

 自分で使うなら一瓶で二、三か月は余裕で持ちそうなのだ。




「そんな訳で、配り歩いているんです」


「何がそんな訳なんだか、さっぱりだよ。デイライトちゃん」

 と、ちょこちょこ買い食いしている串焼き屋の露店のおばちゃんが、呆れた様な顔をして肩を竦めた。


 ハンドクリームと言えば手荒れに効く。手荒れと言えば炊事洗濯。炊事洗濯と言えばおばちゃん達じゃないですか。

 まあ、パワフルなおばちゃん達の事だから、手荒れなんて寄せ付けないのかもしれないけど。


 どうせなら役に立てて貰いたいし、どうせなら良くしてくれる人に上げたいのだ。


「ええと、ちょっと手荒れに効くクリームを作ったんだけど、作り過ぎちゃったから貰ってくれないかなと」

 串焼きを買って、代金を渡してから要件を切り出す。


「そうそれで、薬屋を始めたんで、よろしくね。……ってまだ看板注文すらして無かった! 看板出てないけど一応開店はしたんだよ!」

 帰りに看板を発注してから帰ろう。看板が出来上がるまでは、張り紙でもしておけば良いかな。


「で、これ。薬じゃないから商品じゃないんだけど、手荒れにちょっとは効く筈だから、使ってみて」

 断られたり、何か別のお返しを渡されたりする前に、さっと渡してぱっと立ち去る事にする。


「もうっ……! そんなにさっさと逃げなくても! ありがとうねえ。帰ったら早速使ってみるよ!」

 次に来た時には今日出来なかった分のおまけを付けて上げなきゃね。とおばちゃんは思ったのだった。

 薬草お浸しは、もうしないそうです。

 まあ美味しかったら皆食べてますよね。


 読んで下さってありがとうございます。ついに今年も後一月を切りましたね。

 つい最近令和になったばっかりだと思ったのに……。

 ブックマークなどいつもありがとうございます。とてもとても励みになります。

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