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033.匹と数えるのは抱きかかえられる大きさまで

 右を見て、左を見て。うん、良し居ない。

 冒険者ギルドに着いて、牽いて来た台車は一旦そのままユースタスに待機して貰って、他の人に隠れる様に中に入る。

 またあの変なお兄さんに絡まれたりしない様に、用心しておくのだ。

 特に何をされたと言う訳でも無いけど、何となく関わったら駄目な人という印象が拭えない。

 幸い夕方近くになっていて、依頼を終えて報告に戻って来た冒険者達もそこそこ居て。

 カウンターには入っていないし、ざっと見た感じ居ないみたいだから、多分中の仕事をしているのだろう。


「今日は依頼を受けていた訳じゃないから、直接買い取り窓口へ……と」

 その前に荷物を持って来なければ。と入り口に戻り掛けた所で、ララが飛んで来てオスカーの乗っていない方の左肩に停まった。


「獲物はユースタス殿が、裏から直接搬入すると言っていましたわ」

 ですので、主様はそのまま受付を済ませて欲しいそうです。との事。


「伝言ありがとう。でもちょっと待ちそうだね」

 依頼を終わらせた冒険者達が戻って来ていると言う事は、獲物を買い取って貰うために窓口に並ぶ冒険者も居ると言う事で。

 俺の前にも何人か受付待ちの人がいて、勿論ギルド職員は高速で捌いているのだけれど、お金の絡む事だから買い取りする物の品質を厳しく確認しなければならないのだ。


「仕方ありませんわ。大人しく待つ様に伝えて来ます」

 ピチュ……。と器用に溜息混じりに鳴いて、それでも生真面目なララは伝書鳩よろしく飛んで行った。




「こりゃあまた、沢山獲って来たもんだ。兄ちゃん、鉄級に上がったばっかりだっていうけど、良い腕してるな。これで十分食って行けそうだな」

 買い取り窓口で獲物は台車に乗っていて持って来れないので、既に裏口から運び込んだと言うと、木の番号札を渡されて奥の解体倉庫に連れて行かれた。


 解体担当のいかにもなおっちゃんが、持ち込んだ獲物の確認と、全て買い取って良いのか、魔石や素材で手元に残しておきたい物は有るのかとかを聞いて来る。

 骨や皮なんかは使う当ても無ければ、加工手段も持っていないので、そのまま買い取って貰う事にする。魔石も同様だ。

 肉についてはどうだと聞かれて、狼は良く考えたらユースタスが共食いになってしまうんじゃないかとか思ってしまったので(後で一緒にしないで欲しいと怒られた)、そのまま売る事にしたし、熊の肉も固くてちょっと野性味が強いのだと言われたので止めておく。

 鹿の肉は脂身の少ない牛の赤身に似ているらしくて、食べやすいんだとか。煮込み料理何かが合うらしいので、食べ切れそうな量だけ自分達で食べる用に戻して貰うことにする。


 しかし、これで食べて行けると言われても、倒す事自体は簡単でも、やっぱり積極的に探し出して狩りをしたいとは思えない。

 向こうから襲って来るようなら、勿論自分は大事なので倒すけれど、一匹倒して幾らになったとかそういう風に考えられないのだから、向いていないとしか言い様が無い。

 お肉は美味しく食べているのだから、矛盾と言えば矛盾なのかもしれないけれど。


 とは言え熊(一応熊も狼も鹿も魔物だった。襲い掛かって来たのだから当たり前と言えば当たり前なのだけれど)は一匹銀貨十枚だったし、狼も銀貨二枚で、鹿は五枚だった。

 熊一頭、鹿一頭、狼三匹。それから小鬼(ゴブリン)が五匹。つまり、銀貨二十一枚と半銀貨五枚。


 平民の一月の生活費換算で考えると高いのだけれど、銅級上がりの鉄級が熊を倒すには何人かで組んで狩らなければ難しいし、怪我をすれば回復薬の代金が、そして装備の修繕費が、倒した後は運搬するために運び屋を雇うか、解体して自分達で持てる分だけ運ぶかしなければならない。

