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028.研究主任とかいう人

 イケメンは顔パスでした。

 俺は通行証を確認されたけど。


 本当の所は、ここら辺一帯をユースタスが長い間縄張りにしていたからだって。

 なるほど?


 王城までも当たり前だけど結構歩いたんだけど、通用門を潜ってからも結構な距離を歩いている気がする。

 城壁沿いに一番外側をぐるっと回っているからかもだけど。


 着いた先には、三階建て位の石造りの建物と、周囲には畑と温室らしきガラス張りの建物が有った。後、井戸も。


「こっちだ」

 促されて、一歩前を歩くユースタスの後を付いていく。


 建物の入り口には、槍を持った兵士が二人立っていた。


「何用だ!」

 と立ち入りを防ぐ様に、厳しい声で誰何される。


「今日からアイビン研究主任に、弟子入りする事になったデイライト殿だ。覚えておいてくれ。……デイライト殿、彼らに許可証の提示を」

 ユースタスがすっと一歩前に出て、兵士達にそう告げる。

 慌てて鞄の内ポケットから許可証を取り出して、彼等に渡す。


「確かに。アイビン主任の裏書きを確認しました」

 どうぞお入り下さい。と許可証の表裏をしっかり確認してから、兵士達は入り口の扉を開けて中へと促してくれる。


 ここは王宮薬師のための研究棟で、日々怪しい研究をしているからとか、薬草を煮込む臭いに苦情が出たからだとか、変人ばかりが居るからだとか、まあそんな理由で王城内でも端の方にあると言われているらしい。

 本当は薬草畑を作っているからなのだそうだけど。

 尤も変人が多いというのも本当らしい。


 基本的には貴族階級に属する人達なのに、研究者として日夜怪しげな実験に打ち込んでいるそうだ。

 とは言え、下働き的な立場の人も居るし、助手として働いている人達は殆どが平民との事。

 王城内で必要とされる下級や中級の回復薬等は、殆どがそういった助手達が作っているらしい。


 じゃあ王宮薬師達は何をしているのかというと、上級などの価値が高い回復薬を作ったり、文献を基に霊薬の作成を目指したり、新たな薬を作り出すべく、割と好き勝手に実験を繰り返しているらしい。

 たまに、本当にごくたまに有用な薬が生み出される事もあるため、偉い人達も目を瞑っているのだとか。


 嘘だか本当だかは分からないけど、ここに居る研究員は貴族なんだと聞いて、ちょっと帰りたくなる。

 身分社会とかそんなの経験したこと無いから、どう考えても上手く出来る気がしないんだけど。


「大丈夫だ。貴族と言っても下級ばかりだし、研究に夢中でそういった事を気にしない奴はかりだから」


「そもそもが、偉大な竜であらせられる主様よりと尊い者など居りませんわ」

 ピチュチュっと胸を張ってララが断言する。


「まあそれは置いておいて。竜なのは内緒でお願い。……元の姿へ戻り方分からないし、実感も無いしさ」

 それに人の世の身分制度にどれ程影響があるか分からないというか。……下手をしたら狩られる対象に成り兼ねないし。


「主殿を馬鹿にするような者を許すつもりは無いから、安心すると良い」

 こう見えても私はこの辺りでは顔が利くから。とユースタスが笑いながら言って、止まりかけていた歩みを促す様に背中を軽く叩いて来た。




「アイリーン。入っても良いか?」

 ユースタスは三階の奥まった部屋の前まで進んで、扉を軽くノックして中へ声を掛けた。


「どうぞ」

 少し低く掠れた声が返って来て、ユースタスは片眉を上げた。


「主殿。この部屋の主は優秀なのだが、少々悪戯好きでな。人を揶揄って遊ぶゆえ、何が有っても驚かぬように」

 余り酷い時は怒っても構わないからな。扉に手を掛けながら、小声で不安になるような事をユースタスが囁く。


「アイリーン。こちらが、先日頼んだ調薬の基礎を学びたいというデイライト殿だ。大事な方ゆえ失礼の無い様に頼む」

「デイライト殿。こちらがアイリーン・アイビン研究主任だ。前アイビン子爵夫人でもある」


「よろしくお願いします」


 部屋の中には姿勢の良い老女がいて、ユースタスに紹介されて頭を下げる。……そう言えばこちらの礼儀作法何かはさっぱりだから、この頭を下げる動作が果たして合っているのかどうかも分からないんだった。


「ああ、こちらこそ。……私は堅苦しいのが嫌いでね、そんなに畏まらなくて結構だよ」

 白髪交じりの赤色の髪を簡単に纏めて結い上げ、痩せて女性にしては高いと言える背でしゅっと立っているその人は、面倒そうに手を振って見せた。


「ええっと……。一応習う立場なので、そう気安くとはいかないです」

 困惑して答えれば、


「若いのに固い事言う子だねえ」

 と返って来る。


「それで、基本的な器具の使い方と下級と中級の回復薬の作り方を、教えれば良いんだったかね?」

 こっちへおいでと手招きされて、入ってすぐにある応接用のテーブルセットを避ける様に回り込んで向かうと、右手の壁にある扉を開けて続きの部屋へと促される。


「はい」


「ふ~ん? 一応これでも私はこの国でトップクラスの薬師なんだけどねえ……。欲が無いのかどうなんだか……?」

 と、じっと見つめられて、少し居心地の悪い思いをする。

 アイビンさんは背が高いから、目線が丁度同じくらいになって、目を逸らしたいのに逸らせないしで、暫くの間見詰め合ってしまう。


「まあいいわ。火土風水の曜日の午前中に来なさい。それ以外の細かい調整は、その都度行えばいいでしょう」

 午前中はどうせ眠くて頭が働かないから、研究はしない事にしているのだと言う。


「取り敢えず、どれぐらい出来るのか一度やって見せて貰いましょうか」

 新しくアイリーンさん登場です。前子爵夫人なので引退気味に好きな調薬をして過ごしている人です。二人の息子が居るらしいですよ。息子が悪戯の一番の被害者という設定です。


 読んで下さってありがとうございます。ブックマーク嬉しいです。

 面白く書きたいと思いつつ、話を進めるために説明ばっかりになって果たしてこの流れで合っているのかどうか……。むむむ。

 話は進む様にしか進まないんです……。何日か置くとまた違って進み方(到達地点は同じなんですが)が見つかったりもするけど、先に進めたいという気もあったりで。


 今後が気になるな~とか、もしよろしければブックマークや評価や感想などよろしくお願いします。

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