 そして毎日毎日狩れる様な獲物でも無いのだ。




 冒険者ギルドで獲物を売り払ったら、次は採って来た薬草を使って商品の作成を……と行きたいところだけれど、そろそろ夕飯の時間になってしまう。

 何か適当に買って帰っても良いのだけれど、お手伝いする気満々なオスカーが肩の上で何時もよりもちょっとだけ気合を入れているから、家に帰って何か作らねば。

 鹿肉は二、三日寝かせて置いた方が美味しくなるらしいので、保冷庫に仕舞う。


 簡単に準備が出来て、オスカーに手伝って貰えるもの。

 鍋かな。

 メインは鶏肉(多分)が有る筈だから、ミンチにして鶏団子にしよう。


「エドワード、ちょっとお願いしても良いかな?」

 おいでおいでと手招きして、所謂土鍋という奴を作って欲しいとお願いする。

 鍋の大きさは三人前ぐらいかな? ユースタスが結構食べるから四人前ぐらいの方が良いかも?


 作って貰った土鍋を台所の食卓の上に乗せて。……直接だと木製のテーブルが傷むから、断熱材になる様な物を敷いて、陶器の鍋敷きを置く。

 調薬用の過熱器具でも良いけど、あれはちょっと高さが有るから食卓には向かない。

 カセットコンロ的な魔道具が欲しいなあと思うから、今度アイヴァーさんに聞いてみよう。専門外だと怒られるだろうか?

 鍋敷きの上に金属製のケーキクーラーみたいな物を置いて、その上に土鍋を置く。

 中にカットして表面を軽く拭いた昆布を入れて、水を少し。入れ過ぎると食材から出た水分で溢れるから、水の調整は具材を入れ終わってから。

 白菜、大根、人参、椎茸、水菜、ネギ、豆腐何かを入れたら、具がひたひたに浸かるぐらいに水を注ぐ。それから蓋をして一煮立ちさせる。

 沸騰したら、鶏挽肉と卵と片栗粉に、ごま油醤油酒摺り下ろした生姜と炒り胡麻を入れて、軽く混ぜるた物を匙で掬って投下する。火が通れば良いので大きさは適当に。


 と言う訳で、オスカーには過熱をお願いしています。

 別に鍋に触れていなくても大丈夫らしいのだけれど、気になるのか縁に前肢を掛けて中を覗き込んでいる。


「具に火が通ったら、一旦火力を弱めてね」

 ちょっと深目の取り皿を用意したり、付けダレを何種類か作ったりしたら皆を呼ぶ。

 途中で継ぎ足す用の具も大皿に盛ってテーブルの上に置いておく。


 鶏団子が無くなったら、保冷庫にある白身魚を入れても良いし、ちょっと食べにくいけど海老なんかも良いだろう。

 〆に入れるうどんは、妖精達が小さいからあらかじめ短く切っておこう。


「いただきまーす」

 ユースタスには人型になって貰って、取り分け要員として活躍して貰おう。


「凝った味付けをしている訳でも無いのに、何とも美味しいですのう」

 熱い物に耐性のあるオスカーが、冷ましもせずに鶏団子を飲み込む。

 実はエドワードも熱さに強いらしく、取り皿から器用に食べている。

 ララには食べやすいように鶏団子を箸で割って小さくしてあげたりする。

 ゾーイは相変わらず食べる事については味よりも見た目優先らしいので、花形に切っておいた人参何かを取り分けてあげる。


「遠くの厨房から運ばれて、冷えてしまったご馳走よりも、こうして皆で食べる熱々の鍋の方が美味いな」

 と言うユースタスは、多分鍋の半分以上は食べているんじゃないだろうか。


「そそ、皆で突くから美味しいんだよ」


 薬師をするより冒険者をする方が儲かる気配……。

 でもやっぱり襲って来た魔物とか以外は殺したくないのです。デイライト君はきっとこの先もこのままです。


 読んで下さってありがとうございます。評価、ブックマークなど励みになります。

 

 鍋良いですよね。個人的にはポン酢で食べるのが好きです。柚子胡椒をちょっと付けるの。

 鍋→うどん→おじやにして汁まで美味しく頂くのが好きです。

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